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山林の共有持分を処分・売却する方法を徹底解説

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 2月9日
  • 読了時間: 21分

〜共有名義の山林でお困りの方へ|相続登記義務化・民法改正対応〜


「相続した山林が共有名義になっていて、処分したくてもどうにもできない」「共有者が何十人もいて、全員の同意を得るのは不可能に近い」——こうしたお悩みを抱える方は年々増加しています。

国土交通省の調査によると、2050年までに新たに最大47万ヘクタールの森林が「所有者不明」になると推計されています。とりわけ山林は、明治期の入会林野の共有登記や、代を重ねるごとに相続人が増加する「ねずみ算式の共有化」により、共有者が数十人から数百人に及ぶケースも珍しくありません。

さらに2024年4月からは相続登記が義務化され、正当な理由なく相続登記を怠ると10万円以下の過料が科される時代となりました。共有名義の山林を放置するリスクは、これまで以上に高まっています。

本記事では、山林の共有持分に関する基礎知識から、2023年施行の改正民法を踏まえた最新の処分・売却方法、共有者不確知森林制度の活用法、そして最終的な解決手段まで、実務に即した情報を網羅的にお伝えします。



【目次】


1. 山林の共有持分とは?基礎知識を押さえる

1-1. 共有持分の意味と法的位置づけ

共有持分とは、一つの不動産を複数人で所有している場合に、各所有者がその不動産に対して持つ所有権の割合のことです。たとえば、兄弟3人で山林を相続した場合、各自が3分の1ずつの共有持分を持つことになります。

民法第249条では、各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用ができると定められています。つまり、持分が3分の1であっても山林全体を使用する権利があるのです。ただし、他の共有者も同様の権利を持っているため、独占的な使用はできません。

ここで重要なのは、共有持分はあくまで「所有権の割合」であり、「土地の物理的な区分」ではないという点です。3分の1の共有持分を持っているからといって、山林の3分の1の区域を自分の土地として使えるわけではありません。


1-2. 山林における共有持分の特殊性

山林の共有持分には、マンションや宅地などの一般的な不動産とは異なる特殊な事情があります。

(1)入会林野としての歴史的背景

日本の山林には、1889年(明治22年)の町村制施行にともない、もともと集落で共同利用していた「入会林野(いりあいりんや)」を住民の共有名義に変更した歴史があります。「入会山(いりあいやま)」とも呼ばれ、集落単位で数十人から数百人の共有名義となっているケースが今でも各地に残っています。

(2)境界の曖昧さ

山林の境界線は尾根や谷に沿って定められることが多く、石や立木が目印になっている場合もあります。境界を決めた当事者が亡くなると詳しい状況がわからなくなり、代を経るごとに境界が曖昧になります。この境界の不確定性が、共有持分の売却をさらに困難にしています。

(3)経済的価値の低さ

国内木材価格の長期的な低迷により、多くの山林は経済的な価値が極めて低い状態にあります。宅地やマンションのように「買いたい」という需要が乏しいため、共有持分のみの売却はさらに難しくなります。


1-3. 共有持分と「単独所有」の違い

項目

単独所有

共有持分

売却

自由に売却可能

全体売却は全員の同意が必要。持分のみなら単独で売却可能

管理

自由に管理方法を決定

保存行為以外は持分過半数以上の同意が必要

変更(伐採等)

自由に実施可能

共有者全員の同意が必要(軽微変更は過半数)

固定資産税

所有者が全額納付

連帯納税義務(代表者に通知)

相続時

相続人間で分割協議

持分がさらに細分化する可能性



2. なぜ山林が共有名義になるのか?5つの典型パターン

2-1. 相続による共有(最も多いケース)

山林が共有名義になる最も多いパターンが、相続による共有です。被相続人が所有していた山林を、複数の相続人が法定相続分に応じて共有する形で相続するケースです。

特に問題になるのは、「誰も山林を引き取りたがらない」場合です。遺産分割協議で山林の帰属先が決まらず、やむを得ず法定相続分での共有登記とするケースが少なくありません。その結果、世代を経るごとに共有者が「ねずみ算式」に増加し、最終的に数十人、数百人規模の共有となることもあります。


2-2. 入会林野の共有登記

前述のとおり、明治期の町村制施行にともない、集落で共同利用していた入会林野を住民の個人共有に切り替えた歴史があります。この際に登記された山林は、現在も数十人から数百人規模の共有名義のまま残っているケースが多くあります。

入会林野の場合、登記上の共有者の多くはすでに亡くなっており、その相続人の追跡自体が困難であることが大きな課題です。


2-3. 原野商法による共同購入

1970年代から1980年代にかけて横行した「原野商法」により、値上がりの見込みがない山林や原野を「将来値上がりする」と偽って複数の購入者に売りつけたケースがあります。この場合、面識のない複数人が共有名義で登記されていることが多く、共有者間の連携が極めて困難です。


2-4. 共同事業としての購入

かつてはキャンプ場や別荘地の開発を目的として、複数人で山林を共同購入するケースもありました。事業が頓挫した後も共有名義のまま放置され、当初の共有者が高齢化・死亡することで、問題がさらに複雑化しています。


2-5. 債権者代位による法定相続分登記

被相続人に債務があった場合、債権者が「債権者代位権」を行使して、法定相続分での相続登記を強制的に行うことがあります。この場合、相続人の知らないうちに山林が共有名義で登記されることになり、しかもすでに差し押さえがかけられているケースも多いため、処分が極めて困難になります。



3. 共有名義の山林を放置するリスク

3-1. 相続登記義務化による過料リスク

2024年4月1日から、相続による不動産取得を知った日から3年以内に相続登記を行うことが法律上の義務となりました(改正不動産登記法)。正当な理由なくこの義務を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

重要:この義務は、2024年4月1日以前に発生した相続にも遡及して適用されます。過去に相続した山林の共有持分についても、2027年3月末までに相続登記を行う必要があります。


3-2. 共有者の増加と権利関係の複雑化

共有名義の山林を放置した場合、共有者の一人が亡くなるたびに、その持分が当該共有者の相続人に引き継がれます。これにより共有者の数がどんどん増え、権利関係が複雑化していきます。

たとえば、当初3人の共有だった山林が、2世代後には20人以上の共有になるということは珍しくありません。共有者が増えれば増えるほど、全員の同意を得ることは困難になり、売却や処分のハードルが急速に上がります。


3-3. 固定資産税の負担トラブル

共有名義の不動産にかかる固定資産税は、共有者全員が連帯して納税する義務を負います。しかし、納税通知書は代表者一人にしか送付されないのが通常です。

代表者が立て替えて支払った税金を他の共有者から回収しようとしても、支払いを拒否されたり、連絡が取れなかったりするトラブルが頻発しています。山林の固定資産税は比較的低額なことが多いですが、長期間にわたって蓄積されると無視できない金額になります。


3-4. 管理責任と災害リスク

山林は適切に管理されないと、土砂崩れや倒木による隣接地への被害、不法投棄の温床となるなど、さまざまなリスクが生じます。共有者は、持分に応じてこれらの管理責任を負っており、万が一第三者に損害を与えた場合には、損害賠償責任を問われる可能性もあります。

特に近年は、豪雨による土砂災害が増加しており、管理が行き届いていない山林からの土砂流出リスクは深刻化しています。


3-5. 所有者不明土地化のリスク

相続登記がされないまま放置された山林は、やがて「所有者不明土地」となります。国土交通省の推計によると、2040年には所有者不明土地が約720万ヘクタールに達する可能性があり、これは北海道本島の面積に匹敵する規模です。

所有者不明土地は、公共事業や民間開発の妨げになるだけでなく、災害時の復旧作業にも支障をきたします。社会的な問題としても深刻化しており、今後さらに規制が強化される可能性があります。



4. 山林の共有持分を処分・売却する7つの方法

4-1. 共有者全員の同意による山林全体の売却

最も理想的な方法は、共有者全員の同意を得て山林全体を売却することです。共有物全体の売却は「変更行為」に該当するため、民法第251条により共有者全員の同意が必要です。

ただし、山林の場合は以下の点が障壁となることが多いです。

  • 共有者が多数で全員の同意取得が困難

  • 共有者の中に所在不明者や死亡者がいる

  • そもそも山林の買い手が見つからない

  • 境界が確定していない


4-2. 自分の共有持分のみを売却する

共有者全員の同意が得られない場合、自分の共有持分のみであれば、他の共有者の同意なく単独で売却することが可能です(民法第206条)。

ただし、山林の共有持分のみの売却には大きな課題があります。マンションや宅地と異なり、山林の共有持分を買いたいという需要はほとんどありません。仮に買い手が見つかったとしても、価格は相場よりも大幅に低くなることを覚悟する必要があります。

また、共有持分を第三者に売却した場合、その第三者が他の共有者に対して共有物分割請求を行う可能性があります。これは他の共有者にとって予期せぬトラブルとなりうるため、事前の相談が望ましいでしょう。


4-3. 他の共有者への持分売却・買取交渉

共有者の中に山林を活用したい方がいる場合や、共有状態を解消したい方がいる場合は、他の共有者に自分の持分を売却する方法が有効です。

共有者間での売買は、第三者への売却よりもスムーズに進むことが多く、価格面でも比較的適正な取引が期待できます。まずは他の共有者に購入の意思があるかどうかを確認してみましょう。


4-4. 共有持分の放棄

共有持分を放棄するという選択肢もあります。民法第255条では、共有者の一人がその持分を放棄したとき、その持分は他の共有者に帰属すると定められています。

持分放棄は単独行為であるため、他の共有者の同意は必要ありません。ただし、以下の注意点があります。

  • 放棄した持分を受け取る他の共有者に贈与税が課税される可能性がある

  • 持分放棄の登記には、持分を取得する共有者の協力(共同申請)が必要

  • 共有者が登記手続きに応じない場合、裁判所への訴訟が必要になることがある

  • 金銭的な対価は一切得られない


4-5. 共有物分割請求

共有者間の協議で話がまとまらない場合の強力な手段が、裁判所に判断を仰ぐ「共有物分割請求訴訟」です。民法第258条に基づき、各共有者はいつでも共有物の分割を請求する権利を持っています。

裁判所は、当事者の主張や事情を考慮し、以下のいずれかの方法で分割を命じます。

分割方法

内容

山林での適用

現物分割

土地を物理的に分割し、それぞれを単独所有にする

山林の場合は境界確定が困難で、分割により価値が著しく減少するケースが多い

価格賠償(代償分割)

一部の共有者が他の共有者に代償金を支払い、単独所有にする

山林の適正価格の算定が困難。取得者に支払能力が必要

換価分割(競売)

共有物を競売にかけ、代金を持分に応じて分配する

山林の競売は買い手がつかないリスクあり。落札価格が極めて低くなる可能性


2023年4月施行の改正民法では、代償分割(価格賠償)が法律上明文化されたほか、所在不明共有者がいる場合の手続きが大幅に改善されました(詳細は第6章で解説)。


4-6. 森林組合への相談・あっせん

地域の森林組合は、山林の売却先のあっせんや管理の相談窓口として機能しています。特に林業的な価値がある山林(良質な立木がある、アクセスが良い等)の場合は、森林組合を通じて買い手が見つかる可能性があります。

まずはお住まいの地域、または山林が所在する地域の森林組合に相談してみることをおすすめします。


4-7. 専門業者への引き取り依頼

上記いずれの方法でも解決が難しい場合、山林の引き取りを専門とする業者に依頼する方法があります。引き取り費用は必要となりますが、共有持分の処分を確実に完了させることができます。

注意:山林の引き取り業者の中には、格安の定額料金を謳いながら、引き取り後の管理を放棄するような悪質な業者も存在します。引き取り後も責任を持って土地の管理を行う、信頼性の高い業者を選ぶことが重要です。



5. 共有者が見つからない場合の対処法

5-1. 共有者不確知森林制度の概要

共有林の所有者の一部が不明で、共有者全員の合意が得られない場合に活用できるのが「共有者不確知森林制度」(森林法)です。

この制度は、一定の裁定手続き等を経て、所在不明の共有者の立木持分を移転したり、土地使用権を設定したりすることで、伐採や造林ができるようにする制度です。林野庁が所管しています。


5-2. 「所有者を確知できない」と認められる条件

以下のすべてを行っても所有者を特定できない場合、または所有者の所在が不明な場合に「確知できない」と認められます。

  1. 登記事項証明書等に記載された住所へのダイレクトメール送付

  2. 市町村への聞き取り調査

  3. 森林組合等関係者への聞き取り調査

なお、当該共有者が死亡している場合は、その相続人(配偶者または子に限る)についても同様の調査が必要です。


5-3. 手続きの流れ

ステップ1:公告の申請(市町村に提出)

公告申請書に、土地の登記事項証明書、所在確認の結果を記した書面、確知共有者全員の同意書等を添付して市町村に提出します。

ステップ2:裁定の申請(都道府県に提出)

裁定申請書に、公告申請と同様の資料に加え、立木調査の野帳を添付して都道府県に提出します。

ステップ3:補償金の供託

都道府県知事による裁定の公告後、不確知共有者の立木持分に相当する補償金を供託します。


5-4. 森林経営管理制度(2019年施行)

2019年に施行された森林経営管理法に基づく「森林経営管理制度」も、共有者不明の森林問題に対応する制度です。この制度では、経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり、森林所有者と林業経営者をつなぐ仕組みが設けられています。

共有者の一部が不明な森林については、確知できた共有者の同意を得た上で、6か月間の公告を経て、異議の申し出がなければ経営管理権を設定することが可能です。


5-5. 2023年改正民法による所在不明共有者への対応

2023年4月施行の改正民法では、所在不明の共有者がいる場合の新しい手続きが創設されました(詳細は次章で解説)。裁判所の許可を得ることで、所在不明共有者の持分を取得したり、第三者に譲渡したりすることが可能になっています。



6. 2023年改正民法で変わった共有物分割のルール

6-1. 改正の背景と目的

2023年4月1日に施行された改正民法は、増加する所有者不明土地問題への対応を主な目的としています。共有不動産に関するルールが大幅に見直され、共有関係の解消がより容易になりました。


6-2. 主な改正ポイント

(1)軽微変更の管理行為化

従来、共有物の「変更行為」はすべて共有者全員の同意が必要でした。改正後は、共有物の形状や効用の著しい変更を伴わない「軽微変更」については、持分の過半数で決定できるようになりました(民法第251条第1項)。山林における間伐や枝打ちなどがこれに該当する可能性があります。

(2)所在不明共有者がいる場合の管理・変更

裁判所の決定を得ることで、所在不明の共有者を除いた残りの共有者の持分の過半数で管理行為を決定したり、残りの共有者全員の同意で変更行為を行ったりすることが可能になりました。

(3)所在不明共有者の持分取得・譲渡

相続開始から10年が経過した場合、裁判所の許可を得ることで、所在不明の共有者の持分を他の共有者が取得したり、第三者に譲渡したりすることが可能になりました。この際、所在不明者の持分価格に相当する金銭を供託する必要があります。

(4)遺産分割の10年期限

相続開始から10年が経過した後は、特別受益や寄与分の主張が制限され、法定相続分を基準とした分割がなされます。これにより、長期間放置された共有不動産の分割が進みやすくなりました。

(5)遺産共有と通常共有の一括解決

従来は、遺産共有(相続人間の共有)と通常共有(相続人と第三者の共有)が併存する場合、それぞれ別の手続き(遺産分割と共有物分割)で解決する必要がありました。改正後は、相続開始から10年経過すれば、共有物分割訴訟で一括して解決することが可能になっています。


6-3. 改正民法を活用した山林共有持分の解決戦略

これらの改正により、特に以下のようなケースで解決の道が開けました。

  • 共有者の一部が所在不明で、長年にわたり売却も管理もできなかった山林

  • 相続が何世代にもわたって行われ、遺産分割が未了のまま放置された山林

  • 入会林野で登記上の共有者が大量にいるが、多くが所在不明の山林



7. 相続土地国庫帰属制度は共有山林に使えるか?

7-1. 制度の概要

2023年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」は、相続等により取得した不要な土地を、一定の要件を満たした上で国に引き渡すことができる制度です。


7-2. 共有山林での申請条件

共有名義の土地についても申請は可能ですが、以下の条件があります。

  • 共有者全員で申請する必要がある

  • 共有者の中に、相続等により持分を取得した者が含まれていること

つまり、共有者の一部だけで申請することはできず、全員の協力が必要です。共有者が多数いる山林では、この条件自体がハードルとなります。


7-3. 山林特有の却下・不承認要件

相続土地国庫帰属制度には、土地の引き取りを拒否できる「却下要件」と「不承認要件」があります。山林に関連するものとして、以下が特に重要です。

却下要件(申請自体が認められない)

不承認要件(審査の結果、不承認)

担保権や使用収益権が設定されている土地

崖(勾配30度以上、高さ5m以上)がある土地

通路等、他人による使用が予定されている土地

土地の管理・処分を阻害する工作物等がある土地

境界が明らかでない土地

隣接地の所有者等と争訟なしには管理・処分できない土地

土壌汚染がある土地

通常の管理・処分に過分の費用・労力がかかる土地


山林は境界が不明確なケースが多く、また急傾斜地に該当する場合もあるため、これらの要件に抵触して利用できないケースが少なくありません。


7-4. 負担金の目安

国庫帰属が承認された場合、10年分の管理費用に相当する「負担金」を納付する必要があります。山林(市街化区域外)の場合、面積に応じた負担金額は以下のとおりです。

面積区分

負担金額

3,000㎡以下

約27万円

3,000㎡超〜5,000㎡以下

約30万〜50万円(面積に応じて算定)

5,000㎡超〜10,000㎡以下

約50万〜80万円(面積に応じて算定)

10,000㎡超

約80万円〜(面積に応じて算定)


審査手数料は土地1筆あたり14,000円です。これに加えて、境界の確定や必要書類の準備にも費用がかかります。


7-5. 国庫帰属制度が使えない場合の代替手段

国庫帰属制度の要件を満たさない共有山林については、前章で紹介した民法に基づく共有物分割請求や、専門業者への引き取り依頼が現実的な選択肢となります。

当法人(一般社団法人日本不動産管財)では、国庫帰属制度の対象外となった山林を含め、処分が困難な共有名義の山林の無料調査をおこなっております。まずはお気軽にご相談ください。



8. 山林の共有持分に関する税金の基礎知識

8-1. 共有持分を売却した場合の税金

山林の共有持分を売却した場合、以下の税金がかかる可能性があります。

(1)譲渡所得税

山林の「土地」を譲渡した場合は、譲渡所得として所得税・住民税が課税されます。所有期間が5年超の長期譲渡所得の場合、税率は所得税15.315%、住民税5%(合計20.315%)です。

(2)山林所得

山林の「立木」を伐採して譲渡する場合や、立木のまま譲渡する場合は「山林所得」として5分5乗方式による課税がなされます。ただし、取得から5年以内の譲渡は事業所得または雑所得として扱われます。

(3)復興特別所得税

所得税額に対して2.1%の復興特別所得税が加算されます(2037年末まで)。


8-2. 共有持分を放棄した場合の税金

共有持分を放棄した場合、放棄した本人には課税されませんが、持分を取得する他の共有者に対して贈与税が課税される可能性があります。特に山林の評価額が110万円(贈与税の基礎控除額)を超える場合は注意が必要です。


8-3. 相続した共有持分にかかる税金

共有持分を相続した場合、被相続人の遺産全体の評価額に応じて相続税がかかります。山林の相続税評価は、純山林・中間山林・市街地山林の3種類に分かれ、それぞれ異なる評価方法が適用されます。



9. 共有名義の山林処分で失敗しないための注意点

9-1. 安易な共有での相続を避ける

遺産分割で山林を「とりあえず共有」にすることは、将来のトラブルの元です。共有者に相続が発生するたびに共有者が増え、処分がどんどん困難になります。相続時には、できるだけ単独名義とするか、早期の処分を検討すべきです。


9-2. 悪質な引き取り業者に注意

山林の処分に困っている方をターゲットにした悪質な業者も存在します。以下のような特徴がある業者には注意が必要です。

  • 「一律○万円で引き取ります」など、不自然に安い定額料金を提示する

  • 引き取り後の土地管理計画について明確な説明がない

  • 会社の所在地や実態が不明瞭

  • 契約を急かす、即決を求める

信頼できる業者は、引き取り後も責任を持って土地の管理を継続し、管理計画や費用について透明性のある説明を行います。


9-3. 森林の土地の所有者届出を忘れずに

森林法に基づき、相続や売買により森林の土地の所有者となった場合は、市町村への届出が必要です(森林の土地の所有者届出制度)。届出は所有者となった日から90日以内に行う必要があります。共有持分の取得・譲渡の際にも忘れずに届出を行いましょう。


9-4. 専門家への早期相談が重要

山林の共有持分問題は、時間が経つほど複雑化します。共有者の高齢化や死亡により連絡が取れなくなったり、相続が重なって共有者が増えたりする前に、専門家に相談することが重要です。

相談先としては、山林の売買に詳しい不動産業者、司法書士、弁護士、税理士などが考えられます。複数の専門家が連携して対応できる体制を持つ業者に相談するのが効率的です。



10. よくある質問(FAQ)

Q1. 共有者が100人以上いる山林でも処分できますか?

処分は可能ですが、全員の同意による売却は現実的に困難です。自分の持分のみの売却、共有物分割請求、専門業者への引き取り依頼などの方法が現実的です。2023年の民法改正により、所在不明共有者がいる場合の手続きも改善されていますので、あきらめる前に専門家にご相談ください。

Q2. 共有持分だけを売却した場合、いくらくらいになりますか?

山林の共有持分のみの売却は、需要が極めて限られるため、単独所有の山林を売却する場合と比べて大幅に安くなるのが一般的です。場合によっては値段がつかない(買い手がいない)こともあります。具体的な金額は、山林の所在地、面積、アクセス、立木の状態などによって大きく異なるため、専門業者に査定を依頼することをおすすめします。

Q3. 相続放棄をすれば山林の共有持分から逃れられますか?

相続放棄をすれば、山林の共有持分を相続せずに済みます。ただし、相続放棄は相続財産「すべて」を放棄する手続きであり、山林だけを選んで放棄することはできません。預貯金や他の不動産など、プラスの財産も含めてすべてを放棄することになります。また、相続放棄は相続を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

なお、民法改正(2023年4月施行)により、相続放棄をした場合でも、次の相続人が管理できるようになるまでは、山林の管理義務を負う場合があることに注意が必要です。

Q4. 固定資産税の通知が来ていませんが、共有持分を持っていないということですか?

いいえ。固定資産税の納税通知書は、共有者の中の代表者一人にしか送付されません。通知が届いていなくても、共有持分を持っている場合はあります。登記事項証明書(登記簿謄本)で確認することをおすすめします。

Q5. 山林が遠方にあって現地を見たことがありません。それでも処分できますか?

現地を見たことがなくても処分は可能です。ただし、処分にあたっては登記事項証明書、固定資産税の課税明細書、森林簿などの書類が必要になる場合がございます。専門業者に依頼すれば、現地調査を含めて対応してもらえるケースがほとんどです。

Q6. 共有者の中に行方不明者がいます。どうすればいいですか?

2023年改正民法により、所在不明の共有者がいる場合でも、裁判所の決定を得ることで、以下の対応が可能になりました。

  • 所在不明者を除いた共有者の過半数で管理行為を決定する

  • 所在不明者を除いた共有者全員の同意で変更行為を行う

  • 所在不明者の持分を他の共有者が取得する、または第三者に譲渡する

また、山林の場合は「共有者不確知森林制度」(森林法)や「森林経営管理制度」を活用できる場合もあります。具体的な手続きについては、弁護士や司法書士にご相談ください。


まとめ|共有名義の山林問題は早期の対応が鍵

共有名義の山林は、放置すればするほど共有者が増え、権利関係が複雑化し、処分が困難になっていきます。2024年の相続登記義務化により、登記を放置するリスクも高まっています。

一方で、2023年の民法改正により、所在不明共有者への対応手段が拡充されるなど、共有問題を解決するための法制度は着実に整備されつつあります。

本記事で紹介した7つの処分方法を中心に、ご自身の状況に最も適した解決策を見つけていただければ幸いです。


※本記事の内容は執筆時点の法令等に基づいています。最新の法令等については、関係省庁のウェブサイト等でご確認ください。


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