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相続土地国庫帰属制度とは?要件・費用・利用できない場合の選択肢

執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
一般社団法人日本不動産管財
2025年12月29日
読了時間: 7分

更新日:10月2日

「遠い親戚から山林を相続したが、使い道がない」

「固定資産税だけ払い続けている“負動産”を手放したい」

「子供たちに、管理できない土地を残したくない」

こうした悩みを解決するために、2023年(令和5年)4月からスタートしたのが「相続土地国庫帰属制度」です。相続または相続人への遺贈で取得した土地を、要件を満たせば国に引き渡せる制度です。

制度を利用できるかは、土地の取得経緯や現況などによって異なります。申請前に要件と必要な費用を確認することが大切です。

この記事では、相続土地国庫帰属制度の仕組み、費用、申請できる条件と不承認になる条件を解説します。

また、制度を利用できない場合の選択肢についてもあわせてご紹介します。



1. 相続土地国庫帰属制度とは?仕組みを解説

相続土地国庫帰属制度とは、相続または相続人への遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たし、負担金を納めることを条件に国庫へ帰属させる制度です。

この制度では、他の相続財産を保有したまま、要件を満たす土地を選んで手放せます。相続財産全体を対象とする相続放棄とは異なる制度です。


制度ができた背景

背景にあるのは「所有者不明土地問題」です。

管理されない荒廃した土地が全国で増加し、周辺環境の悪化や公共事業の阻害要因となっています。これらを防ぐために、所有者が土地を手放せる受け皿として国がこの制度を創設しました。



2. 誰が利用できる?申請できる人の条件

この制度を利用できるのは、相続または相続人への遺贈により土地の所有権や共有持分を取得した人です。

申請できるケース

  • 単独所有の場合

    相続または相続人への遺贈で土地を取得した本人が申請できます。

  • 共有所有の場合

    共有者の中に、相続または相続人への遺贈で持分を得た人が一人でもいれば、売買などで持分を取得した人も含め、共有者全員で共同申請できます。


申請できないケース(対象外)

  • 売買や生前贈与「のみ」で土地を取得した人

  • 法人が単独で所有する土地

ここがポイント売買のみで取得した単独所有の土地は対象外です。ただし、共有者の中に相続または相続人への遺贈で持分を取得した人がいれば、売買で持分を得た共有者も全員で共同申請できます。


3. どんな土地なら引き取ってもらえる?(却下・不承認要件)

国は、どのような土地でも引き取るわけではありません。

国による通常の管理・処分が困難な土地を対象から除くため、法律で却下要件と不承認要件が定められています。

以下のいずれかに該当する場合、申請は却下、または不承認となります。


A. 申請段階で確認される却下要件

次の要件に該当する土地は、申請が却下されます。

  1. 建物がある土地

    (古家、倉庫、廃屋などがある場合は、解体して更地にする必要があります)

  2. 担保権や使用収益権が設定されている土地

    (抵当権、借地権、地役権などがついている土地)

  3. 現に通路として使われている土地、墓地内の土地、境内地など、他人による使用が予定される土地として政令で定めるもの

  4. 土壌汚染対策法の特定有害物質により、基準を超えて汚染されている土地

  5. 境界が明らかでない土地や、所有権の存否・帰属・範囲について争いがある土地

    (境界は、現地で示せ、隣地所有者と認識の相違や争いがないことが必要です。測量成果や境界確定書の提出は一律必須ではありません)


B. 審査で確認される不承認要件

申請後の審査で、次の法定の要件に該当すると判断されると、不承認となります。

  1. 勾配30度以上かつ高さ5m以上の崖があり、

    通常の管理に過分な費用・労力を要する土地

  2. 通常の管理・処分を阻害する工作物・車両・樹木などが地上にある土地

    (あるだけでは不承認にならない)

  3. 除去しなければ通常の管理・処分ができない有体物が地下にある土地

  4. 隣接する土地の所有者などとの争訟によらなければ通常の管理・処分ができない土地

    (通行が現に妨げられているなど、政令で定める場合)

  5. その他、通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる土地として政令で定めるもの

    (土砂の崩壊などの災害を防ぐための措置が必要な土地など)

申請前の準備建物の撤去や境界の確認など、申請前に対応が必要な場合があります。測量は一律に必須ではないため、まず法務局に土地の状況を相談し、必要な準備と費用を確認してから他の処分方法と比較しましょう。


4. 費用はいくらかかる?(審査手数料と負担金)

「国に返すのだから無料だろう」と思われがちですが、この制度には2種類の費用がかかります。

① 審査手数料

土地1筆あたり14,000円の審査手数料がかかります。

※審査に落ちた場合でも返金されません。

② 負担金(10年分の標準的な管理費用に相当する額)

承認された場合、10年分の標準的な管理費用に相当する額を、負担金として一度納付します(10年ごとに納付するものではありません)。

負担金の目安表

地目(現状の種目)

面積の例

負担金の目安

宅地(市街化区域・用途地域外)

面積問わず

20万円

宅地(市街化区域・用途地域内)

200㎡

79万3,000円

田・畑(面積算定の対象区域等)

500㎡

72万3,000円

田・畑(上記以外)

面積問わず

20万円

山林(森林)

3,000㎡

29万9,000円

原野・雑種地

面積問わず

20万円

※表の「宅地」の20万円は市街化区域・用途地域外の場合です。種目は登記地目だけでなく現況等で判断されます。法務省の自動計算シートと法務局への相談で確認してください。

※田・畑は、市街化区域・用途地域内、農用地区域内、土地改良事業等の施行区域内などが面積算定の対象です。森林も面積に応じて算定されます。いずれの計算式も1,000円未満の端数は切り捨てます。



5. 申請から完了までの流れ

申請先は土地の所在地を管轄する法務局・地方法務局の本局です。標準処理期間は8か月ですが、事案によって超える場合があります。

  1. 事前相談(予約制)

    法務局にて、提出書類や要件の確認を行います(任意ですが強く推奨されます)。

  2. 申請書類の作成・提出

    申請書と添付書類を用意し、手数料を納付して申請します。

  3. 書面審査・実地調査

    法務局の担当官が現地を確認し、要件を満たしているか審査します。

  4. 承認通知・負担金の納付

    承認された場合、負担金の通知が届いた日の翌日から30日以内に納付します。

  5. 国庫帰属完了

    負担金を納付した時点で、土地の所有権が国に移転します。



6. メリットとデメリットのまとめ

制度利用を迷っている方のために、メリットとデメリットを整理しました。

メリット

  • 保有・管理負担の軽減:所有権を国へ移せます。ただし、既に生じた債務や、その年度の固定資産税の扱いは別途確認が必要です。

  • 将来の管理負担:国庫帰属後は国が土地を管理します。申請中は所有者による管理が必要です。

  • 次世代への配慮: 子供や孫に不要な不動産を残さずに済みます。


デメリット

  • 準備費用:建物解体や必要な調査・整備を行う場合は、その費用も見込む必要があります。

  • 負担金が発生する:土地区分や面積に応じた負担金に加え、申請時の審査手数料が必要です。

  • 要件の確認が必要:山林や農地であることだけで判断されず、土地の現況等に応じて審査されます。

  • 手間と時間がかかる:書類の準備や実地調査への協力が必要です。審査は標準処理期間8か月を目安に余裕をもって検討します。



7. 国庫帰属制度が利用できない・断られた場合は?

ここまでお読みいただき、「自分の土地は無理かもしれない…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。

  • 「建物があって、解体費用が出せない」

  • 「隣地所有者と境界の認識が合わない」

  • 「山林の傾斜や樹木を理由に、国に断られた」

  • 「負担金や手数料を払う余裕がない」

制度が利用できない場合は、売却や隣地所有者への譲渡、自治体への寄付、引取りの条件を確認しましょう。相手の受入れ可否、費用、移転後に残る義務などを比較して検討します。

判断に迷う場合は、登記事項証明書や固定資産税の課税明細書、土地の現況が分かる資料を整理し、法務局や専門家に確認しましょう。



まとめ:要件と費用を確認して比較する

相続土地国庫帰属制度は、取得経緯と土地の状態が要件に合う場合の選択肢です。山林であることだけで対象外とはならないため、必要な準備・負担金を法務局で確認し、売却や引取りなどの条件と比較しましょう。

「自分の土地はこの制度を使えるの?」

「制度が使えない場合、どのような選択肢がある?」

こうした疑問は、取得経緯、土地の現況、境界の資料を整理すると確認しやすくなります。

当社団では、処分困難な不動産についてお悩みのご相談者様が、まず現状と選択肢を把握できるよう、各種公的資料や不動産情報を基に初期調査を無料で行っております。判断材料を提示し、ご相談者様の意思決定を支援いたします。


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