親の土地がどこにあるか全部調べる方法|所有不動産記録証明制度と名寄帳の使い分け【2026年版】
- 一般社団法人日本不動産管財

- 7月7日
- 読了時間: 7分
「親が田舎に山を持っていたらしいが、どこに何があるのか分からない」「相続手続きを終えた数年後に、知らない土地の納税通知が届いた」——相続のご相談で非常に多いお悩みです。
朗報があります。2026年2月2日から「所有不動産記録証明制度」が始まり、亡くなった親(または自分)名義の不動産を、全国一括でリスト化した証明書を法務局で取得できるようになりました。これまでのように市町村を1つずつ回って調べる必要は、原則なくなります。
ただし、この新制度には「登記が古い住所・氏名のままの土地は漏れる」という重大な弱点があり、単独では完全ではありません。この記事では、山林・原野の調査を日常業務とする一般社団法人日本不動産管財が、手元資料→新制度→名寄帳という漏れのない調べ方の手順を解説します。
なぜ「全部調べる」ことが重要なのか
2024年4月から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと、10万円以下の過料の対象になります。そして、把握していない不動産は登記のしようがありません。
特に見落とされやすいのが山林・原野です。評価額が低く固定資産税がかからない(免税点未満の)土地は課税明細書に記載されないことがあり、「課税明細書に載っている不動産=すべて」と思い込むと、山林だけが未登記のまま取り残されます。次の相続ではさらに相続人が増え、手続きは倍々で複雑になります。
手順①:まず手元の資料を確認する(無料)
役所や法務局に行く前に、実家で次の3つを探してください。
固定資産税の課税明細書・納税通知書:毎年4〜6月頃に市町村から届きます。届いている市町村=不動産のある市町村です。過去数年分あればなお確実です
権利証(登記済証)・登記識別情報通知:不動産ごとに発行されるため、思わぬ土地の存在がここで分かることがあります。古い売買契約書や原野の分譲パンフレットも手がかりです
預金通帳・郵便物:固定資産税の口座引き落とし履歴(複数の市町村からの引き落としがないか)、別荘地の管理会社や森林組合からの郵便物
手順②:所有不動産記録証明制度で全国一括リストを取る(2026年2月開始)
手元資料で当たりを付けたら、新制度で全国を一括確認します。
所有不動産記録証明制度とは、特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、法務局の登記官が全国の登記記録から検索し、一覧の証明書として交付する制度です(不動産登記法119条の2)。
項目 | 内容 |
請求できる人 | 名義人本人/その相続人など一般承継人/委任状を持つ代理人 |
請求先 | 全国どこの法務局・地方法務局でも可(窓口・郵送・オンライン) |
手数料 | 検索条件1件・1通あたり:書面請求1,600円/オンライン請求・郵送受取1,500円/オンライン請求・窓口受取1,470円 |
交付まで | 登記所により異なり、混雑時は2週間程度かかる場合あり |
相続人が請求する場合の必要書類は、おおむね①請求者の本人確認書類、②被相続人が亡くなったことと相続人であることが分かる戸籍関係書類(法定相続情報一覧図でも可)です。詳細は法務省サイトの請求書様式・記載例で確認できます。
手数料の注意点:手数料は「検索条件(氏名+住所の組み合わせ)の件数×通数」で計算されます。後述の理由で親の旧住所も検索条件に追加する場合、例えば検索条件4件なら書面請求で4×1,600円=6,400円になります。また、該当する不動産が1つもなくても手数料は返還されません。
新制度の落とし穴——これだけでは漏れる土地がある
ここが本記事で最もお伝えしたい点です。この証明書は氏名・住所の文字一致で検索する仕組みのため、次の不動産は漏れる可能性があります。
登記上の住所・氏名が古いままの土地:親が若い頃に買った原野が、当時の住所・旧姓のまま登記されているケースは非常に多くあります。対策として、住民票の除票や戸籍の附票で住所の履歴を確認し、過去の住所も検索条件に追加してください(その分手数料は増えます)
登記簿がコンピュータ化されていない不動産:ごく古い紙の登記簿のままの物件は検索対象外です
未登記の建物・表示登記のみの不動産:所有権の登記がないものは出てきません
請求時点で登記申請が審査中の不動産:反映されません
つまり新制度は「強力だが万能ではない」ため、次の手順③との併用が確実です。
手順③:名寄帳で市町村ごとに裏取りする
課税明細書が届いていた市町村、親が住んでいた・出身の市町村については、名寄帳(その市町村内に所有する固定資産の一覧)を取得して突き合わせます。名寄帳は登記名義ではなく課税情報ベースのため、旧住所のままの土地や、免税点未満で課税明細書に載らない山林も拾えるのが強みです。取り方・見方は名寄帳の解説記事をご覧ください。
3つの資料の使い分けまとめ
課税明細書 | 名寄帳 | 所有不動産記録証明書 | |
調査範囲 | 課税されている不動産のみ | その市町村内の全資産 | 全国一括 |
非課税・免税点未満の山林 | 漏れることがある | 載る | 登記があれば載る |
旧住所・旧姓のままの土地 | 載る | 載る | 漏れることがある |
費用 | 無料(毎年届く) | 無料〜数百円/市町村 | 1,470円〜/検索条件 |
実務のおすすめ手順:手元資料の確認 → 所有不動産記録証明書で全国を俯瞰 → 心当たりのある市町村の名寄帳で補完、の順です。これでほぼ漏れなく親名義の不動産を把握できます。
手順④:見つけた土地の中身を確認する
リストアップができたら、各不動産について次を確認します。
登記事項証明書を取得し、名義・持分・抵当権の有無を確認(法務局・オンラインで誰でも取得可)
場所の特定:山林・原野は地番が分かっても現地が分からないのが普通です。地番から場所を特定する方法と公図から特定する方法をご覧ください
税額・評価額:山林の固定資産税の考え方
知らない山林・原野が見つかったら——放置が一番高くつく
調査の結果、「使い道のない山林・原野・別荘地が出てきた」というのは、むしろ典型的な結末です。ここで大切なのは、見なかったことにしないことです。相続登記義務(3年以内)は把握した時点から動き出し、放置すれば管理責任と維持費ごと次の世代に引き継がれます。
出口の選択肢(売却・国庫帰属・引き取りサービスなど)は山林の処分方法7つの比較にまとめています。相続放棄との損得比較は山林の相続放棄をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 生きているうちに、自分の土地の整理(終活)にも使えますか?
A. 使えます。名義人本人も請求できるため、財産目録や遺言書作成の基礎資料として有効です。ご自身の代で山林の出口をつけておくことは、お子さまへの何よりの配慮です。
Q. 他人の土地(隣の山の所有者など)も調べられますか?
A. この制度では調べられません。請求できるのは本人・相続人等に限られます。特定の土地の所有者を知りたい場合は、その土地の登記事項証明書(誰でも取得可)を取る方法があります。
Q. 証明書に「該当なし」と出ました。土地はないと考えてよいですか?
A. 断定はできません。旧住所・旧姓のままの登記や、コンピュータ化されていない登記簿は検索から漏れます。住所履歴を確認して検索条件を追加するか、心当たりの市町村の名寄帳で補完してください。
Q. 兄弟の誰か1人が請求すれば足りますか?
A. 相続人であれば単独で請求できます。取得した一覧は遺産分割協議の基礎資料として相続人全員で共有するのがスムーズです。
Q. 費用を最小限にしたいです。
A. まず無料の手元資料確認と、オンライン請求(1,470円〜)の活用を。検索条件は現住所+直前の住所の2件程度から始め、必要に応じて追加するのが経済的です。
まとめ
親の土地を漏れなく調べる手順は、①手元の課税明細書・権利証・通帳を確認 → ②所有不動産記録証明制度(2026年2月開始)で全国一括リスト → ③名寄帳で市町村ごとに補完 → ④登記事項証明書と場所特定で中身を確認、の4ステップです。新制度は画期的ですが「旧住所のままの土地が漏れる」弱点があるため、名寄帳との併用が確実です。
