山林所有者の賠償責任|倒木・土砂崩れで数千万円請求される前に知るべき7つの対策
- 一般社団法人日本不動産管財
- 2023年10月31日
- 読了時間: 7分
更新日:4 日前
衝撃の事実:山林で5000万円の賠償判決が実際に発生
持っていた山林で5000万円の賠償判決が出たという事実をご存知ですか?
さらに、2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害をめぐっては、遺族が土地の前所有者と現所有者、静岡県や熱海市に対し64億円ほどの損害賠償を請求する裁判を起こしています。
「相続した山林を放置している」「管理できていない山林がある」そんな方は、今すぐこの記事を最後まで読んでください。あなたの山林が、明日にでも巨額の賠償責任を生む可能性があります。
目次
1. 山林所有者が賠償責任を負う3つの法的根拠
民法717条による土地工作物責任
土地の所有者は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合には、その損害を賠償する責任があります(民法717条2項)。この責任は無過失責任となるため、所有者が「自分は管理責任を尽くしていた」と主張しても、責任を免れることはできません。
重要ポイント:
台風などの自然災害でも責任を免れない場合がある
「知らなかった」では済まされない
占有者だけでなく、所有者も責任を負う
過失による不法行為責任(民法709条)
過去に土砂崩れの可能性を何度も指摘されていたのに、それを無視して対策をとらなかったようなケースでは、明確な過失として認定されます。
管理責任の放棄による責任
山林を適切に管理せず放置した結果、第三者に損害を与えた場合も責任を問われます。
2. 実際に発生した高額賠償事例7選
事例1:熱海土石流災害(64億円の賠償請求)
2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害をめぐっては、遺族が土地の前所有者と現所有者、静岡県や熱海市に対し64億円ほどの損害賠償を請求する裁判を起こしています。
事例2:山林で5000万円の賠償判決
山林の管理不備により、隣接地に被害を与えた事例で5000万円の賠償判決が出ています。
事例3:大阪北部地震のブロック塀倒壊
2018年6月に、大阪府北部で最大震度6弱の地震が発生し、それをきっかけに大阪府高槻市内の公立小学校のブロック塀が倒れ、登校中だった小学生が下敷きになって死亡した事故では、関係者が書類送検され、解決金の支払いが発生しました。
事例4:台風による倒木被害(裁判例)
宇都宮地裁平成27年12月17日判決では、幹内部の腐朽・空洞化が進行していた杉の木が台風で倒壊した事例で、樹木の「支持に瑕疵」があったとして、所有者の損害賠償責任を認定しました。
事例5:山火事による延焼被害
朝日新聞デジタルによると、足利の山火事ではたばこが原因と推定され、被害額3200万円に上りました。
事例6:不法投棄による撤去費用
所有している山林で第三者による不法投棄が行われ、近隣の住民から撤去の要望があった場合、その処理は所有者が行うのが原則で、撤去費用が数百万円に及ぶケースもあります。
事例7:獣害による農作物被害
山林に生息する野生動物が周辺の農地に被害を与え、損害賠償を請求されるケースも増加しています。
3. あなたの山林の危険度チェックリスト
以下の項目に1つでも該当する場合は、早急な対策が必要です。
【立地条件のリスク】
□ 隣接地に住宅や道路がある
□ 傾斜度30度以上の急斜面がある
□ 沢や谷に面している
□ 崖地や擁壁がある
□ 過去に土砂災害警戒区域に指定されたことがある
【樹木の状態リスク】
□ 樹齢50年以上の大木がある
□ 枯れ木や倒木を放置している
□ 台風後の点検をしていない
□ 病虫害の兆候がある
□ 根元が腐朽している木がある
【管理状況のリスク】
□ 5年以上現地を確認していない
□ 境界が不明確
□ 不法投棄の跡がある
□ 無断侵入の形跡がある
□ 管理道路が荒れている
4. 賠償リスクが高い山林の5つの特徴
特徴1:市街地に隣接する山林
隣接地に住宅や公共施設がある山林は、被害が発生した場合の賠償額が高額になりやすい。
特徴2:急傾斜地の山林
山林の樹木や地盤などを適切に管理していなかった場合は、所有者側の過失とされ、賠償責任を負う可能性が高いです。
特徴3:老齢樹木が多い山林
幹内部の腐朽・空洞化はかなり大きく進行していて、葉を多く生い茂らせている分だけ余計に風圧の影響を受けやすく、折損可能性が非常に高い危険な状態の樹木は特に注意が必要です。
特徴4:長期間放置された山林
伐採や管理を行わず、通常考えられる所有者の責任を果たしていなかった場合は、責任を負わされる可能性も否定できません。
特徴5:アクセスが困難な山林
管理が行き届かず、問題の早期発見が困難なため、リスクが蓄積しやすい。
5. 今すぐできる7つの対策方法
対策1:定期的な現地確認(年2回以上)
春(4-5月):新芽の時期に樹木の健康状態を確認
秋(9-10月):台風シーズン後の被害確認
対策2:危険木の事前伐採
一度豪雨を経験したことで倒木等の恐れが出てきたのであれば、適切な対応(伐採、地盤の強化、防護ネットや柵の設置など)を行わなければ責任を負わされることもあります。
伐採の優先順位:
枯れ木・病害虫被害木
傾斜木・根元腐朽木
隣地境界から10m以内の大木
道路・電線に接近した木
対策3:境界の明確化と標識設置
境界杭の設置
「私有地につき立入禁止」の看板設置
管理者連絡先の明示
対策4:森林組合との連携
森林組合の方に点検してもらい、倒木の恐れがあるものについては伐採などを行ってもらうことが重要です。
対策5:管理記録の保存
普段から管理を徹底している証拠となる以下のような物を保管しておくと、万が一の場合に役立ちます:竹木の植樹を施工した業者の施工完了報告書などの書類、定期メンテナンス時の作業完了報告書などの書類、上記に関する写真等。
対策6:近隣との良好な関係構築
年1回以上の挨拶回り
連絡先の交換
問題発生時の早期連絡体制の構築
対策7:専門家による診断
樹木医による健康診断
土木技術者による地盤調査
弁護士による法的リスク評価
6. 山林賠償責任保険の活用法
【施設賠償責任保険、森林保険の加入】
倒木被害の原因が、台風・暴風等によるものであれば「風災、雹(ひょう)災および雪災補償特約」で補償されます。
保険でカバーできる範囲:
倒木による第三者への損害
土砂崩れによる被害
山火事の延焼被害(条件あり)
注意点:
管理不備が明確な場合は保険適用外
免責金額の設定に注意
年間保険料は山林面積により変動(目安:1ha当たり年間5,000~20,000円)
保険適用の要件が厳しい
7. リスクが高い山林の処分方法
【方法1:早期売却を検討】
放置することが一番のリスクになりますので、「山林を活用していない」「適切な管理をしていない」という方は早めの売却をおすすめします。
【方法2:相続土地国庫帰属制度の利用】
2023年から始まった制度で、条件を満たせば国に土地を引き渡せます。
利用条件:
建物がないこと
担保権等が設定されていないこと
境界が明確であること
負担金の納付(21万円~/1筆)
【方法3:自治体への寄付】
管理能力がある自治体に寄付することで、責任から解放される可能性があります。
【方法4:森林経営管理制度の活用】
市町村が仲介役となり、林業経営者に管理を委託する制度です。
【方法5:山林引き取りサービス】
有償で山林を引き取ってもらうサービスも増えています。
まとめ:今すぐ行動しないと手遅れになる理由
山林の所有者責任は「知らなかった」では済まされません。特に以下の方は今すぐ行動が必要です:
相続で山林を取得したが一度も現地を見ていない
5年以上管理していない山林がある
隣接地に住宅や道路がある山林を所有している
急傾斜地や老齢樹木がある山林を所有している
今すぐできる3つのアクション:
現地確認:まず山林の現状を把握する
保険加入:施設賠償責任保険への加入を検討
専門家相談:リスクが高い場合は早期処分を検討
放置すればするほどリスクは増大します。「まだ大丈夫」と思っているうちに、取り返しのつかない事故が起きる可能性があります。
