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山林だけ相続放棄はできる?3か月の期限・費用・放棄後の保存義務

執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
一般社団法人日本不動産管財
2025年4月21日
読了時間: 7分

更新日:10月3日

「田舎の山林なんていらない。相続放棄したい」——親御さんが亡くなり、使い道のない山林の存在を知ったとき、最初に思い浮かぶのが相続放棄だと思います。


最初に、押さえておきたい3点をお伝えします。


  1. 山林だけを選んで放棄することはできません。 相続放棄は預貯金・自宅を含む全遺産をまとめて手放す手続きです

  2. 期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から原則3か月です。過ぎてしまった場合でも、事情によって認められる余地や、別の出口があります

  3. 放棄の時に山林を現に占有していた場合は、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が残ります(2023年の民法改正で整理されました)


この記事では、山林の相続放棄の判断のしかた、手続きと費用、放棄後の保存義務、相続してから山林を手放す方法を解説します。



大前提:山林「だけ」の相続放棄はできない

相続放棄は家庭裁判所への申述によって「初めから相続人でなかった」ことになる手続きです。したがって、いらない山林だけを放棄し、預貯金や自宅は相続する、という選択はできません。


判断するときは、次の点を比べます。


  • 借金などの債務、山林以外の財産、受け取りたい財産があるか

  • 山林を保有・管理・処分する費用と、相続して山林だけを手放す方法(後述)の条件


財産全体の内容と、各方法の費用・手間を比べて判断しましょう。



相続放棄の期限は3ヶ月——数え方と延長

期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から原則3か月(熟慮期間)です。被相続人が亡くなったことと、自分が相続人になったことを知った時から数えるため、死亡日からとは限りません。


  • 財産調査が終わらない場合、家庭裁判所に熟慮期間の伸長を申し立てられます(期限内に申立てが必要)

  • 注意すること:遺産の預金を使う、遺産を売却するなど相続財産を「処分」すると、単純承認とみなされ(法定単純承認)、放棄できなくなることがあります。山林の木を売る行為なども該当し得ます。保存行為などの例外もあるため、迷う場合は事前に相談しましょう


3ヶ月を過ぎてしまった場合

原則は放棄できませんが、相続財産が全く存在しないと信じ、そう信じたことに相当な理由がある場合には、相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識できた時から3か月以内であれば、申述が受理される余地があります(判例)。借金の督促や山林の納税通知で初めて財産を知った場合でも、通知を受けたことだけで自動的に受理されるわけではありません。認められるかは事情次第のため、この状況の方は速やかに弁護士・司法書士にご相談ください。


放棄が難しい場合でも、相続したうえで、国庫帰属制度や引き取りサービスなどで山林だけを手放す方法があります(後述)。相続登記の義務は別に確認しましょう。



相続放棄の手続きと費用

手続きの流れ:①戸籍等の必要書類収集 → ②相続放棄申述書を被相続人の最後の住所地の家庭裁判所へ提出(郵送可)→ ③裁判所から照会がある場合は回答 → ④受理通知。受理までの期間は、裁判所や事案によって異なります。


費用の目安


依頼先

費用

自分で行う

収入印紙800円(申述人1人につき)+郵便切手+戸籍の取得費用

司法書士に依頼(書類作成)

事務所ごとに異なる(見積りで確認)

弁護士に依頼(代理)

事務所ごとに異なる(見積りで確認)

相続財産清算人の選任が必要な場合

相続財産で管理費用などを賄えない場合、家庭裁判所が定める予納金が必要になることがある


相続人全員が放棄しても、自動的に清算人が選任されるわけではありません。利害関係人または検察官の申立てにより、家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。清算人が財産を清算し、残った財産は国庫に帰属します(相続土地国庫帰属制度とは別の手続きです)。申立てには費用がかかり、相続財産で管理費用などを賄えないと見込まれる場合は、予納金が必要になることがあります。



放棄しても保存義務は残る?——2023年改正後のルール

相続放棄をした人の義務は、民法改正(2023年4月施行・940条)で整理されました。


現在のルールでは、放棄の時にその財産を「現に占有している」場合に限り、相続人または相続財産清算人に引き渡すまで、自己の財産と同一の注意をもって保存する義務を負います。現に占有しているかは、遠方にある、訪れたことがないといった事情だけでなく、放棄の時の状況によって個別に判断されます。


ただし注意点が2つあります。


  • 同じ順位の相続人が全員いなくなると、相続権は次順位(直系尊属→兄弟姉妹)へ移ります。兄弟姉妹が相続開始以前に亡くなっている場合などは甥・姪が代襲しますが、相続放棄は代襲の原因になりません。配偶者は常に相続人です。トラブルを防ぐため、次順位の親族に知らせることも検討しましょう

  • 全員が放棄しても、自動的に清算人が選任されるわけではありません。清算人などに引き渡すまでは、放棄の時に現に占有していた人に保存義務が残ります

相続放棄後の保存義務と清算人選任を区別する図。全員が放棄しても清算人は自動選任されず、利害関係人または検察官の申立てを経て家庭裁判所が選任する。放棄時に現に占有している場合に限り、相続人または清算人へ引き渡すまで自己の財産と同一の注意で保存する。清算人の選任だけでは保存義務は終わらない

放棄すべきか、相続して手放すべきか——損得の比較


相続放棄

相続した上で山林を手放す

他の遺産(預貯金・自宅)

すべて失う

受け取れる

費用

収入印紙・切手・戸籍の費用(清算人の申立てには別に費用がかかる場合がある)

国庫帰属:審査手数料と負担金/引き取り:依頼先が示す費用(いずれも準備の費用は別)

期限

自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内

放棄のような期限はない(相続登記の申請義務あり。期限は表の下で説明)

親族への影響

同じ順位の相続人が全員いなくなると、次順位へ相続権が移る

相続人の範囲は変わらない(遺産の分け方は相続人間の協議による)


山林を持ち続ける場合の費用は、固定資産税、管理や必要な工事の費用、保有する期間によって異なります。受け取れる財産と、山林の保有・処分にかかる費用を比べて判断しましょう。なお、相続した場合は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があり、正当な理由なく怠ると過料の対象となることがあります(2024年4月1日より前の相続は、2027年3月31日と知った日から3年のいずれか遅い日まで)。


相続した山林を手放す方法の例は次のとおりです。売却や寄付も含め、条件を比べて検討します。


  1. 相続土地国庫帰属制度:相続または相続人への遺贈で取得した土地を、要件を満たせば国に引き渡せる制度。取得経緯と土地の条件、審査手数料と負担金を確認します(詳細:山林の承認率と失敗しない進め方)

  2. 引き取りサービス:対象となる土地、費用、契約条件を確認したうえで検討しましょう。7つの処分方法の比較は山林の処分方法へ



よくある質問(FAQ)

Q. 相続放棄したら、山林の固定資産税は払わなくてよいですか?

  A. 相続放棄が受理されれば、相続人として被相続人の固定資産税の納税義務を引き継ぐことはありません。ただし、自分が所有者として登録されているなど、別の理由で納税義務がある場合は別です。納税通知が届いた場合は、受理通知書の写しなどの資料を示して市町村に確認してください。


Q. 兄弟のうち自分だけ放棄することはできますか?

  A. できます。放棄は各相続人が単独で行えます。その場合、山林を含む遺産は、同じ順位の相続人がほかにいればその相続人が、いなければ次順位の相続人が相続します。


Q. 原野商法の土地でも同じ考え方ですか? 

A. 同じです。なお原野商法の土地は特有の注意点(二次被害等)があるため、原野商法の土地の対処法も併せてご覧ください。別荘地は別荘地の相続放棄へ。


Q. 遺産分割協議で「山林は誰も相続しない」と決めることはできますか?

  A. できません。遺産分割は相続人の誰かに帰属させる手続きであり、所有者のいない状態は作れません。誰かが相続したうえで処分するか、相続放棄をするかを検討します。相続放棄には期限などの要件があります。


Q. 3ヶ月の期限が明日までです。間に合いますか?

 A. 至急、申述先の家庭裁判所または弁護士・司法書士に、期限内に申述する方法を確認してください。期限内に発送すれば足りるとは考えないでください。相続財産の調査などで判断がつかない場合は、期限内に熟慮期間の伸長を申し立てる方法があります。



まとめ

山林の相続放棄は、①山林だけは選べない、②期限は自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月、③放棄の時に現に占有している場合は引き渡すまで保存義務がある——この3点を押さえたうえで、財産全体と、山林の保有・処分の費用を比べて判断してください。


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