top of page

名寄帳とは?取得方法・見方・必要書類・相続登記義務化との関連から新制度の所有不動産記録証明制度まで徹底解説

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 8 時間前
  • 読了時間: 20分

相続が発生すると、故人(被相続人)がどのような不動産を所有していたのかを正確に把握する必要があります。しかし、「父が自宅以外にも山林を持っていたらしい」「複数の不動産があるようだが詳細がわからない」など、相続財産の全容を把握できないケースは少なくありません。

このような場合に役立つのが「名寄帳(なよせちょう)」です。名寄帳を取得すれば、被相続人がその市区町村内に所有していた不動産を一覧で確認でき、相続財産の漏れを防ぐことができます。

2024年4月から相続登記が義務化され、不動産を相続したら3年以内に登記申請を行わなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。相続財産を正確に把握することは、これまで以上に重要になっています。

本記事では、名寄帳の基本から取得方法、見方、必要書類、費用、注意点まで、相続手続きに必要な情報を網羅的に解説します。また、2026年2月から始まる「所有不動産記録証明制度」との違いについても詳しく説明しますので、ぜひ最後までお読みください。



目次


1. 名寄帳とは?基本をわかりやすく解説

1-1. 名寄帳の定義と読み方

名寄帳(なよせちょう)とは、市区町村が作成している固定資産課税台帳を、所有者ごとに一覧表にまとめた書類です。

地方税法第387条第1項に基づき、市町村は「土地名寄帳」および「家屋名寄帳」を備えることが義務付けられています。この名寄帳には、特定の所有者がその市区町村内に所有するすべての土地・家屋の情報が記載されています。

名寄帳を取得することで、被相続人が所有していた不動産を一目で確認でき、相続財産の調査を効率的に進めることができます。


1-2. 名寄帳の主な役割

名寄帳は主に以下の目的で活用されます。

【相続財産の調査】

被相続人がどのような不動産を所有していたかを漏れなく把握するために使用されます。特に、相続人が把握していなかった山林や私道、別荘地などの存在を確認できます。

【相続登記の準備】

相続登記を行う際に、登記すべき不動産をすべて特定するために活用されます。2024年4月から相続登記が義務化されたため、名寄帳による不動産調査の重要性は高まっています。

【相続税申告の基礎資料】

相続税の課税対象となる不動産を正確に把握し、申告漏れを防ぐために使用されます。

【固定資産税の確認】

自身が所有する不動産の固定資産税額や評価額を確認するためにも利用できます。


1-3. 名寄帳の別称

名寄帳は自治体によって呼び方が異なる場合があります。以下のような名称で呼ばれることがありますが、基本的に同じものを指します。

  • 土地・家屋名寄帳

  • 固定資産課税台帳

  • 土地・家屋課税台帳

  • 名寄帳兼課税台帳

  • 固定資産物件一覧

窓口で請求する際は「名寄帳」と伝えれば通じますが、不明な場合は「所有者ごとに不動産を一覧にした書類」と説明すると確実です。



2. 名寄帳と他の書類との違い

相続手続きでは、名寄帳以外にもさまざまな不動産関連書類を扱います。ここでは、それぞれの違いを明確にしておきましょう。

2-1. 名寄帳と固定資産課税台帳の違い

項目

名寄帳

固定資産課税台帳

記載単位

所有者ごとに一覧表

土地・家屋ごとに個別

非課税不動産

記載される場合が多い

課税対象のみ

用途

所有不動産の把握

固定資産税の課税根拠

発行方法

市区町村役場で取得

市区町村役場で取得

重要な違いは、名寄帳には固定資産税が課税されない不動産も記載される点です。非課税の山林や私道、公衆用道路なども名寄帳で確認できるため、相続財産の漏れを防ぐことができます。


2-2. 名寄帳と固定資産税納税通知書の違い

項目

名寄帳

固定資産税納税通知書

送付方法

申請が必要

毎年4〜6月に自動送付

記載対象

課税・非課税すべて

課税対象のみ

共有不動産

共有者全員に記載

代表者のみに送付

用途

財産調査

納税用

固定資産税納税通知書には「課税明細書」が同封されていますが、非課税の不動産は記載されないため、山林や私道などを見落とす可能性があります。


2-3. 名寄帳と固定資産評価証明書の違い

項目

名寄帳

固定資産評価証明書

目的

所有不動産の確認

評価額の公的証明

用途

相続財産の調査

相続登記・相続税申告

法務局への提出

不可

可能

記載内容

複数不動産を一覧表示

指定した不動産のみ

固定資産評価証明書は、相続登記や相続税申告の際に法務局や税務署に提出する公的証明書です。一方、名寄帳は財産調査のための参考資料であり、公的証明書としては使用できない場合がございます。


2-4. 名寄帳と登記事項証明書の違い

項目

名寄帳

登記事項証明書

発行元

市区町村役場

法務局

記載範囲

市区町村内の全不動産

指定した不動産のみ

権利関係

記載なし

詳細に記載

抵当権等

確認不可

確認可能

名寄帳で所有不動産を特定した後、登記事項証明書を取得して詳細な権利関係を確認するという手順が効率的です。



3. 名寄帳を取得すべき4つのケース

以下のケースに該当する場合は、名寄帳の取得を強くおすすめします。

3-1. 固定資産税納税通知書を紛失した場合

固定資産税納税通知書(課税明細書)があれば、被相続人が所有していた課税対象の不動産を確認できます。しかし、通知書を紛失してしまった場合や、被相続人の自宅から見つからない場合は、名寄帳を取得して不動産の詳細を確認する必要があります。


3-2. 被相続人が非課税の不動産を所有していた(可能性がある)場合

固定資産税が課税されない不動産には以下のようなものがあります。

  • 山林:課税標準額が30万円未満の場合は非課税

  • 農地:一定の条件を満たす農地は非課税

  • 私道・公衆用道路:公共の用に供されている道路

  • 墓地:墓地として使用されている土地

  • 免税点未満の土地:土地の課税標準額が30万円未満の場合

これらの非課税不動産は、固定資産税納税通知書の課税明細書には記載されないことがあります。しかし、相続税の課税対象にはなりますし、相続登記も必要です。


3-3. 被相続人が複数の不動産を所有していた(可能性がある)場合

被相続人が不動産投資を行っていた場合や、複数の土地・建物を所有していた場合は、すべての不動産を漏れなく把握することが重要です。名寄帳であれば、その市区町村内のすべての所有不動産を一覧で確認できます。


3-4. 被相続人が共有名義の不動産を持っていた(可能性がある)場合

共有名義の不動産がある場合、固定資産税納税通知書は共有者の代表者にのみ送付されます。被相続人が代表者でなかった場合、手元に課税明細書がなく、共有不動産の存在に気づかない可能性があります。



4. 名寄帳の見方・記載内容

名寄帳の書式は市区町村によって異なりますが、記載される基本的な項目は共通しています。

4-1. 名寄帳の基本的な記載項目

【所有者情報】

  • 所有者の氏名・住所:固定資産税の納税義務者の情報

  • 所有形態:単有(単独所有)、共有、区分(マンションなど)の別

【土地に関する情報】

  • 所在地・地番:土地の所在場所(住居表示ではなく地番)

  • 地目:土地の種類(宅地、田、畑、山林、雑種地など)

  • 地積(面積):土地の面積(㎡)

  • 固定資産税評価額:不動産の評価額

  • 課税標準額:固定資産税を計算する基準となる金額

  • 固定資産税額・都市計画税額:年間の税額

【家屋に関する情報】

  • 所在地・家屋番号:建物の所在場所と家屋番号

  • 種類・構造:居宅、店舗などの種類と、木造、鉄骨造などの構造

  • 床面積:建物の延床面積(㎡)

  • 建築年:建物が建築された年

  • 固定資産税評価額・課税標準額・税額:土地と同様


4-2. 名寄帳の見方のポイント

【ポイント1:所在地は「地番」で表示される】

名寄帳に記載される所在地は、一般的に使用される「住所(住居表示)」ではなく、登記のための「地番」で表示されます。地番と住居表示は異なる場合があるため、不動産の特定には注意が必要です。

【ポイント2:「評価額」と「課税標準額」の違い】

  • 評価額(固定資産税評価額):不動産そのものの価値を表す金額。相続税の計算や相続登記の登録免許税の基準となる

  • 課税標準額:固定資産税を計算するための基準金額。住宅用地の特例などにより、評価額よりも低くなることがある

相続税申告や相続登記では「評価額(固定資産税評価額)」を使用します。「課税標準額」と間違えないようにご注意ください。

【ポイント3:共有名義の表示方法】

共有名義の不動産は、名寄帳上で「山田太郎 外2名」などの表示で別ページに記載されることがあります。申請書には「共有名義を含む全資産」と記載することをおすすめします。



5. 名寄帳を取得できる人

名寄帳には個人の資産情報が記載されているため、取得できる人は限られています。

5-1. 取得できる人の範囲

【本人(納税義務者)】

固定資産税の納税義務者である不動産の所有者本人は、当然に名寄帳を取得できます。

【相続人】

被相続人が亡くなった場合、法定相続人は被相続人名義の名寄帳を取得できます。相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)が必要です。

【同居の親族】

所有者と同居している親族も、一定の条件のもとで名寄帳を取得できる場合があります。同居を証明する住民票などが必要です。

【代理人(委任状が必要)】

上記の取得権限を持つ人から委任を受けた代理人は、委任状を提出することで名寄帳を取得できます。

【その他】

遺言執行者や相続財産清算人など、法令に基づき財産管理権を有する者も取得できます。


5-2. 取得できない人

所有者や相続人と無関係の第三者は、名寄帳を取得することはできません。



6. 名寄帳の取得方法【窓口・郵送】

6-1. 窓口での取得方法

【申請先】

不動産が所在する市区町村役場の資産税課(課税課、税務課など名称は自治体により異なる)で申請します。東京23区の場合は、各区の都税事務所が申請先となります。

重要:名寄帳は不動産の所在地を管轄する役所でしか取得できません。被相続人の住所地の役所ではなく、不動産がある場所の役所に申請する必要があります。

【申請の流れ】

  1. 役所の窓口で「名寄帳交付申請書」を記入

  2. 本人確認書類、相続関係を証明する書類を提示

  3. 手数料を支払い

  4. 名寄帳を受け取り(通常は即日交付)


6-2. 郵送での取得方法

遠方の自治体から名寄帳を取得する場合は、郵送請求が便利です。

【郵送請求に必要なもの】

  1. 名寄帳交付申請書:役所のウェブサイトからダウンロードするか、便箋に必要事項を記載

  2. 本人確認書類のコピー:運転免許証、マイナンバーカードなど

  3. 相続関係を証明する書類のコピー:戸籍謄本、法定相続情報一覧図など

  4. 委任状(代理人の場合):原本を送付

  5. 手数料分の定額小為替:郵便局で購入(金額は自治体による)

  6. 返信用封筒:切手を貼付し、返送先住所を記載

【定額小為替について】

郵送請求の手数料支払いには、郵便局で購入できる「定額小為替」を使用します。購入時に1枚あたり200円の発行手数料がかかります。無記名のまま(何も記入せず)同封します。



7. 名寄帳の取得に必要な書類

7-1. 本人(納税義務者)が申請する場合

必要書類

説明

名寄帳交付申請書

窓口で記入、またはウェブサイトからダウンロード

本人確認書類

運転免許証、マイナンバーカード、パスポートなど

7-2. 相続人が申請する場合

必要書類

説明

名寄帳交付申請書

窓口で記入、またはウェブサイトからダウンロード

本人確認書類

申請者(相続人)の運転免許証、マイナンバーカードなど

被相続人の死亡を証明する書類

被相続人の除籍謄本、死亡診断書の写しなど

相続人であることを証明する書類

被相続人との関係がわかる戸籍謄本、または法定相続情報一覧図

7-3. 代理人が申請する場合

上記の必要書類に加え、以下が必要です。

追加で必要な書類

説明

委任状

委任者(本人または相続人)が作成したもの

代理人の本人確認書類

代理人の運転免許証、マイナンバーカードなど

7-4. 委任状の書き方

委任状には、以下の事項を記載します。

  • 委任事項:「固定資産(土地・家屋)名寄帳の交付申請および受領に関する一切の件」

  • 対象年度:「令和○年度」

  • 代理人(受任者)の住所・氏名・生年月日

  • 委任者の住所・氏名・生年月日・押印

  • 作成日

  • 日中連絡がとれる電話番号



8. 名寄帳の取得費用

8-1. 手数料の目安

項目

費用の目安

名寄帳(1通あたり)

無料〜400円程度

固定資産評価証明書

200円〜400円程度

【自治体による違いの例】

  • 無料の自治体もある

  • 所有者1名につき一律300円

  • 1枚(1ページ)につき200円

  • 縦覧期間中(4月1日〜第1期納期限まで)は無料


8-2. 郵送請求の場合の追加費用

項目

費用

定額小為替発行手数料

1枚あたり200円

返信用郵便切手

84円〜(重量による)

往信用郵便切手

84円〜

8-3. 費用対効果について

名寄帳の取得費用は数百円程度であり、相続財産の調査としては非常に低コストです。

一方、名寄帳を取得せずに相続登記の漏れが発生した場合、追加の登記申請費用(登録免許税+司法書士報酬)で数万円から十数万円のコストが新たに発生します。

名寄帳の取得は、将来のトラブルを防ぐための「保険料」と考えましょう。



9. 名寄帳取得時の7つの注意点

9-1. 名寄帳は市区町村単位でしか取得できない

名寄帳は、不動産が所在する市区町村ごとに作成されています。そのため、他の市区町村にある不動産は記載されません。

被相続人が複数の市区町村に不動産を所有していた場合は、それぞれの市区町村で名寄帳を取得する必要があります。


9-2. 記載されるのは1月1日時点の情報

名寄帳は、毎年1月1日時点の所有者情報をもとに作成されます。

  • 1月2日以降に購入した不動産:翌年まで名寄帳に記載されない

  • 1月2日以降に売却した不動産:売却後も名寄帳に記載されている


9-3. 先祖名義の不動産は記載されない

名寄帳は、登記簿上の所有者をもとに作成されます。そのため、何代も前の先祖名義のままになっている不動産は、被相続人の名寄帳には記載されません。


9-4. 未登記の建物に注意

登記されていない建物(未登記建物)は、登記簿上は存在しませんが、固定資産税は課税されます。未登記建物は、名寄帳の「家屋番号」が空欄になっていたり、「未登記」と表示されていたりします。


9-5. 自治体によっては非課税不動産が記載されない場合がある

多くの自治体では、名寄帳に非課税不動産も記載されますが、一部の自治体では課税対象の不動産のみが記載される場合があります。申請時に「非課税資産を含む」と明記することをおすすめします。


9-6. 共有名義の記載方法を確認する

共有名義の不動産は、自治体によって記載方法が異なります。申請書に「共有名義の不動産を含む」と明記しましょう。


9-7. 名寄帳を発行していない自治体もある

ごく一部の自治体では、「名寄帳」という名称の書類を発行していない場合があります。「固定資産課税台帳」「固定資産物件一覧」などの名称で発行されていないか確認してください。



10. 2024年相続登記義務化と名寄帳の重要性

2024年4月1日から、相続登記が義務化されました。これにより、名寄帳による不動産調査の重要性は一層高まっています。

10-1. 相続登記義務化の概要

項目

内容

施行日

2024年4月1日

対象

相続により不動産の所有権を取得したすべての方

期限

相続の開始および所有権を取得したことを知った日から3年以内

罰則

正当な理由なく期限内に申請しない場合、10万円以下の過料

過去の相続への適用

2024年4月1日より前に発生した相続も対象(2027年3月31日まで)

10-2. 相続登記義務化と名寄帳の関係

相続登記を行うためには、まず被相続人が所有していたすべての不動産を把握する必要があります。不動産の把握漏れがあると、相続登記も漏れてしまい、過料の対象となる可能性があります。

名寄帳を取得することで、以下のリスクを軽減できます。

  • 登記漏れの防止:被相続人の所有不動産を一覧で確認し、登記すべき不動産をすべて特定できる

  • 非課税不動産の発見:私道や山林など、見落としやすい不動産を発見できる

  • 共有不動産の確認:相続人が把握していなかった共有不動産を確認できる


10-3. 相続人申告登記という選択肢

遺産分割協議がまとまらず、期限内に相続登記ができない場合の救済措置として、「相続人申告登記」制度が設けられました。これは「自分が相続人であること」を法務局に申告するだけの簡易な手続きで、相続登記の義務を一時的に果たしたとみなされます。



11. 2026年開始の所有不動産記録証明制度との違い

2026年2月2日から、新たに「所有不動産記録証明制度」がスタートします。この制度により、不動産調査の方法が大きく変わる可能性があります。

11-1. 所有不動産記録証明制度とは

所有不動産記録証明制度は、特定の人物が全国で所有している不動産を、法務局が一覧にして証明書として発行してくれる制度です。

これまでは、不動産の所在地ごとに各市区町村で名寄帳を取得する必要がありましたが、新制度では全国の不動産を一度に検索できるようになります。


11-2. 名寄帳と所有不動産記録証明書の比較

項目

名寄帳

所有不動産記録証明書

施行日

現在利用可能

2026年2月2日〜

発行元

市区町村役場

法務局

調査範囲

市区町村単位

全国

非課税不動産

記載される場合が多い

登記されていれば記載

未登記建物

記載される

記載されない

評価額

記載される

記載されない

11-3. 所有不動産記録証明制度の限界

新制度は非常に便利ですが、以下のような限界があります。

【住所・氏名の変更に対応できない】

所有不動産記録証明書は、登記簿上の「住所」と「氏名」で検索します。引っ越しや結婚で住所・氏名が変わった後に住所変更登記をしていないと、その不動産は検索結果に表示されません。

【相続登記未了の不動産は表示されない】

被相続人名義で登記されていても、その前の相続で登記が未了の場合(先祖名義のままの場合)は表示されません。

【未登記建物は表示されない】

登記されていない建物は、法務局のシステムに登録されていないため、証明書には記載されません。


11-4. 名寄帳は今後も必要か?

所有不動産記録証明制度が始まっても、名寄帳は引き続き必要です。

  1. 未登記建物の確認:名寄帳には未登記建物も記載されるが、所有不動産記録証明書には記載されない

  2. 住所変更未了の不動産の確認:名寄帳は固定資産税の課税情報をもとにしているため、住所変更登記をしていなくても記載される

  3. 固定資産税評価額の確認:名寄帳には評価額が記載される

両方の書類を併用することで、より確実な不動産調査が可能になります。



12. 名寄帳を活用した相続手続きの流れ

12-1. 全体の流れ

  1. 被相続人の死亡(相続開始)

  2. 相続人の確定(戸籍収集)

  3. 相続財産の調査 ← 名寄帳の取得

  4. 遺産分割協議

  5. 相続登記の申請

  6. 相続税の申告(必要な場合)


12-2. 名寄帳を活用した財産調査の手順

【ステップ1:不動産の所在地を把握する】

まず、被相続人がどの市区町村に不動産を所有していたかを把握します。

  • 固定資産税納税通知書を探す

  • 権利証(登記識別情報通知書)を探す

  • 預金通帳を確認(固定資産税の引き落とし記録から所在地を特定)

  • 家族・親族に聞き取り

【ステップ2:各市区町村で名寄帳を取得する】

把握した市区町村それぞれで、名寄帳を取得します。

  • 「共有名義を含む」と明記する

  • 「非課税資産を含む」と申請する

  • 固定資産評価証明書も同時に取得する

【ステップ3:名寄帳の内容を確認する】

取得した名寄帳をもとに、以下を確認します。

  • 土地・建物の所在地と地番・家屋番号

  • 単独所有か共有所有か

  • 非課税不動産の有無

  • 固定資産税評価額

【ステップ4:登記事項証明書を取得して権利関係を確認する】

名寄帳で特定した不動産について、法務局で登記事項証明書を取得し、詳細な権利関係を確認します。

【ステップ5:不動産の一覧表を作成する】

調査した結果をもとに、相続対象となる不動産の一覧表を作成します。この一覧表は、遺産分割協議や相続税申告の基礎資料となります。



13. 名寄帳に関するよくある質問

Q1:名寄帳は誰でも取得できますか?

A:いいえ、取得できる人は限られています。名寄帳には個人の資産情報が記載されているため、本人(納税義務者)、相続人、委任を受けた代理人など、取得権限を持つ人のみが取得できます。


Q2:被相続人がどこに不動産を持っているかわからない場合はどうすればよいですか?

A:以下の方法で調査してください。

  1. 固定資産税納税通知書を探す

  2. 権利証を探す

  3. 預金通帳を確認(固定資産税の引き落とし記録から所在地を特定)

  4. 郵便物を確認

  5. 家族・親族に聞き取り

2026年2月からは、所有不動産記録証明制度を利用して全国の不動産を一括で調査できるようになります。


Q3:名寄帳と固定資産評価証明書は両方取得する必要がありますか?

A:はい、両方取得することをおすすめします。名寄帳は相続財産の調査に使用し、固定資産評価証明書は相続登記や相続税申告の際に法務局・税務署に提出します。


Q4:名寄帳の取得にかかる時間はどのくらいですか?

A:窓口申請なら即日、郵送申請なら1〜2週間程度です。


Q5:名寄帳に記載されていない不動産がある場合はどうすればよいですか?

A:以下のような不動産は名寄帳に記載されない可能性があります。

  • 他の市区町村にある不動産

  • 1月2日以降に取得した不動産

  • 先祖名義のままの不動産

  • 一部の非課税不動産


Q6:相続放棄をする場合も名寄帳を取得する必要がありますか?

A:相続放棄をする場合でも、名寄帳を取得して相続財産を把握しておくことをおすすめします。相続放棄をするかどうかの判断材料として、財産を把握しておくことは重要です。


Q7:名寄帳は何年分取得できますか?

A:自治体によりますが、通常は現年度を含めて過去5年度分程度です。


Q8:法人名義の不動産は名寄帳で確認できますか?

A:法人名義の不動産は、個人名義の名寄帳には記載されません。法人名義の不動産を確認するには、法人として名寄帳を取得する必要があります。



14. 相続した山林・別荘地の処分でお困りの方へ

名寄帳を取得した結果、被相続人が山林や別荘地、原野などを所有していたことが判明するケースは少なくありません。このような不動産は、以下のような問題を抱えていることが多く、相続人にとって大きな負担となります。

相続した山林・別荘地によくある問題

【管理の負担】

  • 草刈りや樹木の管理が必要

  • 不法投棄の防止対策が必要

  • 遠方にあり現地確認が困難

【固定資産税の負担】

  • 利用価値がなくても毎年税金がかかる

  • 保有しているだけでコストが発生し続ける

【売却が困難】

  • 買い手が見つからない

  • 不動産会社に断られる

  • 近隣への売却も難しい

【相続土地国庫帰属制度が利用できない】

  • 建物がある土地は対象外

  • 境界が確定していない土地は対象外

  • 抵当権が設定されている土地は対象外

  • 審査基準が厳しく承認されないケースが多い

一般社団法人日本不動産管財にご相談ください

一般社団法人日本不動産管財は、山林・別荘地・原野商法で購入させられた土地など、処分が困難な不動産の支援をしています。

【このような方はぜひご相談ください】

  • 相続した山林や別荘地の処分に困っている

  • 名寄帳で知らない土地の存在が判明した

  • 不動産会社に売却を断られた

  • 相続土地国庫帰属制度を利用できるか確認したい

  • 固定資産税だけを払い続けている

  • 遠方の土地で管理ができない



まとめ

名寄帳は、相続手続きにおいて被相続人の所有不動産を漏れなく把握するための重要な書類です。

【本記事のポイント】

  • 名寄帳とは:市区町村が作成する、所有者ごとの不動産一覧表

  • 取得すべきケース:課税明細書の紛失、非課税不動産の可能性、複数不動産の所有、共有名義の存在

  • 取得方法:市区町村役場の窓口または郵送で申請。相続人の場合は戸籍謄本等が必要

  • 注意点:市区町村単位でしか取得できない、1月1日時点の情報、先祖名義の不動産は記載されない

  • 相続登記義務化:2024年4月から義務化。名寄帳で不動産を把握し、登記漏れを防ぐことが重要

  • 2026年の新制度:所有不動産記録証明制度で全国の不動産を一括検索可能に。ただし名寄帳も引き続き必要

相続登記の義務化により、被相続人の所有不動産を正確に把握することは、これまで以上に重要になっています。名寄帳を活用して、相続手続きを確実に進めましょう。

相続した山林や別荘地の処分でお困りの方は、一般社団法人日本不動産管財にご相談ください。

この記事は2026年1月時点の情報に基づいて作成しています。法改正等により内容が変更される場合がありますので、最新の情報は各機関にご確認ください。

一般社団法人日本不動産管財


関連記事

すべて表示
山林の境界確定とは?相続土地国庫帰属制度を利用する前に必ず確認すべきポイント

相続土地国庫帰属制度を使って山林を手放したいとお考えの方にとって、「境界が明確であること」は申請の大前提です。 しかし、山林の境界は宅地や農地と異なり、不明確であるケースが多く、「どこまでが自分の土地なのか分からない」とお困りの方も少なくありません。 本記事では、相続土地国庫帰属制度の申請を目指す方に向けて、 山林の境界確定の基本知識から、具体的な手続き・費用感・注意点まで を丁寧に解説します。

 
 
山林売却の完全ガイド|売れない山を確実に処分する5つの方法

はじめに|山林を売りたいあなたへ 「相続した山林を手放したい」「固定資産税の負担から解放されたい」「管理できない山林を処分したい」 そんな悩みを抱えているあなたへ。山林売却は確かに難しいですが、正しい方法を知れば必ず解決できます。 この記事では、山林売却の専門知識がない方でも、スムーズに山林を売却できる具体的な方法を、最新の情報とともに詳しく解説します。 目次 山林が売れない3つの理由と解決策 山

 
 
bottom of page