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筆界未定地の山林はどうすればいい?境界未確定の森林を処分・売却・活用する全手順

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 2月6日
  • 読了時間: 20分

相続した山林が「筆界未定地」だった——。登記簿を取得して初めてその事実を知り、途方に暮れる方が年々増えています。

山林の地籍調査進捗率はわずか46%(令和6年度末時点)。全国の森林の半分以上で正確な境界が確認されていない現状があり、筆界未定地となっている山林は決して珍しくありません。

筆界未定地の山林は「売却できない」「国にも引き取ってもらえない」と思い込んでいる方も多いですが、実際にはいくつかの解決方法があります。

この記事では、筆界未定地となった山林について、原因の特定から解消方法、処分・売却の具体的手順、さらに2023年にスタートした相続土地国庫帰属制度の活用まで、実務に即した情報を徹底解説します。



目次


1. 筆界未定地とは?山林で特に多い理由

筆界未定地の定義

筆界未定地とは、国土調査法に基づく地籍調査において、隣接する土地との境界(筆界)が確認できなかったために、「筆界未定」として処理された土地のことです。

不動産登記法第123条では、「筆界」を「土地が登記されたときにその土地の範囲を区画するものとして定められた線」と定義しています。筆界未定地はこの線が公的に確定していない状態であり、法務局の地図(公図)上では複数の地番が「○+○+○」のようにプラス記号で連記される形で表示されます。

ここで重要なのは、筆界未定地であっても土地の所有権自体は認められているという点です。筆界未定はあくまで「登記上の境界線が確定していない」状態であり、所有権が失われるわけではありません。


「筆界」と「所有権界」の違い

土地の境界には、「筆界」と「所有権界」の2つの概念があります。

筆界(公法上の境界)は、登記された際に定められた土地の区分線であり、当事者同士の合意では変更できません。一方、所有権界(私法上の境界)は、実際に所有権が及ぶ範囲を示すもので、売買や時効取得などによって変動することがあります。

通常、筆界と所有権界は一致しますが、以下のような場合にずれが生じることがあります。

  • 土地の一部を売買・贈与した場合

  • 時効によって所有権を取得した場合

  • 長年にわたる占有状態が筆界と異なる場合

山林においてはこのずれが生じやすく、特に代々受け継がれてきた山林では「ここからウチの山」という認識と登記上の筆界が一致していないケースが少なくありません。


なぜ山林は筆界未定地になりやすいのか

山林が筆界未定地となりやすい理由は、大きく分けて以下の5つです。

① 地籍調査の進捗率が極めて低い

令和6年度末時点における全国の地籍調査進捗率は53%ですが、山村部(林地)に限ると46%にとどまっています。日本の国土の約3分の2は森林であり、地籍調査が行われていない森林の面積は10万㎢(1,000万ha)以上という膨大な規模です。


② 地形が急峻で現地調査が困難

山林は急勾配の斜面や深い谷が多く、人が立ち入って境界を確認すること自体が極めて難しい環境にあります。冬季は積雪により調査ができない地域も多く、調査期間が限られることも進捗の遅れに拍車をかけています。


③ 所有者の高齢化と不在村化

山村部では、土地の境界について知る人が急速に減少しています。境界の位置を口伝えで把握していた高齢者が亡くなり、次の世代は都市部に移住して山林の正確な境界を把握していないケースが増加しています。


④ 森林の荒廃による境界標の消失

手入れがされずに荒廃した森林では、かつて存在した境界標(杭やテープなど)が消失し、尾根筋や沢筋といった自然地形に基づく境界の目印も判別困難になっています。


⑤ 地籍調査時の立会い不能・拒否

地籍調査では土地所有者の立会いが原則として必要ですが、所有者が不明であったり、遠方に住んでいて立会いに来られなかったり、あるいは隣地所有者との間で境界に争いがあって確認ができなかった場合に、筆界未定地として処理されます。


山林の筆界未定地が増え続ける背景

国土交通省の統計によれば、林地の地籍調査は第7次国土調査事業十箇年計画(令和2〜11年度)の目標に対し、達成率はわずか14%程度にとどまっています。計画の半分のペースでしか進んでいないのが実情であり、このままでは山林の筆界未定地問題が今後さらに深刻化することは避けられません。



2. 自分の山林が筆界未定地かどうかを確認する方法

相続した山林が筆界未定地かどうかは、以下の3つの方法で確認できます。

① 登記事項証明書(全部事項証明書)で確認する

法務局の窓口またはオンライン登記情報提供サービスで登記事項証明書を取得し、表題部の「地図番号」欄を確認します。筆界未定地の場合、ここに「国調筆界未定地」と記載されています。

取得費用は、法務局窓口で600円、オンライン請求・郵送受取で500円、オンライン請求・窓口受取で480円です。


② 公図(地図)で確認する

法務局で公図を取得し、所有する山林の地番の表示を確認します。筆界未定地の場合、通常は各筆ごとに境界線が引かれているところ、複数の地番が「○+○+○」のようにプラス記号で連記され、境界線が引かれていない状態で表示されます。

山林では10筆以上が一体となって筆界未定地になっているケースもあり、公図上でひときわ広い「白抜き」の区画として目立つことがあります。


③ 地積測量図の有無を確認する

法務局に地積測量図が備え付けられているかを確認します。筆界未定地の場合、境界が確定していないため、地積測量図が存在しないことが一般的です。


④ 現地での境界標の確認

実際に山林の現地に赴き、境界標(境界杭、金属プレート、刻み印など)の有無を確認する方法もあります。ただし、山林は交通の便が悪く危険も伴うため、無理な単独行動は避け、専門家(土地家屋調査士など)に依頼することをお勧めします。


確認時の注意点

筆界未定地に関する情報は、市区町村の固定資産税課でも把握していることがあります。名寄帳(固定資産課税台帳の写し)を取得すれば、所有するすべての土地について地籍調査の状況を確認できる場合があります。

また、地籍調査の実施状況は、国土交通省の「地籍調査Webサイト」で市区町村単位の進捗率を確認できます。お住まいの地域で地籍調査が実施済みかどうかを事前に把握しておくとよいでしょう。



3. 筆界未定地の山林を放置するとどうなるか

筆界未定地であっても所有権はあり、使用すること自体に問題はありません。しかし、放置することで以下のような深刻な問題が生じます。

登記手続き上の制限

筆界未定地の山林では、原則として以下の登記手続きができません。

  • 分筆登記:一つの土地を複数に分けることができない

  • 合筆登記:複数の土地を一つにまとめることができない(同一所有者の場合の例外あり)

  • 地積更正登記:登記簿上の面積を実際の面積に修正することができない

  • 地目変更登記:山林から他の地目への変更ができない

これらの制限は、相続時の遺産分割や、将来の土地活用を検討する際に大きな障害となります。


売却が極めて困難になる

筆界未定地の山林は、通常の不動産市場では買い手がつきにくい状態です。

  • 買主が境界の範囲を正確に把握できない

  • 買主側の金融機関が融資の担保として評価しない

  • 将来の隣地所有者とのトラブルリスクがある

  • 分筆ができないため広大な土地をそのまま購入する必要がある

仮に売却できたとしても、筆界未定であることによる減額は避けられず、通常の相場から大幅に値下がりした価格での取引になる可能性が高いです。


相続時のトラブルの原因になる

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。相続で取得した不動産は、取得を知った日から3年以内に相続登記を行う必要があります。

筆界未定地であっても相続登記自体は可能ですが、分筆ができないため複数の相続人で土地を分割して相続することができません。共有名義にせざるを得ないケースが生じ、将来さらに相続が重なることで権利関係が複雑化するリスクがあります。


管理責任と賠償リスク

山林の所有者には、土地の管理責任があります。筆界未定地であっても、以下のようなリスクは変わりません。

  • 倒木や土砂崩れによる隣地への被害に対する損害賠償責任

  • 不法投棄の温床となった場合の行政指導や撤去命令

  • 山火事の原因となった場合の責任

  • 固定資産税の継続的な負担

特に近年は、豪雨による土砂災害が頻発しており、管理が行き届いていない山林の所有者に対する責任追及の可能性も高まっています。



4. 筆界未定地を解消する5つの方法と費用・期間の比較

筆界未定地を解消する方法は複数あります。それぞれの特徴、費用、期間を比較しながら解説します。

方法①:隣地所有者との協議による境界確認

最も基本的な方法は、隣地所有者全員と協議して境界を確認し、筆界確認書を作成した上で法務局に地図訂正を申請する方法です。

  • 費用目安:土地家屋調査士への依頼費用として35万〜80万円程度(測量規模による)

  • 期間目安:3か月〜1年程度

  • メリット:円満に解決でき、隣人関係を維持できる

  • デメリット:隣地所有者全員の立会い・実印・印鑑証明書が必要。1人でも非協力的な所有者がいると進められない

山林の場合、隣地の数が多いことや、隣地所有者が不明・不在であることが多いため、この方法だけで解決できるケースは限られます。


方法②:筆界特定制度の利用

筆界特定制度は、平成18年(2006年)に創設された制度で、法務局の筆界特定登記官が外部専門家(筆界調査委員)の意見を踏まえて筆界の位置を特定する制度です。

  • 費用目安:申請手数料(数千円〜数万円)+測量費用(50万〜80万円程度)

  • 期間目安:6か月〜1年程度

  • メリット:裁判に比べて迅速・安価。隣地所有者の同意がなくても申請でき、一方の所有者だけで手続きを進められる。筆界調査委員には隣地への立ち入り権限が認められている

  • デメリット:費用は申請人の負担。特定された筆界に法的拘束力はない(後から裁判で争うことは可能)。境界杭の設置はされない

山林の場合、固定資産評価額が低いため申請手数料は比較的低額で済みますが、測量費用は面積や地形の難易度によって大きく変動します。

申請手数料の計算方法:対象土地と相手方土地の固定資産税評価額の合計を2で割り、さらに5%を乗じた額が「基礎となる金額」となり、これに基づいて手数料が算定されます。


方法③:境界確定訴訟

隣地所有者との協議や筆界特定制度では解決できない場合、裁判所に境界確定訴訟を提起する方法があります。

  • 費用目安:弁護士費用50万〜150万円程度+土地家屋調査士費用+裁判所費用

  • 期間目安:1年〜3年程度

  • メリット:確定判決には法的拘束力がある。裁判所の公権的判断であるため、筆界未定地内に所在不明な土地があるような難しいケースでも地図訂正に応じてもらえる

  • デメリット:費用と時間がかかる。隣地所有者全員を被告として訴訟を提起する必要がある

山林の筆界未定地では、関係する土地の筆数が多く、被告も多数になりがちです。ただし、弁護士が事前に説明書面を送付して理解を求めれば、円滑に進むケースも多いとされています。


方法④:同一所有者による合筆登記

筆界未定地のうち、すべての土地が同一の所有者である場合は、合筆登記によって筆界未定を解消できる場合があります。

  • 費用目安:土地家屋調査士への依頼費用として5万〜15万円程度

  • 期間目安:1〜2か月程度

  • 条件:同一所有者であること、抵当権等が同一であること、登記簿上の地目が同一であること

  • メリット:比較的安価で迅速に解消できる

  • デメリット:すべての条件を満たすケースが限られる

相続した複数筆の山林がすべて自分の名義であれば、この方法が最も効率的です。


方法⑤:リモートセンシング技術を活用した新たな調査手法

令和2年(2020年)の国土調査法改正により、山村部においてリモートセンシング技術を活用した効率的な調査手法が導入されました。

航空レーザー測量やドローン測量によって得られた地形データをもとに、現地立会いを必要としない新たな調査手続きが可能になっています。

  • 地形が急峻で現地に行けない山林

  • 荒廃して境界がわからない山林

  • 境界標がなく相続したが所在がわからない山林

このような山林を念頭に、図面等を活用した「筆界案」による調査が認められるようになりました(地籍調査作業規程準則第30条第2項)。

ただし、この手法はあくまで地籍調査事業として市町村等が実施するものであり、個人が直接利用できるものではありません。お住まいの地域で地籍調査が計画されている場合は、積極的に協力することで筆界未定の解消につながります。


各方法の比較表

方法

費用目安

期間目安

隣地所有者の同意

法的効力

隣地所有者との協議

35万〜80万円

3か月〜1年

全員必要

合意に基づく

筆界特定制度

50万〜90万円

6か月〜1年

不要

事実上の証明力

境界確定訴訟

100万〜300万円

1〜3年

不要

確定判決(法的拘束力あり)

合筆登記

5万〜15万円

1〜2か月

不要(同一所有者のみ)

登記上の解消

リモートセンシング調査

個人負担なし

市町村の計画による

原則不要

地籍調査成果として登記



5. 筆界未定地の山林を売却・処分する方法

筆界未定地の山林であっても、売却や処分の方法は存在します。状況に応じて最適な方法を選びましょう。

方法①:筆界未定を解消してから売却する

最も確実な方法は、前章で解説した方法で筆界未定を解消してから売却することです。境界が確定していれば、通常の山林として不動産市場に出すことができます。

ただし、山林の場合はそもそもの市場価値が低いことが多く、筆界未定の解消にかかる費用(数十万〜数百万円)に見合う売却価格が得られるかどうかは慎重に検討する必要があります。


方法②:筆界未定のまま専門業者に買取してもらう

訳あり物件を専門に扱う不動産業者に、筆界未定地のまま買い取ってもらう方法です。

  • メリット:境界確定の手間と費用がかからない。迅速な売却が可能

  • デメリット:買取価格は通常の相場よりも大幅に低くなる

山林の場合、そもそも買い手が見つかりにくいため、この方法が現実的な選択肢となるケースが多いです。


方法③:境界非明示の特約を付けて売却する

買主との間で「境界を決めない旨」に合意する特約を付けて売却する方法です。

  • メリット:境界確定の費用を抑えられる

  • デメリット:買主がリスクを負うため買い手が見つかりにくい。引き渡し後にトラブルとなる可能性がある

この方法を選ぶ場合は、特約とは別に合意書を交わし、売主・買主双方がリスクを十分に理解した上で取引を行うことが重要です。


方法④:隣地所有者への売却・贈与

山林の隣地所有者に買い取ってもらう、または無償で贈与する方法です。隣地所有者にとっては所有地が広がるメリットがあるため、意外と受け入れてもらえるケースがあります。

隣地所有者同士であれば境界について当事者間で合意しやすく、筆界確認の手続きも比較的スムーズに進む可能性があります。


方法⑤:自治体やNPOへの寄附

一部の自治体やNPO法人が、山林の寄附を受け入れている場合があります。ただし、管理コストの問題から受け入れを断られるケースが大半であり、成功率は低いのが実情です。

寄附を検討する場合は、事前に対象の自治体やNPOに確認し、受け入れ条件を確認しましょう。



6. 相続土地国庫帰属制度は筆界未定地の山林でも使えるか

制度の概要

相続土地国庫帰属制度は、令和5年(2023年)4月27日にスタートした制度で、相続または遺贈によって取得した土地を、一定の要件を満たした場合に国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる制度です。


筆界未定地の山林でも申請できるのか?

結論から述べると、筆界未定地の山林であっても、相続土地国庫帰属制度の申請が認められる可能性はあります

制度上、「境界が明らかでない土地」は却下事由の一つに挙げられていますが、これは「申請した土地について隣接地の所有者との間で境界に関する争いがある場合」を指しています。

つまり、以下の2点が満たされれば、公図上の筆界が確定していない(筆界未定地である)場合でも申請は認められ得ます。

  1. 申請した土地と隣地との境界が現地で確認できること

  2. 申請者が指示する境界について、隣接地所有者の認識と相違がなく争いがないこと

重要なのは、確定測量や地積測量図の提出は必須要件ではないという点です。法務省のガイドラインによれば、申請時に境界確認書や境界確定図の提出は求められていません(あれば添付が推奨されますが、義務ではありません)。


審査上の境界判断のポイント

相続土地国庫帰属制度の審査では、境界は主に以下の方法で判断されます。

  • 申請者が現地で境界を指示できること

  • 境界の目印が固定的なものであること(立木、尾根、沢、道路など)

  • 法務局から隣地所有者にお手紙を送り、異議が出ないこと

仮に隣地所有者から異議が出た場合でも、申請者が隣地所有者と調整して境界についての争いがなくなれば、却下事由は解消されたとして承認される可能性があります。


山林の場合の費用

相続土地国庫帰属制度を利用する場合、以下の費用がかかります。

審査手数料:1筆あたり14,000円

負担金(承認後に納付):山林(森林)の場合は面積に応じて算定されます。

面積

負担金の目安

〜3,000㎡

約27万円

〜5,000㎡

約30万円

〜10,000㎡

約34万円

10,000㎡超

面積に応じて増額

なお、隣接する2筆以上の山林について、合算負担金の申出を行えば、負担金を軽減できる場合があります。


国庫帰属制度を利用できない山林

以下に該当する山林は、国庫帰属が認められません。

  • 建物が存在する土地

  • 抵当権等の担保権が設定されている土地

  • 通路として他人に使用されている土地

  • 土壌汚染がある土地

  • 境界について隣接地所有者と争いがある土地

  • 崖(勾配30度以上・高さ5m以上)があり管理に過分の費用・労力がかかる土地

  • 地上に不法投棄物などの管理・処分を阻害する有体物がある土地

  • 地下に埋設物等がある土地

山林の場合、「崖地」や「不法投棄」が問題となるケースが比較的多く見られます。申請前に現地調査を行い、これらの障害がないか確認しておくことが重要です。



7. 山林の筆界未定地に関する最新の法制度と動向(2024〜2025年)

相続登記の義務化(2024年4月1日施行)

2024年4月1日から、相続で取得した不動産の登記が義務化されました。正当な理由なく相続登記を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

筆界未定地の山林であっても相続登記の義務は免れません。ただし、筆界未定地であることを理由に分筆ができず、遺産分割が困難な場合は、まず法定相続分での相続登記や、相続人申告登記を行うことで義務を果たすことができます。


国土調査法の改正とリモートセンシング技術の活用

令和2年(2020年)の国土調査法改正により、山村部における地籍調査の効率化を目指した新たな手法が導入されています。

  • リモートセンシングデータの活用:航空レーザー測量やドローンによる高精度な地形データを活用

  • 現地立会いを必要としない新たな調査手続き:図面等による筆界案の作成

  • 所有者不明土地への対応:所有者の所在が明らかでない場合でも、客観的な資料がある場合は調査を進められる

これらの新手法により、従来は調査困難とされていた山林でも地籍調査が進む可能性が広がっています。


第7次国土調査事業十箇年計画の現状

令和2年度から令和11年度までの第7次十箇年計画では、地籍調査の進捗率を引き上げることを目標としていますが、中間時点での達成率は目標を大幅に下回っています。

国土交通省は地籍調査の加速化に向けた検討を進めており、非協力的な所有者がいる場合の対応策や、オンラインによる筆界確認手法の導入など、実務面での改善が期待されています。


所有者不明土地管理制度(2023年4月施行)

令和5年4月からは、所有者不明土地管理制度も開始されています。所有者が不明な隣地が原因で筆界未定地となっている場合、この制度を活用して裁判所が選任した管理人を相手方として筆界の確認手続きを進められる可能性があります。



8. 筆界未定地の山林についてよくある質問(FAQ)

Q1. 筆界未定地の山林にも固定資産税はかかりますか?

はい、かかります。 筆界未定地であっても所有権は認められており、固定資産税の課税対象となります。ただし、山林の固定資産税評価額は一般的に低く、小規模な山林であれば免税点(30万円未満)以下で課税されないケースもあります。


Q2. 筆界未定地の山林を相続放棄することはできますか?

相続放棄は可能ですが、注意が必要です。 相続放棄は相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。また、相続放棄は「すべての相続財産を放棄する」ものであり、山林だけを選択的に放棄することはできません。

さらに、相続放棄をしても、相続財産の管理義務が直ちに消滅するわけではない点にも注意が必要です。


Q3. 筆界未定地の山林は建物を建てられますか?

原則として困難です。 筆界未定地では分筆ができず、建築確認申請に支障が生じるケースがあります。また、金融機関からの融資が受けにくくなるため、実質的に建築が難しい状況になります。仮に建物を建てた場合でも、建物の登記ができない(未登記建物となる)可能性があります。


Q4. 筆界未定地の解消にかかる費用は誰が負担しますか?

原則として、筆界の確認を求める側(多くの場合は売却や処分を検討している所有者)が費用を負担します。 筆界特定制度を利用した場合も、申請手数料と測量費用は申請人の負担です。隣地所有者に費用負担を求めることは、現行制度上は難しいのが実情です。


Q5. 隣地の所有者が不明の場合はどうすればいいですか?

隣地の所有者が不明な場合は、以下の方法を検討できます。

  • 筆界特定制度:隣地所有者が不明でも申請可能

  • 不在者財産管理人制度:家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、管理人を相手方として境界確認を行う

  • 所有者不明土地管理制度:裁判所が管理人を選任して土地の管理を行う制度(2023年4月施行)


Q6. 筆界未定地の山林を第三者に無償で譲渡することはできますか?

可能ですが、注意点があります。 筆界未定地であっても所有権の移転は可能であり、贈与契約によって第三者に無償で譲渡できます。ただし、受贈者に対して贈与税がかかる可能性があるほか、筆界未定に伴うリスクを受贈者に十分説明する義務があります。


Q7. 山林の筆界未定地を解消するために、どの専門家に相談すべきですか?

以下の専門家がそれぞれの局面で対応できます。

  • 土地家屋調査士:境界確認、測量、筆界確認書の作成、地図訂正の申請

  • 弁護士:境界確定訴訟、筆界特定制度の申請代理、不在者財産管理人の申立て

  • 司法書士:相続登記、相続土地国庫帰属制度の申請書類作成代行

  • 行政書士:相続土地国庫帰属制度の申請書類作成代行

山林の筆界未定地は問題が複雑になりやすいため、最初に土地家屋調査士に相談し、必要に応じて弁護士や司法書士と連携して対応を進めることをお勧めします。



9. どうしても処分できない山林の最終手段

ここまで解説した方法を試しても、なお処分が困難な筆界未定地の山林が残ることがあります。

筆界未定の解消には数十万円以上の費用がかかり、山林自体の市場価値がそれを下回るケースでは、費用をかけて境界を確定させても採算が合いません。相続土地国庫帰属制度も、崖地や不法投棄などの問題で利用できない場合があります。

このような「どこに相談しても解決できなかった」山林については、一度当社団(一般社団法人日本不動産管財)にご相談ください。


まとめ

筆界未定地の山林は、日本全国で数多く存在する問題です。山林の地籍調査進捗率が46%にとどまる現状では、相続のたびに「筆界未定地だった」と判明するケースは今後も増え続けるでしょう。

しかし、筆界特定制度や相続土地国庫帰属制度など、近年整備された法制度を活用すれば、かつては「どうしようもない」と諦めるしかなかった筆界未定地の山林にも、解決の道が開かれています。

重要なのは、問題を先送りにしないことです。時間が経つほど所有者の高齢化が進み、境界を知る人がいなくなり、相続が重なって権利関係が複雑化します。

まずは本記事で紹介した確認方法で現状を把握し、ご自身の状況に最も適した解決方法を検討してみてください。そして、お一人での判断が難しい場合は、専門家や一般社団法人日本不動産管財にお気軽にご相談ください。

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