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【山火事】山林所有者が知っておくべき予防・管理・責任と対処法

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 1月15日
  • 読了時間: 11分

山火事対策完全ガイド

山林所有者が知っておくべき予防・管理・責任と対処法


【目次】


1. 山火事対策とは?山林所有者が知っておくべき基礎知識

2025年に入り、日本各地で大規模な山火事が相次いで発生しています。2月には岩手県大船渡市で約3,370ヘクタールが焼失し、平成以降最大規模の山火事となりました。3月には岡山県岡山市で約565ヘクタール、愛媛県今治市で約482ヘクタール、2026年には山梨 上野原・大月で200ヘクタール以上が焼けるなど、例年にない規模の被害が報告されています。

このような状況の中、山林を所有している方にとって「山火事対策」は避けて通れない重要な課題となっています。山火事対策とは、山林における火災の発生を予防し、万が一発生した場合の被害を最小限に抑えるための取り組みのことです。

本記事では、山林所有者として知っておくべき山火事の基礎知識から、具体的な対策方法、法的責任、そして山林の処分方法まで、包括的に解説していきます。



2. 日本の山火事の発生状況【最新統計データ】

2-1. 年間の発生件数と被害額

林野庁の統計によると、直近6年間(令和2年〜令和6年)の平均で、日本では年間約1,200件の山火事が発生しています。これは1日あたり約4件のペースです。

項目

年間平均

1日あたり

発生件数

約1,200件

約4件

焼損面積

約800ヘクタール

約2ヘクタール

損害額

約2.1億円

約60万円

出典:林野庁統計資料


2-2. 2025年の大規模山火事事例

2025年は例年にない規模の山火事が多発しています。主な事例を以下にまとめました。

  • 岩手県大船渡市(2月):焼失面積約3,370ヘクタール、約4,600人に避難指示、鎮火まで41日

  • 岡山県岡山市(3月):焼失面積約565ヘクタール

  • 愛媛県今治市(3月):焼失面積約482ヘクタール、送電線への影響で市内停電の恐れ

特に大船渡市の山火事は、平成以降最大規模となり、市人口の約14%にあたる住民に避難指示が出されるなど、深刻な被害をもたらしました。



3. 山火事の原因とメカニズム

3-1. 山火事の主な原因

林野庁の調査によると、山火事の原因の大半は人為的なものです。原因が判明している山火事について、その内訳は以下のとおりです。

原因

割合

備考

たき火

32.5%

最多原因

火入れ(野焼き)

約14%

農作業関連

放火(疑い含む)

約10%

犯罪行為

たばこ

約8%

ポイ捨て

その他(落雷、火遊びなど)

約35%

自然発火は


3-2. 山火事の燃え広がり方(4つのタイプ)

山火事には、燃え広がり方によって以下の4つのタイプがあります。

  • 地表火:地面の落ち葉や下草が燃える火災。最も一般的なタイプ

  • 樹冠火:樹木の上部(樹冠)に燃え移る火災。針葉樹林で発生しやすく、急速に拡大

  • 樹幹火:樹木の幹を伝って燃え上がる火災

  • 地中火:地下の腐植層や泥炭層がくすぶり続ける火災。発見・消火が困難

特に樹冠火は、風の影響を受けやすく、飛び火によって離れた場所にも延焼する危険性があります。2025年の大船渡市の山火事では、油分を含むスギやアカマツの樹冠火が発生し、消火活動を困難にしました。



4. 山火事が発生しやすい時期と条件

4-1. 発生時期

山火事の約7割は、冬から春(1月〜5月)に集中して発生しています。月別で最も多いのは4月です。

この時期に山火事が多い理由:

  • 森林内に落ち葉が堆積し、燃えやすい状態になっている

  • 太平洋側を中心に空気が乾燥している

  • 強風が吹きやすい

  • 農作業で枯れ草焼きや火入れが行われる

  • 山菜採りやハイキングなどで入山者が増加する


4-2. 気象条件

以下の気象条件が重なると、山火事が発生・拡大しやすくなります。

  • 少雨:降水量が少なく、土壌や植生が乾燥

  • 低湿度:相対湿度が低く、空気が乾燥

  • 強風:風速8m/s以上で消火用の水が蒸発し、飛び火が発生

  • 高温:気温が高いと可燃物が乾燥しやすい


4-3. 大規模化の要因

近年、山火事が大規模化している背景には以下の要因があります。

  • 地球温暖化:雪解けの早期化、乾燥期間の長期化

  • 森林管理の不足:間伐や下草刈りが行われず、可燃物が蓄積

  • 林業従事者の減少:1980年の約14.6万人から2020年には約4.4万人に減少(約7割減)

手入れが行き届かない山林では、枯れ葉・枯れ枝・落葉などが燃料となって蓄積し、一度火がつくと急速に燃え広がりやすい環境になっています。



5. 山林所有者としての山火事対策【具体的な方法】

5-1. 火災予防の基本対策

林野庁では、山火事予防のために以下の点を呼びかけています。

  • 枯れ草等のある火災が起こりやすい場所では、たき火をしない

  • たき火等火気の使用中はその場を離れず、使用後は完全に消火する

  • 強風時及び乾燥時には、たき火、火入れをしない

  • 火入れを行う際は、必ず市町村長の許可を受ける

  • たばこは指定された場所で喫煙し、吸い殻は必ず消すとともに投げ捨てない


5-2. 山林管理による対策

山林所有者として、以下の管理を行うことで山火事リスクを軽減できます。

  • 防火帯の設置:燃えるものがない帯状の空間を作り、延焼を食い止める

  • 下草刈り:林床の雑草を刈り取り、地表火の燃料を減らす

  • 間伐・枝打ち:木々の密度を適正に保ち、樹冠火への発展を防ぐ

  • 落ち葉・枯れ枝の除去:可燃物の蓄積を防ぐ

  • 防火性の高い樹木の植栽:常緑広葉樹など燃えにくい樹種を配置する


5-3. 無断侵入者対策

近年のアウトドアブームにより、山林への無断侵入やキャンプが増加しています。

  • 立入禁止の看板・標識を設置する

  • 定期的な巡回・見回りを行う

  • 監視カメラや警報機の設置を検討する

  • 森林組合への見回り依頼を検討する


5-4. 林野火災注意報・警報への対応

令和8年(2026年)1月から、全国の市町村で「林野火災注意報」「林野火災警報」の運用が開始されています。

  • 林野火災注意報:屋外での火の使用を控えるよう努める

  • 林野火災警報:屋外での火の使用が禁止される。違反した場合は30万円以下の罰金または拘留



6. 山火事による法的責任と損害賠償

6-1. 山林所有者の責任

山林所有者は、民法717条に基づく「工作物責任」の考え方により、土地の管理責任を負う場合があります。

責任を問われる可能性があるケース:

  • 枯草が大量に放置され、火災が発生しやすい状態になっていた

  • 土砂崩れの危険を何度も指摘されていたのに対策をとらなかった

  • 腐朽した樹木の倒壊リスクを認識していながら放置した

重要:通常の管理を行っていた場合や、損害の発生を防止するための注意を払っていた場合は、責任を負わされる可能性は低いとされています。


6-2. 失火責任法の適用

火災による損害賠償については、「失火責任法」という特別な法律が適用されます。

失火責任法では、単なる過失(軽過失)の場合は損害賠償責任を負わず、「重大な過失」がある場合にのみ責任を負うとされています。

「重大な過失」と認定された裁判例:

  • 強風・乾燥時に燃えやすい屋根の上で火のついたタバコを吸い、吸い殻を捨てた

  • 乾燥注意報・火災注意報が発令されている状況下で、乾燥した可燃物の近くでたき火をした

  • 野焼きの残り火を十分に確認せず、消火せずに放置した


6-3. 刑事責任

山火事を起こした場合、以下の刑事責任を問われる可能性があります。

  • 森林法違反:50万円以下の罰金

  • 重失火罪:3年以下の禁錮または150万円以下の罰金(民家などに延焼した場合)


6-4. 賠償額の実例

山林関連の損害賠償事例をご紹介します。

  • 足利市山火事(栃木県):被害額約3,200万円

  • 山林管理不備による隣接地被害:約5,000万円の賠償判決

  • 倒木による被害:樹木の管理瑕疵として所有者の責任を認定



7. 山火事が起きてしまった場合の対応

7-1. 初期対応

  • 119番通報:すぐに消防に連絡。発生場所・火の大きさ・風向きを伝える

  • 避難の確保:自身と周囲の人の安全を最優先

  • 初期消火:小さな火であれば消火を試みるが、無理はしない


7-2. 避難時の注意

  • 風上へ避難する(火の後ろ側へ)

  • 煙を吸い込まないよう、濡れたタオルなどで口と鼻を覆う

  • 山道や尾根沿いは火の回りが速いので避ける

  • 燃えにくい道路や広場を探して避難する


7-3. 事後対応

  • 警察・消防への協力と事情説明

  • 保険会社への連絡(火災保険に加入している場合)

  • 被害状況の記録・写真撮影

  • 弁護士への相談(損害賠償問題が生じた場合)



8. 山林管理ができない場合の選択肢

「遠方に住んでいて管理できない」「高齢で山に入れない」「管理費用が負担」といった理由で、山林の管理が困難な場合、以下の選択肢を検討できます。

8-1. 相続土地国庫帰属制度

令和5年(2023年)4月27日から開始された制度で、相続によって取得した土地を国に引き渡すことができます。

主な要件:

  • 相続または遺贈により取得した土地であること

  • 建物がないこと

  • 境界が明確であること

  • 管理に支障がある工作物・地下埋設物がないこと

費用:審査手数料(14,000円/筆)+負担金(山林の場合、面積に応じて算定)


8-2. 売却

市街地に近い山林や、道路へのアクセスが良い山林であれば、売却できる可能性があります。山林専門の不動産会社や、キャンプ場・別荘用地を探している買い手を見つけることも一つの方法です。


8-3. 自治体への寄付

林業振興に力を入れている自治体では、条例で山林の寄付を受け付けている場合があります。お住まいの自治体や山林所在地の自治体に相談してみましょう。


8-4. 森林経営管理制度の活用

市町村が仲介役となり、林業経営者に管理を委託する制度です。所有権は維持したまま、適切な管理を委ねることができます。


8-5. 山林引き取りサービス

民間の専門業者に有償で山林を引き取ってもらうサービスも存在します。国庫帰属制度の要件を満たさない場合でも利用できる可能性があります。

当社団(一般社団法人日本不動産管財)でも、山林をはじめとする処分困難な不動産の相談を承っております。



9. よくある質問(FAQ)

Q1. 山火事は人為的なものがほとんどですか?

A. はい。林野庁の統計によると、日本の山火事の約7割が人為的な原因(たき火、火入れ、放火、たばこなど)によるものです。落雷などの自然発火は稀です。


Q2. 他人が私の山林に無断侵入して山火事を起こした場合、私(所有者)の責任になりますか?

A. 基本的には、山火事を起こした不法侵入者に責任があります。ただし、所有者が山林の管理を著しく怠り、枯草が大量に放置されているなど火災が発生しやすい状態になっていた場合は、一部責任を問われる可能性があります。


Q3. 山林に火災保険はかけられますか?

A. 山林(立木)に対する火災保険商品は限られています。森林保険(旧・森林国営保険)という公的制度があり、火災・風害・水害などの損害を補償します。加入を希望する場合は、森林組合や林野庁に相談してください。


Q4. 相続した山林がどこにあるか分からない場合はどうすればいいですか?

A. 固定資産税の課税明細書に記載されている地番を確認し、法務局で登記事項証明書を取得しましょう。地番が分かれば、公図や地積測量図を入手して場所を特定できます。それでも分からない場合は、専門家(土地家屋調査士、司法書士など)に相談することをお勧めします。


Q5. 山火事を起こしてしまった場合、どのような罪に問われますか?

A. 過失で森林を燃やした場合は森林法違反(50万円以下の罰金)、重大な過失により民家などに延焼させた場合は重失火罪(3年以下の禁錮または150万円以下の罰金)に問われる可能性があります。故意の場合は放火罪として重い刑罰が科されます。


Q6. 森林法の「火入れ」の許可とは何ですか?

A. 森林または森林の周囲1km以内で火入れ(野焼きなど)を行う場合は、事前に市町村長の許可が必要です。無許可で火入れを行うと、30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。


Q7. 山火事対策として、具体的にどのような森林管理をすればいいですか?

A. 主な対策として、①防火帯の設置、②下草刈り、③間伐・枝打ちによる木の密度調整、④落ち葉や枯れ枝の除去、⑤防火性の高い樹種への植え替えなどがあります。個人での管理が難しい場合は、森林組合や専門業者に委託することも検討してください。



10. まとめ

本記事では、山火事対策について、山林所有者として知っておくべき情報を包括的に解説しました。

ポイントをまとめると:

  • 日本では年間約1,200件の山火事が発生しており、2025年は特に大規模化が顕著

  • 山火事の約7割は人為的原因(たき火、火入れ、放火、たばこなど)

  • 冬から春(1月〜5月)に約7割が集中して発生

  • 山林所有者は、防火帯の設置、下草刈り、間伐などの管理対策が重要

  • 「重大な過失」がある場合は損害賠償責任を負う可能性あり

  • 管理が困難な場合は、国庫帰属制度や売却、引き取りサービスなどの選択肢がある

山火事は一度発生すると消火が困難で、森林の回復には数十年の時間とコストがかかります。また、所有者として法的責任を問われる可能性もあります。

「管理できない山林」を放置することは、山火事リスクを高めるだけでなく、所有者自身の負担や責任を増大させることにもつながります。

山林の管理にお困りの方、処分を検討されている方は、ぜひ一度専門家にご相談ください。


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