親の土地がどこにあるか全部調べる方法|所有不動産記録証明制度と名寄帳の使い分け【2026年版】

更新日:10月2日
「親が田舎に山を持っていたらしいが、どこに何があるのか分からない」「相続手続きを終えた数年後に、知らない土地の納税通知が届いた」——相続のご相談で非常に多いお悩みです。
2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度では、亡くなった親(または自分)が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、全国の登記記録から検索した一覧の証明書を取得できます。検索条件や登記の状況によって漏れる場合があるため、名寄帳や手元の資料も併用します。
現在の氏名・住所だけで検索すると、旧住所・旧姓のまま登記された土地が漏れる場合があります。この記事では、手元資料、所有不動産記録証明書、名寄帳を使って、相続した不動産の見落としを減らす手順を解説します。
なぜ「全部調べる」ことが重要なのか
2024年4月1日から相続登記が義務化されました。原則として、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に申請します。正当な理由なく期限内に申請しないと、10万円以下の過料の対象となる場合があります。施行前の相続は、2027年3月31日と、相続による取得を知った日から3年のいずれか遅い日までです。
山林・原野などは、非課税や免税点のため課税明細書だけでは把握しきれない場合があります。免税点は、同じ市町村内の同じ所有者の土地の課税標準額の合計で判定します。「課税明細書に載っている不動産がすべて」と考えず、ほかの資料と照合しましょう。
手順①:まず手元の資料を確認する(無料)
役所や法務局に行く前に、実家で次の3つを探してください。
固定資産税の課税明細書・納税通知書:毎年4〜6月頃に市町村から届きます。届いている市町村=不動産のある市町村です。過去数年分あればなお確実です
権利証(登記済証)・登記識別情報通知:不動産ごとに発行されるため、思わぬ土地の存在がここで分かることがあります。古い売買契約書や原野の分譲パンフレットも手がかりです
預金通帳・郵便物:固定資産税の口座引き落とし履歴(複数の市町村からの引き落としがないか)、別荘地の管理会社や森林組合からの郵便物
手順②:所有不動産記録証明制度で全国一括リストを取る(2026年2月開始)
手元資料で当たりを付けたら、新制度で全国を一括確認します。
所有不動産記録証明制度とは、特定の人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、法務局の登記官が全国の登記記録から検索し、一覧の証明書として交付する制度です(不動産登記法119条の2)。
項目 | 内容 |
請求できる人 | 名義人本人/その相続人など一般承継人/委任状を持つ代理人 |
請求先 | 全国どこの法務局・地方法務局でも可(窓口・郵送・オンライン) |
手数料 | 検索条件1件・1通あたり:書面請求1,600円/オンライン請求・郵送受取1,500円/オンライン請求・窓口受取1,470円 |
交付まで | 登記所により異なり、混雑時は2週間程度かかる場合あり |
相続人が書面で請求する場合、窓口では本人確認書類の写しと原本提示、または実印を押した請求書と印鑑証明書のいずれかを用意します。郵送では実印を押した請求書と印鑑証明書が必要です。これらに加え、死亡と相続関係が分かる戸籍関係書類などを提出します。法定相続情報一覧図の写しなどで代えられる場合もあります。オンラインでは電子署名をし、添付情報もすべてオンラインで提供する必要があります。過去の氏名・住所を検索条件にする場合は、それを証する戸除籍謄本や戸籍の附票の写しなども必要です。
手数料の注意点:手数料は「検索条件(氏名+住所の組み合わせ)の件数×通数」で計算されます。後述の理由で親の旧住所も検索条件に追加する場合、例えば検索条件4件なら書面請求で4×1,600円=6,400円になります。また、該当する不動産が1つもなくても手数料は返還されません。
新制度の落とし穴——これだけでは漏れる土地がある
ここが本記事で最もお伝えしたい点です。この証明書は氏名・住所の文字一致で検索する仕組みのため、次の不動産は漏れる可能性があります。
登記上の住所・氏名が古いままの土地:親が若い頃に買った原野が、当時の住所・旧姓のまま登記されているケースは非常に多くあります。対策として、住民票の除票や戸籍の附票で住所の履歴を確認し、過去の住所も検索条件に追加してください(その分手数料は増えます)
登記簿がコンピュータ化されていない不動産:ごく古い紙の登記簿のままの物件は検索対象外です
未登記の建物・表示登記のみの不動産:所有権の登記がないものは出てきません
請求時点で登記申請が審査中の不動産:反映されません
この証明書だけで、すべての不動産が見つかるとは限りません。次の手順③の資料も使って補完しましょう。
手順③:名寄帳で市町村ごとに裏取りする
課税明細書が届いた市町村や、手元資料で不動産の所在が分かった市町村などに、名寄帳の記載範囲と取得方法を確認します。名寄帳は課税情報を基にするため登記記録と内容が異なる場合があり、非課税資産や共有資産の記載方法も自治体によります。詳しい取り方・見方は名寄帳の解説記事で確認できます。
3つの資料の使い分けまとめ
課税明細書 | 名寄帳 | 所有不動産記録証明書 | |
調査範囲 | 課税されている不動産のみ | 市町村内の記載対象資産 | 全国一括 |
非課税・免税点未満の山林 | 漏れることがある | 自治体の取扱いによる | 検索条件に合う所有権の登記があれば記載 |
旧住所・旧姓のままの土地 | 課税されていれば載る | 自治体の取扱いによる | 旧氏名・旧住所を検索条件に加えて確認 |
費用 | 無料(毎年届く) | 無料〜数百円/市町村 | 1,470円〜/検索条件 |
手元資料の確認、所有不動産記録証明書の検索、心当たりのある市町村の名寄帳による補完、という順に資料を照合します。未登記建物や先祖名義の土地などがないかも確認し、一つの資料だけで調査を終えないことが大切です。
手順④:見つけた土地の中身を確認する
リストアップができたら、各不動産について次を確認します。
登記事項証明書を取得し、名義・持分・抵当権の有無を確認(法務局・オンラインで誰でも取得可)
場所の特定:山林・原野は地番が分かっても現地が分からないのが普通です。地番から場所を特定する方法と公図から特定する方法をご覧ください
税額・評価額:山林の固定資産税の考え方
知らない山林・原野が見つかったら確認すること
使い道のない山林・原野・別荘地が見つかったら、登記名義と取得の経緯、管理状況を確認します。相続登記の期限は、その不動産を相続で取得したことを知った時点などによって判断するため、具体的な期限を法務局で確認しましょう。管理を続ける負担と、手放す方法も合わせて検討します。
出口の選択肢(売却・国庫帰属・引き取りサービスなど)は山林の処分方法7つの比較にまとめています。相続放棄との損得比較は山林の相続放棄をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 生きているうちに、自分の土地の整理(終活)にも使えますか?
A. 使えます。名義人本人も請求できるため、財産目録や遺言書作成の基礎資料として有効です。ご自身の代で山林の出口をつけておくことは、お子さまへの何よりの配慮です。
Q. 他人の土地(隣の山の所有者など)も調べられますか?
A. この制度では調べられません。請求できるのは本人・相続人等に限られます。特定の土地の所有者を知りたい場合は、その土地の登記事項証明書(誰でも取得可)を取る方法があります。
Q. 証明書に「該当なし」と出ました。土地はないと考えてよいですか?
A. 断定はできません。旧住所・旧姓のままの登記や、コンピュータ化されていない登記簿は検索から漏れます。住所履歴を確認して検索条件を追加するか、心当たりの市町村の名寄帳で補完してください。
Q. 兄弟の誰か1人が請求すれば足りますか?
A. 相続人であれば単独で請求できます。取得した一覧は遺産分割協議の基礎資料として相続人全員で共有するのがスムーズです。
Q. 費用を最小限にしたいです。
A. まず手元資料を確認し、登記上の氏名・住所の手がかりを整理します。オンライン請求・窓口受取なら検索条件1件・1通あたり1,470円です。検索条件は直前の住所に限定せず、不動産を取得した当時の住所や旧姓も確認し、必要な条件を選びましょう。
まとめ
親の不動産を調べる手順は、①課税明細書・権利証・通帳などを確認 → ②所有不動産記録証明書を氏名・住所の条件で検索 → ③市町村の名寄帳などで補完 → ④登記事項証明書と場所の確認、の4ステップです。旧住所・旧姓や先祖名義、未登記建物などに注意し、複数の資料を照合して見落としを減らしましょう。

