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【体験談】30年放置した山林をようやく手放せた話

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 2025年12月30日
  • 読了時間: 12分

Aさん(68歳・東京都在住)の体験談

「ようやく終わった……」

所有権移転登記が完了した書類を手にしたとき、Aさんは思わずそうつぶやきました。30年間、毎年届く固定資産税の通知書を見るたびに感じていた重苦しさ。子どもたちに「あの山だけは絶対に相続しないで」と言われるたびに感じていた申し訳なさ。それらすべてから、ついに解放されたのです。

この記事では、Aさんがどのような経緯で山林を所有することになり、どんな苦労を経て、最終的にどうやって手放すことができたのかをご紹介します。同じように「売れない山林」に悩んでいる方の参考になれば幸いです。


第1章|すべての始まり―父から相続した「負の遺産」

1-1. バブル期に父が購入した「夢の別荘地」

1989年、バブル経済の真っ只中。Aさんの父(当時62歳)は、不動産会社の営業マンから「将来必ず値上がりする」「リゾート開発が進んで別荘地になる」と勧められ、長野県の山林約3,000㎡を購入しました。

購入価格は約800万円。当時としても決して安い買い物ではありませんでしたが、「老後は自然の中で暮らしたい」という夢もあり、退職金の一部を充てて購入を決意したそうです。

しかし、現実は厳しいものでした。

購入から数年後、バブルは崩壊。約束されていたはずのリゾート開発計画は白紙に。道路は未舗装のまま、電気も水道も通らない山奥の土地だけが残されました。


1-2. 父の死と、突然の相続

1995年、父が急逝。Aさん(当時38歳)は、実家の土地・建物とともに、あの山林も相続することになりました。

「正直、山林のことは頭になかったんです。父の遺品整理をしていて、権利証が出てきて初めて思い出したくらいで……」

相続手続きを依頼した司法書士からは、「この山林、売れないかもしれませんよ」と言われましたが、当時は実家の処分や仕事のことで頭がいっぱい。「いつか何とかなるだろう」と、深く考えずに相続登記を済ませてしまいました。

これが、30年にわたる「負動産」との戦いの始まりでした。



第2章|30年間の苦悩―売れない、捨てられない、どうにもならない

2-1. 毎年届く固定資産税の通知

山林の固定資産税は、年間約12,000円。金額だけ見れば大した負担ではないかもしれません。しかしAさんにとって、この通知書は「解決できていない問題」を毎年突きつけられるようなものでした。

30年間で支払った固定資産税の総額は約36万円。さらに、相続登記の費用、現地確認のための交通費など、目に見えない出費も積み重なっていきました。


2-2. 突然届いた「枝を切ってください」の手紙

2019年の秋、Aさんのもとに一通の内容証明郵便が届きました。差出人は、山林に隣接する土地の所有者。

「貴殿所有の山林から樹木の枝が越境し、当方の土地に落ち葉が大量に堆積しております。また、枝が伸びて日当たりにも支障が出ております。速やかに越境している枝の伐採をお願いいたします」

Aさんは愕然としました。

「30年近く何も言われなかったのに、なぜ今になって……。そもそも、東京から長野の山奥まで行って、自分で木を切るなんてできるわけがない」

民法では、樹木の枝が隣地に越境している場合、その樹木の所有者に伐採義務があります。放置すれば、損害賠償請求をされる可能性もありました。

地元の伐採業者を探すも……

Aさんは慌てて、現地近くの伐採業者を探し始めました。しかし、ここでも困難が待っていました。

・山奥すぎて「そんな場所まで行けない」と断られる・「道が狭くて重機が入れない」と言われる・ようやく見つけた業者からは「出張費込みで35万円」との見積もり

「35万円……! たかが枝を切るだけで、なぜこんなにかかるんだ」

それでも、放置するわけにはいきません。Aさんは泣く泣く35万円を支払い、越境していた枝の伐採を依頼しました。

「これで終わり」ではなかった

しかし、話はこれで終わりませんでした。

伐採から2年後の2021年、再び同じ隣地所有者から連絡が。

「また枝が伸びてきています。今度は別の木からも越境しています」

樹木は生き物です。一度切っても、また伸びてくる。そして、切った木以外からも新たに越境が発生する。

Aさんは、この山林を持っている限り、「永遠に終わらない伐採費用」を払い続けなければならないことを、このとき痛感しました。

【樹木越境への対応でかかった費用】

・1回目の伐採費用(2019年):35万円

・2回目の伐採費用(2021年):28万円

・現地確認のための交通費(2回分):約4万円

合計:約67万円

「この先も2〜3年おきに30万円近い出費が続くのか……。もう、どうすればいいのかわからなくなりました」

2-3. 30年間で支払った総費用

固定資産税に加え、樹木越境への対応費用も含めると、Aさんが30年間で負担した費用は予想をはるかに超えるものでした。

【Aさんが30年間で負担した費用(総計)】

・固定資産税(30年分):約36万円

・相続登記費用:約8万円

・樹木越境の伐採費用(2回分):約63万円

・現地確認の交通費(計7回分):約14万円

・不動産会社への相談・査定費用:約3万円

合計:約124万円

父が800万円で購入した土地に、さらに124万円もの維持費用がかかっていたのです。そして、この土地の現在の市場価値は——ほぼゼロ。


2-4. 売却を試みるも、すべて失敗

Aさんは過去30年間で、何度も売却を試みました。

【2000年頃】地元の不動産会社に相談

「この場所じゃ買い手はいませんね」と断られる。仲介すら受けてもらえず。

【2008年頃】インターネットの不動産掲示板に掲載

価格を100万円→50万円→10万円と下げても、問い合わせゼロ。

【2015年頃】隣接地の所有者に打診

「うちも持て余しているから、タダでもいらない」と断られる。

【2018年頃】自治体への寄付を相談

「活用の見込みがない土地の寄付は受け付けていません」と門前払い。

「何をやってもダメ。もう一生この山林と付き合っていくしかないのかと、半ば諦めていました」

2-5. 家族からの「あの山だけは相続しない」宣言

Aさんには二人の子どもがいます。数年前、相続について家族で話し合った際、長男からこう言われました。

「お父さん、悪いけど、あの長野の山だけは絶対に相続しないよ。自分の子どもにまで迷惑をかけたくないから」

長女も同意見でした。

子どもたちの気持ちは痛いほどわかります。自分自身も、父からこの土地を相続したとき、同じことを思ったのですから。

「自分の代で何とかしなければ」——その思いは日に日に強くなっていきました。


2-6. 知られていない「所有者責任」の重さ

山林を所有しているだけで、実は様々な責任を負っています。Aさんも当初は知りませんでした。

・土砂災害が発生した場合の賠償責任

もし山林から土砂が流出して、下流の住宅や道路に被害を与えた場合、所有者として損害賠償責任を問われる可能性があります。

・樹木越境への対応義務

Aさんが経験したように、樹木の枝が隣地に越境した場合、所有者には伐採義務があります。

・不法投棄への対応義務

山林に産業廃棄物などが不法投棄された場合、撤去費用は原則として所有者負担となります。

・2024年4月からの相続登記義務化

相続登記をしないまま放置すると、10万円以下の過料が科される可能性があります。

「一度も行ったことのない山のために、こんなリスクを背負い続けるなんて……」


第3章|転機―「相続土地国庫帰属制度」との出会いと挫折

3-1. 新制度のニュースを見て「これだ!」

2023年4月、「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。

Aさんはテレビのニュースでこの制度を知り、すぐに法務局のホームページを調べました。

「相続で取得した土地を、国に引き取ってもらえる制度ができた? これなら解決できるかもしれない!」

制度の概要を調べると、山林の場合、負担金は面積に関わらず一律20万円。審査手数料も14,000円と、思っていたより現実的な金額でした。

伐採費用だけで63万円もかかったことを思えば、20万円で国に引き取ってもらえるなら安いものです。


3-2. 法務局への相談で判明した「厳しい現実」

希望を胸に、Aさんは地元の法務局に相談に行きました。

しかし、担当者の説明を聞いて、その希望は萎んでいきました。

【国庫帰属制度を利用できない土地の例】

・建物がある土地

・担保権が設定されている土地

・境界が明らかでない土地

・崖がある土地

・土壌汚染がある土地

・通路など他人の利用が予定される土地

・管理・処分に過分の費用

・労力がかかる土地

Aさんの山林には、いくつかの問題がありました。

問題①:境界が不明確

30年以上前の購入時に境界確定がされておらず、隣接地との境界を示す杭も見当たりません。境界確定には隣接地所有者全員の立会いと同意が必要ですが、その所有者の所在すら不明でした。

問題②:急傾斜地を含む

現地調査の結果、土地の一部に30度を超える急傾斜地があることが判明。「崖がある土地」に該当する可能性がありました。

問題③:隣地への越境樹木

現在も隣地に越境している樹木があり、「管理・処分に過分の費用・労力がかかる土地」に該当する可能性がありました。

「せっかくの新制度も、私の土地には使えないのか……」

法務局の担当者は親身に相談に乗ってくれましたが、「現状では申請しても却下される可能性が高い」との見解でした。



第4章|解決への道―専門機関との出会い

4-1. インターネットで見つけた「不動産引き取りサービス」

国庫帰属制度が使えないとわかり、Aさんは再びインターネットで解決策を探し始めました。

「山林 手放す 方法」「山林 処分 どうすれば」——様々なキーワードで検索する中で、「不動産引き取りサービス」という選択肢があることを知りました。

しかし、ここでAさんは新たな不安に直面します。

「引き取り業者って、本当に信用していいのだろうか? 悪質な業者に騙されたという話も聞くし……」

実際、不動産の引き取りを装った詐欺的な業者も存在します。「引き取り」と言いながら高額な手数料を請求したり、引き取った後に適切な管理をせずに放置したりするケースが報告されています。


4-2. 信頼できる引き取り先を見極めるポイント

Aさんは慎重に複数の引き取り業者を比較検討しました。その過程で、信頼できる業者を見極めるポイントが見えてきました。

✓ 法人格の有無と実績

株式会社など、法人として登記されているか。実績があるか。

✓ 引き取り後の管理

引き取った土地を管理しているか、具体的な説明があるか。樹木の管理についても対応してもらえるか。

✓ 費用の信憑性

定額で価格が一律のサービスは、土地の管理が十分に行き届いていないケースが多い印象です。

✓ 契約内容の明確さ

所有権移転登記まできちんと行われるか。契約書の内容は明確か。追加費用が発生しないか。


4-3. 一般社団法人日本不動産管財への相談

比較検討の結果、Aさんは「一般社団法人日本不動産管財」に相談することを決めました。

決め手となったのは以下の点でした。

・非営利団体・最適な処分方法を確認してくれる・売却の可能性まで確認していただける

「最初の相談で、無料調査をしてくれて、最適な処分方法を確認していただけた。樹木の越境問題で困っていることも理解してくれて、それが信頼できると感じた理由です」


第5章|手続きの実際―相談から所有権移転まで

5-1. 最初の相談(2024年3月)

Aさんは、まずホームページのお問い合わせフォームから連絡を取りました。

【初回問い合わせで確認されたこと】

・地番・所有者名・崖の有無・固定資産税評価額・管理費・樹木越境などのトラブルの有無・他に所有者がいるか(共有名義か単独名義か)など

5-2. 必要書類の準備

とくに資料は必要なく、地番情報のみで調査いただけました。

5-3. 調査結果と決断

私の場合、売却や自治体・国への寄付など、いくつかの選択肢のなかで、一般社団法人日本不動産管財に引きとって頂くのが最も良いと判断致しました。

5-4. そして、30年ぶりの解放

2024年5月、所有権移転登記完了を知らせる連絡がきました。

最寄りの法務局にて登記事項証明書を確認すると、確かに所有者欄が変更されています。30年間、自分の名前が記載されていた欄に、一般社団法人日本不動産管財と記載されている。

「本当に終わったんだ……もう、隣地の人から『枝を切れ』と言われることもないんだ」

Aさんは、書類を何度も見返しました。30年間、ずっと心のどこかで引っかかっていた重荷が、ようやく下りた瞬間でした。



第6章|手放した後の心境―安堵と後悔と、これからのこと

6-1. 「もっと早く決断すればよかった」

山林を手放して数ヶ月。Aさんに今の心境を聞きました。

「正直、もっと早く決断すればよかったと思います。30年間、ずっと先送りにしてきた。特に樹木の伐採費用——あれだけで63万円も払った。あの伐採費用を払う前に知っていれば……と思わずにはいられません」
「ただ、以前は今のような引き取りも、国庫帰属制度もなかった。選択肢がなかったんです。その意味では、今この時代に解決できたことは、タイミングが良かったとも言えるのかもしれません」

6-2. 子どもたちの反応

山林を手放したことを子どもたちに報告すると、二人とも安堵の表情を浮かべたそうです。

「長男は『お父さん、ありがとう。これで安心して相続の話ができる』と言ってくれました。長女は『お金かかったでしょ? いくらか負担するよ』と。その気持ちだけで十分でしたが」

家族の将来に不安の種を残さずに済んだこと。それが、Aさんにとって一番大きな「解決」だったのかもしれません。

6-3. 同じ悩みを持つ人へのメッセージ

最後に、Aさんから同じ悩みを持つ方へのメッセージをいただきました。

「『いつかなんとかなる』と思っていても、なんとかなることはありません。私がそうでした。30年間、ずっと先送りにして、結局は自分で動くまで何も変わらなかった。特に、樹木の越境問題を抱えている方は要注意です。木は放っておいても勝手に伸びます。一度切っても、また伸びてくる。そのたびに何十万円もの費用がかかる。これは、土地を持ち続ける限り永遠に続く出費なんです。今は、以前よりも選択肢が増えています。国庫帰属制度もあれば、引き取りサービスもある。まずは専門家に相談してみることをお勧めします。相談するだけなら無料のところも多いですから。問題を先送りにすればするほど、次の世代に負担がいきます。自分の代で解決できることは、自分の代で解決する。それが、私が30年かけて学んだことです」

まとめ|Aさんのケースから学ぶこと

Aさんの体験から、山林処分について以下のことが見えてきます。

①「いつかなんとかなる」は、ならない

売れない山林は、待っていても売れるようにはなりません。時間が経てば経つほど、固定資産税の負担は増え、相続問題は複雑化していきます。

②樹木の管理費用は「永遠に続く出費」

樹木越境の問題は、一度解決しても再発します。Aさんのように、伐採費用だけで数十万円の出費を繰り返すケースは珍しくありません。

③選択肢は複数ある

売却、寄付、国庫帰属制度、引き取りサービス——現在は様々な選択肢があります。自分の土地に合った方法を専門家に相談して探すことが大切です。

④「お金を払って手放す」という選択

「土地を手放すのにお金を払う」ことに抵抗を感じる方も多いでしょう。しかし、将来にわたる固定資産税、樹木の管理費用、損害賠償リスク、相続問題を考えれば、決して割高ではないケースが多いのです。

⑤自分の代で解決する意義

問題を先送りにすれば、子や孫の世代に負担が引き継がれます。自分の代で解決することは、家族への最大の贈り物かもしれません。


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