山林の共有持分を処分・売却する方法を徹底解説

更新日:10月3日
〜共有名義の山林でお困りの方へ|相続登記義務化・民法改正対応〜
「相続した山林が共有名義になっていて、処分したくてもどうにもできない」「共有者が何十人もいて、全員の同意を得るのは不可能に近い」——こうしたお悩みを抱えていませんか。
山林全体を売却するには、原則として共有者全員の同意が必要です。一方、自分の持分だけであれば、原則として他の共有者の同意なく譲渡できます。まず登記事項証明書で名義と持分を確かめ、亡くなった名義人がいれば相続関係を確認しましょう。入会林野として使われてきた山林や、遺産分割が済んでいない山林は、通常の共有と扱いが異なる場合があります。
また、2024年4月からは相続登記が義務化され、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となることがあります。
本記事では、山林の共有持分の基礎知識、改正民法を踏まえた処分・売却の方法、共有者不確知森林制度などの関連制度、税金と注意点を解説します。
【目次】
10. よくある質問(FAQ)
1. 山林の共有持分とは?基礎知識を押さえる
1-1. 共有持分の意味と法的位置づけ
共有持分とは、一つの不動産を複数人で所有している場合に、各所有者がその不動産に対して持つ所有権の割合のことです。たとえば、相続人が子3人だけで、遺言などで別の定めがない場合に、法定相続分どおりに共有すると、各自の持分は3分の1です。
民法第249条では、各共有者は共有物の全部について、その持分に応じた使用ができると定められています。つまり、持分が3分の1であっても山林全体を使用する権利があるのです。ただし、他の共有者も同じ権利を持つため、別段の合意がないまま自分の持分を超えて使用した場合は、その対価を他の共有者に償還する義務を負います(民法249条2項)。
ここで重要なのは、共有持分はあくまで「所有権の割合」であり、「土地の物理的な区分」ではないという点です。3分の1の共有持分を持っているからといって、山林の3分の1の区域を自分の土地として使えるわけではありません。

1-2. 山林における共有持分の特殊性
山林の共有持分には、マンションや宅地などの一般的な不動産とは異なる特殊な事情があります。
(1)入会林野の扱い
集落で共同利用されてきた「入会林野(いりあいりんや)」には、登記上は多数の住民の共有名義になっているものがあります。入会権は各地方の慣習に従うため(民法263条・294条)、登記上の共有者であっても、通常の共有のように各自が自由に持分を処分できるとは限りません。
(2)境界の曖昧さ
山林の境界線は尾根や谷に沿って定められることが多く、石や立木が目印になっている場合もあります。境界を決めた当事者が亡くなると詳しい状況がわからなくなり、代を経るごとに境界が曖昧になります。この境界の不確定性が、共有持分の売却をさらに困難にしています。
(3)経済的価値の低さ
木材価格や搬出の条件によっては、山林の経済的な価値が低い場合があります。持分だけでは土地全体を自由に使えないため、共有持分のみの売却はさらに難しくなることがあります。
1-3. 共有持分と「単独所有」の違い
項目 | 単独所有 | 共有持分 |
売却 | 自由に売却可能 | 全体売却は全員の同意が必要。持分のみなら単独で売却可能 |
管理 | 自由に管理方法を決定 | 保存行為は各共有者が単独で可能。管理は持分の価格の過半数で決定 |
変更(形状・効用の著しい変更) | 森林法などの規制の範囲内で所有者が決定 | 原則として共有者全員の同意(著しい変更を伴わないものは持分の価格の過半数) |
固定資産税 | 所有者が全額納付 | 連帯納税義務(代表者に通知) |
相続時 | 相続人間で分割協議 | 持分がさらに細分化する可能性 |
2. なぜ山林が共有名義になるのか?5つの典型パターン
2-1. 相続による共有
代表的なパターンが、相続による共有です。被相続人が所有していた山林を、複数の相続人が法定相続分に応じて共有する形で相続するケースです。
特に問題になるのは、「誰も山林を引き取りたがらない」場合です。遺産分割協議で山林の帰属先が決まらず、やむを得ず法定相続分での共有登記とする場合があります。その結果、世代を経るごとに共有者が「ねずみ算式」に増加し、最終的に数十人、数百人規模の共有となることもあります。
2-2. 入会林野の共有登記
集落で共同利用されてきた入会林野が、多数の住民の共有名義で登記されている場合があります。入会権が存続している土地は各地方の慣習に従って扱われるため、登記上の共有者が自分の持分を自由に売却・放棄できるとは限りません。まず入会権の有無や集落の取り決めを確認しましょう。
登記上の共有者が亡くなっている場合は、相続人の調査も必要になります。
2-3. 原野商法による共同購入
かつて問題となった「原野商法」では、値上がりの見込みがない山林や原野を「将来値上がりする」と偽って売りつけた例があります。面識のない複数人の共有名義で登記されている場合は、共有者間の連絡が難しくなります。
2-4. 共同事業としての購入
かつてはキャンプ場や別荘地の開発を目的として、複数人で山林を共同購入するケースもありました。事業が頓挫した後も共有名義のまま放置され、当初の共有者が高齢化・死亡することで、問題がさらに複雑化しています。
2-5. 債権者代位による法定相続分登記
被相続人に債務があった場合、債権者が「債権者代位権」を行使して、法定相続分での相続登記を強制的に行うことがあります。この場合、相続人の知らないうちに山林が共有名義で登記されることになります。差押えがされている場合もあり、処分が難しくなります。
3. 共有名義の山林を放置するリスク
3-1. 相続登記義務化による過料リスク
2024年4月1日から、相続による不動産取得を知った日から3年以内に相続登記を行うことが法律上の義務となりました(改正不動産登記法)。正当な理由なくこの義務を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
重要:この義務は、2024年4月1日より前に発生した相続にも適用されます。その場合の期限は、2027年3月31日と、相続による取得を知った日から3年のいずれか遅い日です。
3-2. 共有者の増加と権利関係の複雑化
共有名義の山林を放置した場合、共有者の一人が亡くなるたびに、その持分が当該共有者の相続人に引き継がれます。これにより共有者の数がどんどん増え、権利関係が複雑化していきます。
たとえば3人の共有でも、それぞれに複数の相続人がいれば、世代を重ねるごとに共有者は増えていきます。共有者が増えれば増えるほど、全員の同意を得ることは困難になり、売却や処分のハードルが急速に上がります。
3-3. 固定資産税の負担トラブル
共有名義の不動産にかかる固定資産税は、共有者全員が連帯して納税する義務を負います。しかし、納税通知書は代表者一人にしか送付されないのが通常です。
代表者が立て替えて支払った税金を他の共有者から回収しようとしても、支払いを拒否されたり、連絡が取れなかったりしてトラブルになることがあります。山林の固定資産税は比較的低額なことが多いですが、長期間にわたって蓄積されると無視できない金額になります。
3-4. 管理責任と災害リスク
山林は適切に管理されないと、土砂崩れや倒木による隣接地への被害、不法投棄の温床となるなど、さまざまなリスクが生じます。共有者はこれらの管理に関わる責任を負い、第三者に損害を与えた場合には、損害賠償責任を問われる可能性もあります。
豪雨の際には、管理が行き届いていない山林から土砂が流出するおそれもあります。
3-5. 所有者不明土地化のリスク
相続登記がされないまま放置された山林は、登記簿から所有者がすぐに分からない「所有者不明土地」になるおそれがあります。
所有者不明土地は、公共事業や民間開発の妨げになるだけでなく、災害時の復旧作業にも支障をきたします。こうした問題への対策として、相続登記の義務化などが進められています。
4. 山林の共有持分を処分・売却する7つの方法
4-1. 共有者全員の同意による山林全体の売却
共有者全員の同意を得られれば、山林全体を売却できます。山林全体の売却は、各共有者がそれぞれの持分を譲渡することになるため、共有者全員の同意が必要です。
ただし、山林の場合は以下の点が障壁となることが多いです。
共有者が多数で全員の同意取得が困難
共有者の中に所在不明者や死亡者がいる
そもそも山林の買い手が見つからない
境界が確定していない
4-2. 自分の共有持分のみを売却する
共有者全員の同意が得られない場合、自分の共有持分のみであれば、他の共有者の同意なく単独で売却することが可能です(民法第206条)。
ただし、持分を単独で譲渡できることと、買い手が見つかることは別の問題です。持分だけでは土地全体を自由に使えないため買い手が限られ、価格も低くなる場合があります。
また、共有持分を第三者に売却した場合、その第三者が他の共有者に対して共有物分割請求を行う可能性があります。これは他の共有者にとって予期せぬトラブルとなりうるため、事前の相談が望ましいでしょう。
4-3. 他の共有者への持分売却・買取交渉
共有者の中に山林を活用したい方がいる場合や、共有状態を解消したい方がいる場合は、他の共有者に自分の持分を売却する方法が有効です。
共有者は土地の状況を知っている場合もあり、第三者への売却より話を進めやすいことがあります。価格や費用負担は共有者間で話し合って決めます。まずは他の共有者に購入の意思があるかどうかを確認してみましょう。
4-4. 共有持分の放棄
共有持分を放棄するという選択肢もあります。民法第255条では、共有者の一人がその持分を放棄したとき、その持分は他の共有者に帰属すると定められています。
持分放棄は単独行為であるため、他の共有者の同意は必要ありません。ただし、以下の注意点があります。
放棄した持分を受け取る他の共有者に贈与税が課税される可能性がある
持分放棄の登記には、持分を取得する共有者の協力(共同申請)が必要
共有者が登記手続きに応じない場合、裁判所への訴訟が必要になることがある
金銭的な対価は一切得られない
4-5. 共有物分割請求
各共有者は、原則としていつでも共有物の分割を請求できます(民法256条。分割禁止の特約がある場合などを除く)。協議が調わない場合は、裁判所に分割を請求できます(民法258条)。遺産分割が済んでいない相続財産の共有は、原則として遺産分割の手続きによります。
裁判所は、当事者の主張や事情を考慮し、以下のいずれかの方法で分割を命じます。
分割方法 | 内容 | 山林での適用 |
現物分割 | 土地を物理的に分割し、それぞれを単独所有にする | 境界や区画の確認が必要。分割で価値が大きく下がる場合がある |
価格賠償(代償分割) | 一部の共有者が他の共有者に代償金を支払い、単独所有にする | 山林の適正価格の算定が困難。取得者に支払能力が必要 |
換価分割(競売) | 現物分割や賠償分割ができない場合、または分割で価格が著しく減少するおそれがある場合に、競売して代金を持分に応じて分配する | 山林の競売は買い手がつかないリスクあり。落札価格が極めて低くなる可能性 |
2023年4月施行の改正民法では、代償分割(価格賠償)が法律上明文化されたほか、所在不明共有者がいる場合の手続きが設けられました(詳細は第6章で解説)。
4-6. 森林組合への相談・あっせん
森林組合によっては、山林の売却先のあっせんや管理の相談に応じています。対応の範囲は組合ごとに異なります。特に林業的な価値がある山林(良質な立木がある、アクセスが良い等)の場合は、森林組合を通じて買い手が見つかる可能性があります。
まずは山林が所在する地域の森林組合に、対応の範囲を確認してみましょう。
4-7. 専門業者への引き取り依頼
上記の方法で解決が難しい場合、山林の引き取りを行う事業者に依頼する方法があります。共有持分を引き取りの対象とするか、費用総額、登記、引き取り後の管理の扱いは、依頼先ごとに確認が必要です。
注意:費用の安さや定額かどうかだけでなく、追加費用が生じる条件、所有権移転登記の時期、引き取り後の管理の方法を契約前に確認しましょう。
5. 共有者が見つからない場合の対処法
5-1. 共有者不確知森林制度の概要
地域森林計画の対象となっている民有林で、立木が共有に属し、過失なく共有者の一部を確知できない場合に活用できるのが「共有者不確知森林制度」(森林法)です。
この制度は、裁定の手続きを経て、所在不明の共有者の立木持分を移転し、土地使用権を設定することで、伐採や造林ができるようにする制度です。土地の所有権全体を処分する制度ではありません。林野庁が所管しています。
5-2. 「所有者を確知できない」と認められる条件
法令で定める方法で探索しても、共有者の一部を特定できない、または所在が分からない場合が対象です。探索の例は次のとおりです。
登記事項証明書等に記載された住所へのダイレクトメール送付
市町村への聞き取り調査
森林組合等関係者への聞き取り調査
なお、当該共有者が死亡している場合は、その相続人(配偶者または子に限る)についても同様の調査が必要です。
5-3. 手続きの流れ
ステップ1:公告の申請(市町村に提出)
公告申請書に、土地の登記事項証明書、探索の結果を記した書面、確知共有者全員の同意書などを添付して市町村に提出します。必要書類は市町村に確認しましょう。
ステップ2:裁定の申請(都道府県に提出)
市町村の公告期間内に異議の申出がなければ、裁定申請書に、公告申請と同様の資料に加え、立木調査の野帳を添付して都道府県に提出します。
ステップ3:補償金の供託
裁定では、不確知共有者の立木持分の移転、土地使用権の設定、補償金の額などが定められます。裁定の公告後、裁定で定められた期限(伐採開始前)までに、立木持分と土地使用の補償金を供託します。
5-4. 森林経営管理制度(2019年施行)
2019年に施行された森林経営管理法に基づく「森林経営管理制度」も、共有者不明の森林問題に対応する制度です。この制度では、経営管理が行われていない森林について、市町村が仲介役となり、森林所有者と林業経営者をつなぐ仕組みが設けられています。
共有者の一部が不明な森林では、市町村が探索を行い、確知できた共有者の同意を得たうえで公告します。公告の日から2か月以内に異議の申出がなければ、不明な共有者も同意したものとみなされ、市町村が経営管理権を設定できます(2026年4月1日施行の現行法)。経営管理権は森林の経営管理を委ねるもので、所有権を処分するものではありません。
5-5. 2023年改正民法による所在不明共有者への対応
2023年4月施行の改正民法では、所在不明の共有者がいる場合の新しい手続きが創設されました(詳細は次章で解説)。裁判所の裁判により、所在不明共有者の持分をほかの共有者が取得したり、ほかの共有者全員が特定の第三者に持分を譲渡する場合に、所在不明共有者の持分もあわせて譲渡したりできるようになりました(民法262条の2・262条の3)。
6. 2023年改正民法で変わった共有物分割のルール
6-1. 改正の背景と目的
2023年4月1日に施行された改正民法は、増加する所有者不明土地問題への対応を主な目的としています。共有不動産に関するルールが見直され、共有関係を解消するための手続きが整備されました。
6-2. 主な改正ポイント
(1)軽微変更の管理行為化
従来、共有物の「変更行為」はすべて共有者全員の同意が必要でした。改正後は、共有物の形状や効用の著しい変更を伴わない「軽微変更」については、持分の価格の過半数で決定できるようになりました(民法251条1項・252条1項)。山林における間伐や枝打ちなどがこれに該当する可能性があります。
(2)所在不明共有者がいる場合の管理・変更
裁判所の決定を得ることで、所在不明の共有者を除いた残りの共有者の持分の過半数で管理行為を決定したり、残りの共有者全員の同意で変更行為を行ったりすることが可能になりました。
(3)所在不明共有者の持分取得・譲渡
裁判所の裁判により、所在不明の共有者の持分をほかの共有者が取得したり(民法262条の2)、所在不明者以外の共有者全員が特定の第三者に持分全部を譲渡することを条件に、所在不明者の持分を譲渡する権限を得たり(民法262条の3)できます。裁判所が定める額の金銭の供託が必要です。所在不明者の持分が遺産分割前の相続財産に属する場合に限り、相続開始から10年を経過していることが必要です。
(4)相続開始から10年後の遺産分割
相続開始から10年を経過した後の遺産分割は、原則として特別受益や寄与分を考慮せず、法定相続分(または指定相続分)で行います(民法904条の3)。10年を過ぎても遺産分割自体はでき、10年以内に家庭裁判所に遺産分割を請求した場合などの例外があります。相続人全員が合意すれば、具体的相続分で分割することもできます。2023年4月1日より前の相続は、10年経過時と2028年3月31日のいずれか遅い時までの猶予があります。
(5)遺産共有と通常共有の一括解決
従来は、遺産共有(相続人間の共有)と通常共有(相続人と第三者の共有)が併存する場合、それぞれ別の手続き(遺産分割と共有物分割)で解決する必要がありました。改正後は、共有物の持分の一部が相続財産に属する場合、相続開始から10年を経過すれば、その持分も含めて共有物分割訴訟で一括して解決できます(民法258条の2)。ただし、その持分について遺産分割の請求があり、相続人が通知を受けた日から2か月以内に異議を申し出たときは除かれます。共有物の全部が遺産分割前の相続財産である場合は、原則どおり遺産分割の手続きによります。
6-3. 改正民法を活用した山林共有持分の解決戦略
これらの改正は、次のような山林で活用を検討できます。
共有者の一部が所在不明で、長年にわたり売却も管理もできなかった山林
相続が何世代にもわたって行われ、遺産分割が未了のまま放置された山林
登記上の共有者が多数で、所在不明の人がいる山林(入会権が存続する場合は慣習による扱いを確認)
7. 相続土地国庫帰属制度は共有山林に使えるか?
7-1. 制度の概要
2023年4月27日に施行された「相続土地国庫帰属制度」は、相続または相続人への遺贈により取得した土地を、一定の要件を満たした上で国に引き渡すことができる制度です。
7-2. 共有山林での申請条件
共有名義の土地についても申請は可能ですが、以下の条件があります。
共有者全員で申請する必要がある
共有者のうち1人でも相続等(相続または相続人への遺贈)で持分を取得していれば、売買等で取得した共有者も含めて全員で申請できる
つまり、共有者の一部だけで申請することはできず、全員の協力が必要です。共有者が多数いる山林では、この条件自体がハードルとなります。
7-3. 山林で確認したい却下・不承認要件
相続土地国庫帰属制度には、申請が却下される要件と、審査で不承認となる要件があります。建物がある土地は却下の対象で、地下に通常の管理・処分を阻害する埋設物がある土地なども不承認の対象です。山林で確認したい主な要件を下表に整理します。左右の列は別の要件で、同じ行同士が対応するものではありません。
却下要件(申請自体が認められない) | 不承認要件(審査の結果、不承認) |
担保権や使用収益権が設定されている土地 | 崖(勾配30度以上かつ高さ5m以上)があり、通常の管理に過分な費用・労力を要する土地 |
現に通路として使われている土地など、他人による使用が予定される土地 | 通常の管理・処分を阻害する工作物・車両・樹木などが地上にある土地 |
境界が明らかでない土地、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地 | 隣接地の所有者等との争訟によらなければ通常の管理・処分ができない土地(政令で定めるもの) |
特定有害物質により汚染されている土地 | 通常の管理・処分に過分の費用・労力がかかる土地 |
山林では、境界を現地で示せるか、崖や地上の物が通常の管理を妨げないかなどが確認されます。測量や境界確定書の作成は必須ではありませんが、境界を現地で特定でき、隣接地の所有者と争いがないことが必要です。
7-4. 負担金の目安
国庫帰属が承認された場合、10年分の管理費用に相当する「負担金」を納付する必要があります。現況が森林の土地は、市街化区域の内外にかかわらず、面積に応じた計算式で算定されます。算定例は次のとおりです。
面積(森林の場合) | 負担金額 |
3,000㎡ | 299,000円 |
5,000㎡ | 323,000円 |
8,000㎡ | 351,000円 |
10,000㎡ | 367,000円 |
審査手数料は土地1筆あたり14,000円です。土地の状態によっては、境界の確認や書類の準備に費用がかかる場合があります。
7-5. 国庫帰属制度が使えない場合の代替手段
国庫帰属制度の要件を満たさない共有山林は、持分の売却・放棄、共有物分割請求、引き取りの依頼などの条件を比較検討しましょう。
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8. 山林の共有持分に関する税金の基礎知識
8-1. 共有持分を売却した場合の税金
山林の共有持分を売却した場合、以下の税金がかかる可能性があります。
(1)譲渡所得税
山林の「土地」を譲渡した場合は、譲渡所得として所得税・住民税が課税されます。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える長期譲渡所得の場合、譲渡価額から取得費や譲渡費用などを差し引いた課税譲渡所得金額に対し、所得税15.315%、住民税5%(合計20.315%)がかかります。
(2)山林所得
山林の「立木」を伐採して譲渡する場合や、立木のまま譲渡する場合は「山林所得」として5分5乗方式による課税がなされます。ただし、取得から5年以内の譲渡は事業所得または雑所得として扱われます。
(3)復興特別所得税
(1)の所得税15.315%は、復興特別所得税(所得税額の2.1%、2037年分まで)を含んだ税率です。
8-2. 共有持分を放棄した場合の税金
共有持分を放棄した場合、持分を取得した他の共有者に贈与税が課税される場合があります。贈与税の基礎控除(暦年課税で受贈者1人あたり年110万円)は、その年に受けた贈与の合計額から差し引きます。取得する共有者が法人の場合など、放棄した本人を含めて課税関係が変わることもあるため、税務署や税理士に確認しましょう。
8-3. 相続した共有持分にかかる税金
共有持分を相続した場合、遺産全体の評価額が基礎控除額を超えるときなどに相続税がかかります。山林の相続税評価は、純山林・中間山林・市街地山林の3種類に分かれ、それぞれ異なる評価方法が適用されます。
9. 共有名義の山林処分で失敗しないための注意点
9-1. 安易な共有での相続を避ける
遺産分割で山林を「とりあえず共有」にすることは、将来のトラブルの元です。共有者に相続が発生するたびに共有者が増え、処分がどんどん困難になります。相続時には、できるだけ単独名義とするか、早期の処分を検討すべきです。
9-2. 悪質な引き取り業者に注意
山林の処分に困っている方をターゲットにした悪質な業者も存在します。以下のような特徴がある業者には注意が必要です。
費用の総額や追加費用が生じる条件の説明がない
引き取り後の土地管理計画について明確な説明がない
会社の所在地や実態が不明瞭
契約を急かす、即決を求める
信頼できる業者は、引き取り後も責任を持って土地の管理を継続し、管理計画や費用について透明性のある説明を行います。
9-3. 森林の土地の所有者届出を忘れずに
森林法に基づき、地域森林計画の対象となっている民有林の土地を相続や売買などで新たに取得した場合は、所有者となった日から90日以内に市町村長へ届け出る必要があります(国土利用計画法の届出をした場合を除く)。共有持分を取得した場合も、取得した人が届け出ます。
9-4. 専門家への早期相談が重要
山林の共有持分問題は、時間が経つほど複雑化します。共有者の高齢化や死亡により連絡が取れなくなったり、相続が重なって共有者が増えたりする前に、専門家に相談することが重要です。
相談先としては、山林の売買に詳しい不動産業者、司法書士、弁護士、税理士などが考えられます。複数の専門家が連携して対応できる体制を持つ業者に相談するのが効率的です。
10. よくある質問(FAQ)
Q1. 共有者が100人以上いる山林でも処分できますか?
共有者が多い山林でも、自分の持分だけの売却や放棄は単独で検討できます。山林全体の処分には全員の同意が必要なため、所在不明の共有者がいる場合は、民法の所在等不明共有者の持分取得・譲渡の手続きや、共有物分割請求を検討します。入会林野として使われてきた山林は、慣習による扱いも確認が必要です。
Q2. 共有持分だけを売却した場合、いくらくらいになりますか?
山林の共有持分のみの売却は、買い手が限られるため、単独所有の山林を売却する場合より低くなる場合があります。場合によっては値段がつかない(買い手がいない)こともあります。具体的な金額は、山林の所在地、面積、アクセス、立木の状態などによって大きく異なるため、専門業者に査定を依頼することをおすすめします。
Q3. 相続放棄をすれば山林の共有持分から逃れられますか?
相続放棄をすれば、山林の共有持分を相続せずに済みます。ただし、相続放棄は相続財産「すべて」を放棄する手続きであり、山林だけを選んで放棄することはできません。預貯金や他の不動産など、プラスの財産も含めてすべてを放棄することになります。また、相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
なお、放棄の時に山林を現に占有していた場合は、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって保存する義務があります(民法940条)。
Q4. 固定資産税の通知が来ていませんが、共有持分を持っていないということですか?
いいえ。共有の場合、固定資産税の納税通知書は代表者あてに送付されるのが一般的です。また、課税標準額が免税点未満などで課税されない場合もあります。通知が届いていなくても、共有持分を持っている場合はあります。登記事項証明書(登記簿謄本)で確認することをおすすめします。
Q5. 山林が遠方にあって現地を見たことがありません。それでも処分できますか?
現地を見たことがなくても処分は可能です。ただし、処分にあたっては登記事項証明書、固定資産税の課税明細書、森林簿などの書類が必要になる場合がございます。現地調査が必要かどうかや費用は、依頼先や土地の状態によって異なるため、事前に確認しましょう。
Q6. 共有者の中に行方不明者がいます。どうすればいいですか?
2023年改正民法により、所在不明の共有者がいる場合でも、裁判所の決定を得ることで、以下の対応が可能になりました。
所在不明者以外の共有者の持分の価格の過半数で管理事項を決定する(民法252条2項)
所在不明者以外の共有者全員の同意で変更行為を行う(民法251条2項)
所在不明者の持分をほかの共有者が取得する、または共有者全員で特定の第三者に譲渡する(遺産分割前の相続財産の持分は、相続開始から10年の経過が必要)
また、山林の場合は「共有者不確知森林制度」(森林法)や「森林経営管理制度」を活用できる場合もあります。具体的な手続きについては、弁護士や司法書士にご相談ください。
まとめ|共有名義の山林問題は早期の対応が鍵
共有名義の山林は、放置すればするほど共有者が増え、権利関係が複雑化し、処分が困難になっていきます。2024年の相続登記義務化により、登記を放置するリスクも高まっています。
一方で、2023年の民法改正により、所在不明共有者への対応手段が拡充されるなど、共有問題を解決するための法制度は着実に整備されつつあります。
まず登記事項証明書で名義と持分を確認し、全体の売却、持分の売却・放棄、共有物分割、国庫帰属、引き取りを、費用と条件で比較しましょう。
※本記事の内容は執筆時点の法令等に基づいています。最新の法令等については、関係省庁のウェブサイト等でご確認ください。


