相続した山林の場所の調べ方/地番だけで正確な位置を特定する方法
- 一般社団法人日本不動産管財

- 13 分前
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相続で山林を取得したものの、「地番は分かるが実際にどこにあるか分からない」というご相談を数多くいただきます。
2024年4月から相続登記が義務化され、山林であっても3年以内に登記申請が必要です。しかし、場所が分からないまま放置すると10万円以下の過料が科される可能性があります。
本記事では、山林の場所を特定するための具体的な方法を、無料でできる調査から専門家依頼まで、実務経験に基づいて詳しく解説します。
なぜ山林の場所は分からなくなるのか?【山林特有の5つの理由】
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山林は一般の土地と異なり、場所の特定が非常に困難です。その理由を理解することが、効率的な調査の第一歩です。
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理由1: 住所表示が存在しない
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山林には住所(住居表示)が付いていません。登記簿には「○○市○○町字△△123番」のような地番のみが記載されています。
この地番をGoogleマップやカーナビに入力しても、ほとんどの場合表示されません。これは異常ではなく、山林には建物がないため住所が付番されていないのが通常だからです。
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理由2: 境界が不明確
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住宅地とは異なり、山林には以下のものがありません:
道路や塀がない 山林全体が森林で覆われており、土地の境目が視覚的に分からない
境界杭がない・見つからない 設置されていても、数十年の間に土砂に埋もれたり、樹木の成長で見えなくなっている
目印がない 周辺に建物や施設など、位置を特定する手がかりとなるものが存在しない
山林の境界は、尾根や谷、沢筋、林相の違いなどで決められることが多く、測量図がなければ特定が極めて困難です。
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理由3: 公図の精度が低い
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特に山林の公図は、明治時代に作成されたものが多く、測量が粗雑でした。
公図の問題点
縮尺が不正確
土地の形状は分かるが、実際の位置との対応が困難
広大な山林の場合、A3用紙5〜10枚に分かれてしまう
つなぎ合わせても、現地の地形と一致させるのが困難
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理由4: 前所有者からの情報がない
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相続で取得した山林の多くは、被相続人自身も現地に行ったことがないケースが大半です。
祖父母の代から所有していたが詳細不明
固定資産税は払っていたが場所を知らなかった
相続時に初めて山林の存在を知った
このため、家族に聞いても情報が得られないことがほとんどです。
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理由5: 広大で実測が困難
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山林の面積単位はヘクタール(ha)レベルが一般的です。
1ヘクタール = 約3,000坪 = 田んぼ10枚分
このような広大な土地を実測するには:
膨大な時間とコストがかかる
急斜面や藪で作業が困難
測量費用が数十万円〜数百万円
山林の価値が低く、費用対効果が合わない
そのため、多くの場合は「おおよその場所」の把握が現実的な目標になります。
【基本】まず準備すべき書類と情報
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調査を始める前に、以下の情報を確認・準備しましょう。
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必須情報: 地番の確認
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地番がなければ何も始まりません。以下の書類で確認できます。
1. 固定資産税納税通知書(最優先) 毎年5月頃に市町村から送付される書類。「課税明細書」の部分に地番が記載されています。※固定資産税が発生していない場合は送付されません。

2. 登記簿謄本(登記事項証明書) 法務局で取得可能(1通600円)。「所在」の欄に地番が記載されています。

3. 遺産分割協議書 相続時に作成した場合、そこに地番が記載されています。
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地番が分からない場合の調査方法
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市町村役場で「名寄帳(なよせちょう)」を取得
名寄帳とは、所有者ごとに所有する全ての不動産をまとめた一覧表です。
取得方法
山林所在地の市町村役場の税務課へ
本人確認書類と相続関係を証明する書類を持参 ※郵送での申請も可能
「名寄帳の写し」または「固定資産課税台帳の閲覧」を申請
費用: 閲覧は無料、写しの交付は数百円程度
これで、被相続人が所有していた全ての土地の地番が判明します。
【実践】山林の場所を調べる7つの方法【優先順位順】
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以下、効果的な順番で解説します。まず無料の方法から試し、必要に応じて有料の方法に進むのが賢明です。
方法1: 都道府県庁で森林簿・森林計画図を取得【無料〜360円/最重要】
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山林特有の最も有効な方法です。都道府県は森林整備や保安林管理のため、詳細な山林情報を持っています。
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森林簿とは
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林班・小班単位で山林の詳細情報が記載された台帳です。
記載内容
所在地番
林班・小班番号
面積
樹種(杉、檜など)
林齢(樹木の年齢)
材積
所有者情報
重要: 林小班番号が分かれば、かなり正確に場所を特定できます。
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森林計画図とは
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地域森林計画の対象となる民有林の位置を示した地図です。
特徴
地形図上に林班・小班の境界が記載
公図より精度が高い場合が多い
航空写真や地形と照合しやすい
現実的に最も場所特定に役立つ資料
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取得方法
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取得場所: 都道府県庁の林務課・森林整備課など(名称は自治体により異なる)
持参するもの
本人確認書類(運転免許証等)
所有者であることを証明する書類(登記簿謄本、固定資産税納税通知書等)
地番のメモ
費用
森林簿の閲覧: 無料
森林計画図の交付: 1通360円程度
注意点
地域によっては出張所で取得可能
電話で事前確認すると確実
森林組合でも情報提供してくれる場合あり
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活用法: 林小班から場所を特定する
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ステップ1: 森林簿で自分の地番が属する林小班を確認
ステップ2: 森林計画図でその林小班の位置を確認
ステップ3: GoogleマップやWeb地図と照合
ステップ4: 航空写真で現地の様子を確認
成功率: 高い(70〜80%)
これが山林調査の最も効率的な方法です。一般の土地と異なり、山林は森林行政の管轄下にあるため、都道府県が詳細情報を持っているのです。
方法2: 市町村役場で固定資産税地番図を閲覧【無料】
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市町村は固定資産税を課税するため、公図よりも新しい地番図を管理しています。
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取得方法
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場所: 市町村役場の固定資産税課・資産税課など
手順
窓口で「固定資産税の課税地番図を見たい」と申し出る
本人確認書類と地番のメモを提示
地番図を閲覧
スマホで撮影してよいか確認(多くの場合OK)
または手書きで写し取る
費用: 閲覧は無料
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地番図の活用法
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ステップ1: 地番図で自分の土地の形状と周辺地番を確認
ステップ2: 事前に用意した広域の住宅地図を持参
ステップ3: 職員に「この地番図と住宅地図を照合して、場所を示してほしい」と依頼
ステップ4: 住宅地図に手書きで記入してもらうか、自分で書き込む
成功率: 中〜高(50〜70%)
方法3: 法務局で公図・地積測量図を取得【362円〜450円】
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基本中の基本の資料ですが、山林の場合はこれだけでは場所特定が困難なことが多いです。
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公図とは
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土地の形状と隣接地番との位置関係を示した図面です。
山林の公図の特徴
広大な土地の場合、A3用紙が5〜10枚に及ぶ
縮尺が不正確(特に古い山林)
これだけでは場所特定が困難
それでも取得すべき理由
土地の形状が分かる
隣接地番が分かる
他の資料と照合するための基礎資料

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地積測量図とは
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測量によって作成された、より正確な図面です。
重要: 地積測量図には座標値が記載されている場合があります。
座標付き地積測量図があれば、精度の高い位置特定が可能です。
ただし注意: 古い山林の多くは地積測量図が存在しません。
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取得方法と費用
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取得方法 | 費用 | 証明力 |
登記情報提供サービス(オンライン) | 362円/通 | なし(参考用) |
オンライン請求→郵送 | 450円/通 | あり |
法務局窓口 | 450円/通 | あり |
おすすめ: まず登記情報提供サービスで362円で取得し、内容を確認してから正式な証明書が必要か判断
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座標から場所を特定する高度な方法
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地積測量図に座標が記載されている場合
公図の右上と左下に「X=12345.67, Y=98765.43」のような座標が記載されていることがあります。

重要な注意点
測量のX軸は縦方向(学校で習ったのと逆)
日本全国で19種類の座標系がある
どの座標系か確認が必要(平面直角座標系など)
活用手順
座標系を確認
座標変換ツール(国土地理院提供)で緯度経度に変換
GoogleマップでWGS84形式の緯度経度として表示
現地の位置を特定
成功率: 座標がある場合は非常に高い(90%以上)
方法4: 自治体のGIS(地理情報システム)【無料】
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対応している自治体では非常に有効な方法です。
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使い方
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ステップ1: 「○○市 GIS」「○○町 地番検索」で検索
ステップ2: 自治体のGISサイトにアクセス
ステップ3: 地番を入力して検索
ステップ4: 航空写真・地形図と重ねて表示
ステップ5: 位置を確認してスクリーンショット保存
メリット
完全無料
航空写真で森林の様子が確認できる
地形が視覚的に分かりやすい
デメリット
すべての自治体が提供しているわけではない
山間部では精度が低い場合がある
成功率: 対応自治体では高い(60〜70%)
方法5: MAPPLE法務局地図ビューア【無料・2024年新ツール】
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2024年から利用可能になった最新ツールです。
法務局の登記所備付地図データを、マップル地図上に重ねて表示してくれます。
特徴
法務局の正式な地図データを使用
一般の地図と重ねて表示されるので分かりやすい
無料で利用可能
対応エリア: まだ全国をカバーしていませんが、徐々に拡大中
アクセス: 「MAPPLE法務局地図ビューア」で検索
成功率: 対応エリアでは中程度(40〜60%)
方法6: Googleマップ・地理院地図との照合【無料】
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他の資料と組み合わせて使う方法です。
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Googleマップの活用法
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ステップ1: 公図から土地の形状を確認
ステップ2: Googleマップの航空写真を表示
ステップ3: 公図の形状と森林の地形を照合
ステップ4: 道路、沢、尾根などの地形的特徴を手がかりに推定
成功のポイント
境界に道路や沢がある場合は特定しやすい
周辺に建物がある場合は、その地番から推定
ただし、一面の森林の場合は極めて困難
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地理院地図の活用法
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国土地理院が提供する高機能な地図サービスです。
山林調査に有効な機能
標高・断面図表示 斜面の傾斜角度が分かり、急傾斜地かどうか判断できます。
年代別航空写真 白黒写真も含め、過去数十年分の航空写真が見られます。昔の様子から手がかりが得られる場合があります。
等高線表示 尾根や谷の位置が明確になり、境界の推定に役立ちます。
アクセス: 「地理院地図」で検索
方法7: 聞き取り調査【無料だが手間がかかる】
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地元の情報に詳しい人から直接聞く方法です。
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誰に聞くか
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近隣住民 特に高齢の方は、昔の山林の様子を知っている可能性があります。
隣接地所有者 公図から隣接地番を確認し、登記簿で所有者を調べて訪問します。
森林組合 地域の山林を熟知している組合員がいる場合があります。
地元の土地家屋調査士 古くから営業している事務所は、地域の古い地図を持っている可能性があります。
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聞き取りのコツ
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準備するもの
Googleマップをプリントしたもの
公図のコピー
地番のメモ
質問の仕方
自己紹介と相続した旨を説明
地番を伝える
「この辺りだとご存知ですか?」と丁寧に尋ねる
分かる方がいれば、地図に書き込んでもらう
成功率
里山レベル: 中程度(40〜60%)
山奥: 低い(20%以下)。「自分も分からない」と言われることが多い
【専門家依頼】確実に場所を特定する方法
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自力での調査が困難な場合、または正確な境界確定が必要な場合は専門家に依頼します。
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土地家屋調査士に依頼【最も確実】
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山林の境界確定の専門家です。
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依頼できる内容
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現況測量(位置確認のみ) おおよその位置と形状を測量で確認
境界確定測量 隣接地所有者立会いのもと、正式に境界を確定し、境界杭を設置
地積測量図の作成 測量結果を図面化し、法務局に登記
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費用の目安
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作業内容 | 費用相場 | 納期 |
現況測量(位置確認) | 10〜30万円 | 1〜2ヶ月 |
境界確定測量 | 35〜80万円 | 2〜4ヶ月 |
広大な山林(数ヘクタール) | 100万円〜 | 3〜6ヶ月 |
費用が変動する要因
土地の面積(広いほど高額)
地形の複雑さ(急斜面は費用増)
隣接地の数(多いほど立会いに手間)
アクセスの悪さ(道路から遠いと費用増)
藪の状況(伐採が必要な場合は費用増)
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依頼するメリット
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確実性 専門知識と測量機器により、正確な位置が特定できます。
境界確定 隣接地所有者との立会い調整も代行してくれます。
法的書類の作成 地積測量図など、相続登記や売却時に必要な書類を作成してもらえます。
将来のトラブル防止 境界杭を設置することで、将来の紛争を防止できます。
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依頼時に準備するもの
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登記簿謄本
公図
固定資産税納税通知書
これまでに収集した資料(森林計画図、地積測量図など)
相続関係説明図(相続の場合)
【山林特有】境界の決め方を理解する
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山林の境界は、住宅地とは全く異なる方法で決められています。
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山林境界の典型的な目印
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地形による境界
尾根筋 山の頂上から下る稜線。「尾根を境とする」という決め方が多い。
谷筋・沢 水が流れる谷底。「沢を境とする」という決め方が一般的。
獣道 動物が通る道が境界になっている場合がある。
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植生による境界
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林相の違い 杉林と檜林の境目、雑木林と植林の境目など、樹種の違いが境界を示す。
林齢の違い 明らかに樹木の太さや高さが異なる場合、その境目が境界。
目印の木 周囲と異なる種類の木を植えて境界の目印にしている場合がある。
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人工的な境界
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境界杭 コンクリート杭や石杭。ただし、数十年で土に埋もれることが多い。
境界標識 木や岩に「境」などと刻んだもの。かなり古い場合もある。
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古老の証言
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最も重要な情報源
昔から山林に詳しい高齢者の証言が、最も確実な情報である場合が多いです。
「この尾根から向こうが○○さんの山」 「この沢から手前が△△家の山」
このような口伝が、実は最も正確な境界情報だったりします。
【重要】山林面積の「縄延び」「縄縮み」とは
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山林特有の現象を理解しておきましょう。
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縄延び(なわのび)
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実測面積が登記面積より大きい現象です。
山林では非常に多く、実測が登記面積の2〜3倍になることも珍しくありません。
原因
明治時代の測量技術が未熟だった
課税を少なくするため、わざと小さく申告した
急斜面の測量が不正確だった
影響
固定資産税は登記面積で課税されるため、実際より少ない税金
売却時は実測面積で取引できる可能性
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縄縮み(なわちぢみ)
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実測面積が登記面積より小さい現象です。
山林では稀ですが、存在します。
問題点
融資を受ける際、担保価値が過大評価される
このような山林を「担保山」と呼ぶ
売却時にトラブルになる可能性
【2024年義務化】相続登記との関係
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2024年4月1日から相続登記が義務化され、山林も例外ではありません。
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義務の内容
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期限: 相続を知った日から3年以内
罰則: 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料
適用: 2024年4月1日以前の相続にも遡及適用
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「場所が分からない」は正当な理由にならない
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重要: 土地の場所が特定できないことは、相続登記を怠る正当な理由として認められません。
すでに相続が発生している場合
2024年4月1日から3年以内(2027年3月31日まで)に登記必要
今すぐ場所の特定に着手すべき
これから相続する場合
被相続人が存命のうちに、一緒に山林を確認
可能であれば境界確定測量を実施
情報を記録に残す
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相続土地国庫帰属制度を利用する場合
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不要な山林を国に引き取ってもらう制度を利用する場合:
要件
境界が明らかであること
測量・境界確定が完了していること
つまり、場所の特定と境界確定は必須です。
費用: 審査手数料14,000円 + 負担金(21万円~面積に応じて)
【ケース別】最適な調査方法の選び方
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あなたの状況に合わせて、効率的な方法を選びましょう。
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ケース1: 費用をかけたくない【自力調査】
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推奨手順
都道府県庁で森林簿・森林計画図を取得(無料〜360円)
市町村役場で固定資産税地番図を閲覧(無料)
登記情報提供サービスで公図取得(362円)
自治体GIS、MAPPLE法務局地図ビューアで確認(無料)
Googleマップ・地理院地図と照合(無料)
総費用: 約1,000円以内
成功率: 60〜70%(里山レベル)、30〜40%(山奥)
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ケース2: 確実に場所を特定したい【専門家依頼】
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推奨方法
土地家屋調査士に現況測量を依頼
費用: 10〜30万円
成功率: 95%以上
向いている人
山林を売却予定
相続土地国庫帰属制度を利用予定
隣地とのトラブルが懸念される
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ケース3: 遠方で現地に行けない【オンライン調査】
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推奨手順
都道府県庁に電話・メールで問い合わせ(森林簿・森林計画図の郵送可能か確認)
登記情報提供サービスで公図をオンライン取得
自治体GIS、Googleマップ等で確認
必要に応じて地元の土地家屋調査士に依頼
総費用: 数千円(自力の場合)、10万円〜(専門家依頼の場合)
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ケース4: 売却・処分を考えている【専門家依頼推奨】
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推奨方法
当社団のような山林処分専門家に相談(無料)
必要な調査を依頼
処分方法の提案を受ける
メリット
調査から処分まで一貫してサポート
無駄な費用をかけずに済む
処分方法の選択肢が広がる
よくある質問(FAQ)
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Q1: 公図を取得しましたが、広すぎて場所が分かりません。
A: 森林計画図と併用してください。公図だけでは山林の位置特定は困難です。都道府県庁で森林計画図を取得し、林小班番号から場所を特定する方法が最も効果的です。
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Q2: 地番をGoogleマップに入力しても出てきません。
A: 正常です。山林には住所表示がないため、Googleマップでは表示されません。森林計画図や公図から位置を確認し、緯度経度で検索してください。
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Q3: 境界杭が全く見つかりません。
A: 山林では一般的です。境界杭が埋もれている、または最初から設置されていない場合が多いです。尾根・谷・林相の違いなど、地形と植生から推定します。正確な境界が必要な場合は土地家屋調査士に依頼してください。
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Q4: 森林計画図に自分の山林が載っていません。
A: 以下の可能性があります:
地域森林計画の対象外(保安林等)
面積が小さすぎる
最新版に反映されていない
この場合は、市町村役場の固定資産税地番図を確認してください。
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Q5: 測量費用が山林の価値より高額です。どうすべきですか?
A: 費用対効果を考えましょう。
売却予定なし: おおよその位置確認のみで十分(自力調査)
売却予定あり: 買い手が測量費用を負担する条件で売却
処分したい: 当社団のような専門家に相談(測量不要で引き取り可能な場合あり)
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Q6: 隣接地の所有者が分かりません。
A: 登記簿謄本で確認できます。
公図で隣接地の地番を確認
その地番で登記簿謄本を取得(1通600円)
所有者の氏名・住所が記載されています
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Q7: 相続登記の期限に間に合いそうにありません。
A: 相続人申告登記を利用してください。 簡易的な登記で義務を果たし、時間稼ぎができます。その間に場所の特定と本登記の準備を進めましょう。
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Q8: 山林を放棄したいのですが可能ですか?
A: 相続土地国庫帰属制度または専門家へのご相談を検討してください。
国庫帰属: 要件厳しい、境界確定必須
専門家: 当社団のような専門団体なら、境界未確定でも相談可能
まとめ: 山林の場所を調べる最も効率的な手順
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ステップ1【必須】: 地番の確認 固定資産税納税通知書または登記簿謄本で地番を確認。不明な場合は市町村役場で名寄帳を取得。
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ステップ2【最優先】: 都道府県庁で森林情報取得 林務課で森林簿・森林計画図を取得(無料〜360円)。林小班番号から位置を特定。
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ステップ3【補助】: 市町村役場で地番図確認 固定資産税課で地番図を閲覧(無料)。住宅地図と照合。
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ステップ4【基礎資料】: 法務局で公図取得 登記情報提供サービスで公図を取得(362円)。土地の形状と隣接地番を確認。
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ステップ5【Web活用】: オンラインツールで照合 自治体GIS、MAPPLE法務局地図ビューア、Googleマップ、地理院地図を活用(無料)。
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ステップ6【任意】: 聞き取り調査 近隣住民、隣接地所有者、森林組合に問い合わせ。
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ステップ7【必要な場合】: 専門家依頼 自力で特定できない場合、または正確な境界が必要な場合は土地家屋調査士に依頼(10万円〜)。
2024年から状況が変わっています
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相続登記義務化により、山林であっても放置できません。
場所が分からない山林を放置すると
10万円以下の過料
将来の相続時にさらに複雑化
売却・処分が困難に
早めの対応が重要です。
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この記事を読んでも場所が特定できない場合、または処分をお考えの場合は、ご相談ください。当社団では、年間多数の山林調査・処分案件を扱っており、豊富な実績とノウハウがあります。
放置すればするほど問題は複雑化します。今すぐ行動を始めましょう。
