売れない「道路の共有持分」だけを持っている場合の対処法|放置リスクと処分の選択肢
- 一般社団法人日本不動産管財

- 7月25日
- 読了時間: 4分
更新日:10月20日
相続や過去の取引で、使い道のない「私道の共有持分」だけを所有してしまった――。
こうしたケースは少なくなく、固定資産税が課される一方で、売ることもできず、利用もできないため、多くの方が「どう処分すればいいのか」と頭を悩ませています。
本記事では、私道の共有持分だけを所有してしまった方に向けて、売却の可否・放置のリスク・有効な対処法を網羅的に解説します
【はじめに】そもそも「道路の共有持分」とは?
「道路の共有持分」とは、複数の土地所有者が共同で持っている通行用の私道の一部権利のことです。多くの場合、その道路は周囲の土地や住宅のために使われており、道路単体での価値はほとんどありません。
典型的なパターン
親が持っていた古い土地を相続したら「道路の共有持分」だけが残っていた
宅地の一部を他人に売却し、道路だけが自分の名義で残っている
道路付きの土地の一部だけ(持分のみ)を第三者から取得した
【問題点①】売れない・買い手がいない
私道の共有持分だけでは、単独で利用価値がなく、住宅や店舗としても使えません。そのため、不動産として市場に出しても、買い手がつかないのが現実です。
なぜ売れないのか?
面積が小さく、建築不可
他の共有者の利用が優先されている
共有物分割請求が難しい
現地に境界がない場合も多く、調査費用が高額
【問題点②】放置リスクがある
「何もしなければ問題ない」と考えがちですが、共有私道の放置には以下のようなリスクが伴います。
放置による主なリスク
固定資産税が毎年かかる
私道に事故や陥没等が発生した場合、共有者として管理責任を問われる
他の共有者が勝手に工事等をした場合でも、同意を求められる
最終的に相続人に負担だけが引き継がれる
【対処法①】隣接地の所有者に譲渡できないか確認
私道の共有持分は、実際にその道路を利用している周辺住民や隣接地所有者にとっては価値がある場合があります。まずは「誰が実際に使っているのか」を調べ、無償または低額で譲渡できないか打診してみましょう。
法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」と「公図」を取得
現地を確認して、道路の利用者を特定
隣接地の登記簿から所有者情報を調査(住所も判明)
書面や電話で譲渡の意思を打診
※ただし、譲渡先が見つからない、費用がかさむなど現実的には難航する場合がほとんどです。
【対処法②】相続放棄を検討する(相続前の場合)
もしこの「共有持分」を相続する前の段階であれば、家庭裁判所で相続放棄の申述を行うことで、取得を回避できます。
相続開始から3ヶ月以内に申述が必要(熟慮期間)
相続放棄すれば他の財産も一切相続できない
相続放棄は家庭裁判所で無料で手続き可能(郵送も可)
【対処法③】他の不動産と一緒に引き取り手を探す
単体では価値のない私道でも、他の土地と一括で売却・譲渡すれば引き取り先が見つかる可能性があります。たとえば…
山林や宅地と一緒に「おまけ」として売却する
廃屋や空き家と合わせて処分対象にする
引き取り業者に相談し、条件付きでまとめて買い取ってもらう
※引き取りの可否は、地番や筆数、接道状況、登記状況により判断されます。
【注意】相続土地国庫帰属制度は利用できない
「いっそ国に引き取ってもらえないか」とお考えになる方も多いですが、私道の共有持分の所有では、相続土地国庫帰属制度の要件を満たさず、利用できません。
同制度は、以下のような土地を対象外としています:
他人と共有している土地
通路・私道・水路など、一般の利用が前提とされた土地
通常の処分が困難な土地(利用制限あり)
そのため、共有道路の持分を相続・所有している場合は、制度の対象外となることをあらかじめ理解しておく必要があります。
【まとめ】売れない私道の共有持分は、放置せずに「出口」を考えるべき
「価値がない」「使えない」「売れない」――。そう思っていても、私道の共有持分は毎年コストを生み続ける資産です。最も怖いのは、そのまま放置し、相続人へと負担を連鎖させてしまうことです。
ぜひ早めにご自身の状況を把握し、以下のような手順で整理を進めましょう。
【対処チェックリスト】
✅ 登記簿・公図で場所・共有者を確認
✅ 隣接地所有者への譲渡可否を検討
✅ 他の土地と一括処分の可能性を探る
✅ 相続前なら相続放棄を検討
✅ 相談先(団体・士業・引取業者)に連絡
今すぐ処分できない場合でも、「誰かに引き継がせない」ための準備はできます。気がついたこのタイミングで、ぜひ一歩を踏み出してみてください。
