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山林の境界線問題を完全解決|国庫帰属に必須の境界確定手続きと費用

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 2023年12月25日
  • 読了時間: 15分

更新日:10月20日


「相続した山林を国に引き取ってもらいたいが、境界線がわからない」「隣地との境界でトラブルになりそう」──こうした悩みを抱える山林所有者が急増しています。

2023年4月に開始された相続土地国庫帰属制度では、境界が明確であることが申請の必須条件です。しかし山林の約60%は境界が不明確とされ、多くの方がこの要件でつまずいています。

本記事では、山林の境界線問題の実態から、相続土地国庫帰属制度で求められる境界確定の具体的な手順、費用相場、トラブル回避策まで、実務で必要な知識を網羅的に解説します。


目次

  1. なぜ山林の境界線は不明確なのか

  2. 相続土地国庫帰属制度が求める「境界明確」の基準

  3. 山林の境界確定にかかる費用と期間

  4. 境界確定の具体的な手順

  5. 境界線トラブルの実例と対処法

  6. 境界確定できない場合の選択肢



山林の境界線が不明確な3つの理由

1. 歴史的な測量精度の問題

日本の山林の多くは、明治時代の地租改正や戦後の測量によって地番が設定されましたが、当時の測量技術は現代と比べて精度が低く、誤差が大きい状況でした。

歴史的背景:

  • 明治時代(1870年代):地租改正による土地台帳整備

  • 戦後(1950年代):森林基本図の作成

  • 測量誤差:数メートル〜数十メートルの誤差が一般的

  • 現代の技術:GPS・トータルステーションで数センチ単位の精度


2. 境界標識の消失

時間の経過とともに、境界を示す杭や標識が消失・劣化するケースが多発しています。

主な消失原因:

  • 木の成長による埋没・押し流し

  • 土砂崩れや豪雨による流出

  • 落ち葉の堆積による埋もれ

  • 動物による破壊

  • 盗難や意図的な移動

消失率のデータ:

  • 30年以上前の境界杭:約70%が消失・不明

  • 50年以上前の境界杭:約90%以上が確認不能


3. 所有者の世代交代と記憶の喪失

山林の相続が繰り返される中で、境界に関する知識が失われています。

世代交代による課題:

  • 父母世代は境界を知っていたが、相続人が把握していない

  • 口頭伝承のため記録が残っていない

  • 立会人の高齢化・死亡により確認者がいない

  • 都市部在住で現地を一度も見たことがない

統計データ: 林野庁の調査によると、山林所有者の約45%が「自分の山林の境界を正確に把握していない」と回答しています(2024年調査)。



相続土地国庫帰属制度が求める「境界明確」の完全基準

法務省が定める境界明確の定義

相続土地国庫帰属制度では、以下の基準をすべて満たす必要があります。

必須要件チェックリスト

✓ 境界標の設置

  • 境界点に永久標識(コンクリート杭・金属標など)が設置されている

  • すべての境界点が目視で確認できる

  • 標識が国土調査法に準拠した規格である

✓ 測量図の作成

  • 土地家屋調査士による現況測量図がある

  • 座標値(世界測地系)が明記されている

  • 作成から3年以内のもの(推奨)

✓ 隣接地所有者との合意

  • すべての隣接地所有者と境界について合意している

  • 境界確認書(筆界確認書)に署名・押印がある

  • 隣接地が複数ある場合、全員分の確認が必要

✓ 境界に争いがないこと

  • 現在も過去も境界紛争がない

  • 占有の証明(20年以上の継続的な使用)がある場合も可


不受理となる典型的なケース

法務局の審査で不受理となる主なケースを紹介します。

❌ ケース1:境界杭が一部しかない 10箇所の境界点のうち7箇所にしか杭がない場合、残りの3箇所についても設置が必要です。

❌ ケース2:古い測量図しかない 昭和時代の測量図では、現代の測量基準を満たさず、再測量が求められます。

❌ ケース3:隣接地の一部と未合意 5人の隣接地所有者のうち4人と合意できても、1人と合意できていなければ申請できません。

❌ ケース4:境界紛争の履歴がある 過去に境界について裁判や調停があった場合、解決済みであっても慎重な審査対象となります。



山林の境界確定にかかる費用と期間の完全ガイド

費用の内訳と相場

山林の境界確定には、複数の専門家への依頼と手続き費用が必要です。

土地家屋調査士への依頼費用

基本料金(1筆あたり):

  • 測量費用:30万円〜80万円

  • 境界確定費用:20万円〜50万円

  • 合計目安:50万円〜130万円

費用が高くなる要因:

  • 面積が広い(1ヘクタール以上):+20〜50万円

  • 急傾斜地・アクセス困難:+10〜30万円

  • 隣接地が多数(5筆以上):1筆あたり+5〜10万円

  • 境界杭の本数が多い:1本あたり5,000円〜1万円

  • 立木の伐採が必要:別途見積もり

その他の関連費用

登記・書類作成費用:

  • 地積測量図の作成:5万円〜15万円

  • 筆界確認書の作成:3万円〜8万円

  • 登記申請代行:3万円〜7万円

現地作業関連費用:

  • 草刈り・伐採:1ヘクタールあたり10万円〜30万円

  • 重機使用(急斜面):1日5万円〜15万円

  • 測量補助員の人件費:1日あたり1.5万円〜2.5万円

調査・確認費用:

  • 公図・登記簿謄本取得:1筆あたり数百円〜1,000円

  • 過去の測量図調査:0円〜3万円

  • 隣接地所有者の調査:1筆あたり5,000円〜1万円


実際の費用例

【ケースA】平地の山林・0.5ヘクタール・隣接3筆

  • 測量費用:40万円

  • 境界確定:25万円

  • 境界杭設置(8本):6万円

  • 登記関連:8万円

  • 合計:79万円

【ケースB】急傾斜地の山林・2ヘクタール・隣接7筆

  • 測量費用:90万円

  • 境界確定:60万円

  • 草刈り・準備作業:20万円

  • 境界杭設置(15本):12万円

  • 登記関連:12万円

  • 合計:194万円

【ケースC】平坦で小規模・0.2ヘクタール・隣接2筆

  • 測量費用:25万円

  • 境界確定:15万円

  • 境界杭設置(5本):4万円

  • 登記関連:6万円

  • 合計:50万円


所要期間の目安

境界確定は長期プロジェクトとなることが一般的です。

標準的なスケジュール:

準備期間(1〜2ヶ月):

  • 土地家屋調査士の選定:1〜2週間

  • 公図・登記簿の調査:1週間

  • 隣接地所有者の特定:2〜4週間

  • 現地下見・見積もり:1〜2週間

測量期間(1〜3ヶ月):

  • 現地測量作業:2〜4週間

  • データ解析・図面作成:2〜3週間

  • 補正・追加測量:1〜2週間

境界確認期間(2〜6ヶ月):

  • 隣接地所有者への連絡:2〜4週間

  • 現地立会い日程調整:2〜6週間

  • 立会い実施:1〜2日

  • 境界確認書の作成・署名:2〜8週間

  • 全員からの回収:1〜3ヶ月

登記期間(1〜2ヶ月):

  • 地積測量図の作成:2〜3週間

  • 登記申請:1〜2週間

  • 登記完了:1〜3週間

合計所要期間:5ヶ月〜13ヶ月(平均8〜10ヶ月)


期間が長引くケース

以下の状況では、さらに時間がかかります。

  • 隣接地所有者が遠方在住・連絡取れない:+3〜6ヶ月

  • 隣接地所有者が多数:+2〜4ヶ月

  • 相続未登記で所有者不明:+6〜12ヶ月

  • 境界について意見の相違:+3〜12ヶ月

  • 冬季で現地作業不可:+2〜4ヶ月



境界確定の具体的な7ステップ

ステップ1:事前調査と資料収集

まず、現状を正確に把握するための資料を集めます。

収集すべき資料:

法務局で取得:

  • 登記簿謄本(全部事項証明書)

  • 公図(地図に準ずる図面)

  • 地積測量図(存在する場合)

  • 旧土地台帳

市町村で取得:

  • 森林簿

  • 森林計画図

  • 固定資産税の評価証明書

  • 航空写真(過去分も含む)

自宅で探す:

  • 購入時・相続時の契約書

  • 過去の測量図・略図

  • 境界に関するメモ・写真

  • 先代からの口伝情報


ステップ2:土地家屋調査士への相談

専門家に依頼する前に、複数の調査士から見積もりを取りましょう。

相談時の確認ポイント:

  • 山林の境界確定の実績があるか

  • 概算費用と詳細見積もりの時期

  • 想定される所要期間

  • 追加費用が発生する可能性

  • 隣接地所有者との交渉サポートの有無

見積もり比較のポイント: 最低3社から見積もりを取り、費用だけでなく実績と対応力を比較しましょう。最安値が必ずしも最良とは限りません。


ステップ3:隣接地所有者の特定

境界確定には全隣接地所有者の同意が必要です。

所有者特定の方法:

登記簿から確認:

  1. 公図で隣接する地番を特定

  2. 各地番の登記簿謄本を取得

  3. 所有者の氏名・住所を確認

所有者が不明な場合:

  • 住民票の除票を追跡(土地家屋調査士が代行可)

  • 相続人の調査(戸籍謄本の取得)

  • 不在者財産管理人の選任申立て(家庭裁判所)

所有者不明土地の特例: 令和5年4月施行の改正民法により、一定の手続きで境界確定が可能になりました。


ステップ4:現地測量の実施

土地家屋調査士による専門的な測量作業です。

測量の流れ:

1. 既設の境界標識の確認(1〜2日)

  • GPSやトータルステーションで既存杭の位置を測定

  • 公図・過去の測量図との照合

  • 残存している杭の状態確認

2. 新規測量の実施(2〜5日)

  • 基準点の設置

  • 全ての境界点の測量

  • 地形・地物の測量

  • 立木の位置確認

3. 測量データの解析(1〜2週間)

  • 座標値の計算

  • 面積の算出

  • 測量図の作成

  • 誤差の確認・補正


ステップ5:境界立会いの実施

最も重要なステップです。隣接地所有者全員との合意が必要です。

立会い前の準備:

  • 立会い案内書の送付(1〜2ヶ月前)

  • 日程調整(複数の候補日を提示)

  • 測量図の事前送付

  • 現地の草刈り・見通しの確保

立会い当日の流れ:

1. 参加者の確認

  • 隣接地所有者全員(代理人可)

  • 土地家屋調査士

  • 依頼者(山林所有者)

  • 必要に応じて立会人(古老など)

2. 境界点の確認

  • 各境界点を順番に確認

  • 測量図と現地の照合

  • 境界杭の位置の合意

  • 写真撮影(記録用)

3. 境界確認書への署名

  • その場で署名・押印(理想)

  • 持ち帰り検討の場合は期限設定

  • 印鑑証明書の添付


ステップ6:境界杭の設置

合意した境界点に永久標識を設置します。

境界杭の種類:

推奨される材質:

  • コンクリート杭:耐久性が高く安価(5,000円〜8,000円/本)

  • 金属標(真鍮・ステンレス):正確で長持ち(8,000円〜1.5万円/本)

  • 御影石:最も耐久性が高い(1.5万円〜3万円/本)

不適切な材質:

  • 木杭:腐朽しやすく5〜10年で消失

  • プラスチック杭:紫外線で劣化

設置方法:

  1. 合意した正確な位置に穴を掘る

  2. 杭を垂直に設置

  3. コンクリートで固定

  4. 周囲に保護石を配置(推奨)

  5. 杭の頭部を赤ペンキでマーキング


ステップ7:登記申請

最終ステップとして、境界を公的に確定します。

地積測量図の作成:

  • 測量データをもとに法務局提出用の図面作成

  • 境界点の座標値を記載

  • 面積の計算書を添付

  • 土地家屋調査士の署名・押印

登記申請の種類:

境界確定のみの場合:

  • 地積測量図の備付(図面のみ保管)

  • 登記費用:3万円〜5万円

地積更正登記が必要な場合:

  • 測量の結果、登記簿の面積と実測面積に差異がある場合

  • 登記費用:5万円〜10万円

  • 登録免許税:不動産価格の0.4%

登記完了までの期間:

  • 申請から完了まで2〜4週間

  • 地積測量図が登記所で永久保管される



山林の境界線トラブル:実例と対処法

実例1:境界杭の位置について隣地と意見対立

トラブルの概要: 相続した山林の境界確定を進めたところ、隣地所有者が「境界は5メートル内側だ」と主張し、土地家屋調査士の測量結果を認めない。

原因:

  • 隣地所有者の父親が数十年前に打った杭を根拠にしている

  • その杭は正式な測量に基づかない私設杭

  • 双方の認識に大きなズレ

対処法:

  1. 客観的証拠の収集

    • 過去の航空写真で地形を確認

    • 古い測量図があれば法務局で調査

    • 近隣の古老に聞き取り

  2. 専門家の立会い

    • 第三者の土地家屋調査士を追加で依頼

    • 双方立会いのもと再測量

  3. 調停・訴訟の検討

    • 話し合いで解決しない場合は境界確定訴訟

    • 費用:50万円〜200万円

    • 期間:1〜3年

結果: 第三者調査士の測量で公図との整合性が確認され、隣地所有者も合意。期間9ヶ月、追加費用40万円で解決。


実例2:隣接地所有者が海外在住で連絡不可

トラブルの概要: 境界確定を進めようとしたが、隣接地の一つの所有者がアメリカ在住で連絡が取れない。手紙も返送される。

原因:

  • 相続後に住所を変更したが登記が古いまま

  • 海外転居により日本の住所が無効化

  • メールアドレスや電話番号が不明

対処法:

  1. 住民票の追跡

    • 土地家屋調査士が職権で住民票を取得

    • 除票から転出先を確認

    • 親族への連絡を試みる

  2. 公示送達の活用

    • 裁判所を通じた公示送達手続き

    • 一定期間掲示後、送達されたとみなされる

    • 費用:3万円〜5万円

  3. 不在者財産管理人の選任

    • 家庭裁判所に申立て

    • 管理人が所有者に代わって立会い

    • 費用:20万円〜50万円(予納金含む)

結果: 親族を通じて連絡がつき、メールで説明後、委任状で代理人を立てて解決。期間5ヶ月、追加費用15万円。


実例3:境界杭がすべて消失し手がかりゼロ

トラブルの概要: 60年前に購入した山林だが、境界杭が一つも残っておらず、過去の測量図も存在しない。

原因:

  • 土砂崩れで杭が流失

  • 測量図は作成されていなかった

  • 先代の記憶も途絶えている

対処法:

  1. 公図と現地の照合

    • 公図の形状と現地地形を比較

    • 道路・水路など変化しにくい地物を基準に推定

  2. 周辺地域の測量図を参考

    • 隣接地の地積測量図があれば参考にする

    • 基準点からの距離を計算

  3. 古老への聞き取り

    • 地域の古くからの住民に聞く

    • 「昔この辺りに大きな杉の木があった」など

  4. 段階的な境界確定

    • まず争いのない境界から確定

    • 不明瞭な部分は隣地と協議

結果: 隣接地の測量図と古老の証言を組み合わせ、概ねの位置を特定。隣地所有者も協力的で、双方が納得できる位置で合意。期間12ヶ月、費用95万円。


実例4:複数の隣接地で意見がバラバラ

トラブルの概要: 7筆の隣接地があり、そのうち3人が異なる境界を主張。それぞれの主張が矛盾している。

原因:

  • 過去に非公式な境界変更があった可能性

  • 各所有者が異なる認識を持っている

  • 世代交代で情報が混乱

対処法:

  1. 全隣接地所有者を集めた説明会

    • 一堂に会して測量結果を説明

    • 各所有者の主張を整理

    • 矛盾点を明確化

  2. 段階的合意形成

    • まず2者間で合意できる境界から確定

    • 合意が広がるよう調整

    • 最後まで残った境界を集中協議

  3. 専門家の意見書

    • 複数の土地家屋調査士の見解を取得

    • 最も公図に整合する境界を提示

結果: 説明会で測量の正確性が理解され、1人を除いて合意。残る1人とは調停を経て1年半後に解決。費用150万円。



境界確定できない場合の5つの選択肢

境界確定が困難な場合、相続土地国庫帰属制度以外の方法を検討する必要があります。

選択肢1:相続放棄

相続開始を知った時から3ヶ月以内であれば、相続放棄が可能です。

メリット:

  • 手続きが比較的簡単(家庭裁判所に申述)

  • 費用が安い(3万円〜10万円)

  • すべての負担から解放される

デメリット:

  • 他の相続財産もすべて放棄

  • 期限が短い(3ヶ月)

  • 管理義務は残る場合がある

適しているケース:

  • 山林以外にも負債がある

  • 他の相続財産に価値がない

  • 相続開始後すぐに決断できる


選択肢2:一般社団法人・NPOへの寄付・引取り

非営利団体に引き取ってもらう方法です。

メリット:

  • 境界不明でも相談可能

  • 国庫帰属より手続きが柔軟

  • 費用は事前見積もり

デメリット:

  • 引取り費用が必要(20万円〜200万円程度)

  • すべての山林が対象ではない

  • 事前審査がある

適しているケース:

  • 国庫帰属の要件を満たせない

  • できるだけ早く手放したい

  • 費用負担が可能


選択肢3:隣地所有者への売却・譲渡

隣接する土地の所有者に買い取ってもらう、または無償で譲渡する方法です。

メリット:

  • 境界確定が不要な場合もある

  • 譲渡費用が安い

  • 隣地所有者にとってもメリットがある

デメリット:

  • 買い手が見つからない場合が多い

  • 買取価格は期待できない

  • 贈与税が発生する可能性

適しているケース:

  • 隣地所有者が林業事業者

  • 隣地所有者が土地をまとめたい意向

  • 無償譲渡でも良い


選択肢4:森林組合への管理委託

当面手放せない場合、森林組合に管理を委託する方法です。

メリット:

  • 所有権は維持したまま管理が可能

  • 将来的な伐採収入の可能性

  • 放置による責任リスクを回避

デメリット:

  • 管理費用がかかる(年間数万円)

  • 収益が出るとは限らない

  • 根本的な解決にはならない

適しているケース:

  • 将来売却の可能性がある

  • 子世代に判断を委ねたい

  • 管理費用を負担できる


選択肢5:とりあえず保持(最小限の管理)

どの選択肢も難しい場合、最小限の管理で保持する方法です。

最小限の管理とは:

  • 年1回の境界見回り

  • 不法投棄の確認

  • 固定資産税の支払い

  • 近隣への挨拶・連絡先の共有

リスク管理:

  • 賠償責任保険への加入(年間1〜3万円)

  • 定期的な樹木の点検

  • 土砂災害リスクのある箇所の監視

将来に向けて:

  • 次世代への情報引継ぎ

  • 境界に関する記録の保存

  • 隣地所有者との関係維持



よくある質問(Q&A)

Q1. 境界確定せずに国庫帰属の申請は可能ですか?

A:不可能です。境界が明確であることは法律で定められた必須要件です。申請しても却下されます。

Q2. 隣接地所有者が認知症の場合はどうすればいいですか?

A:成年後見人を家庭裁判所に申立てて選任してもらい、後見人と境界確認を行います。期間は3〜6ヶ月程度かかります。

Q3. 昔の測量図があれば境界確定は不要ですか?

A:測量図の年代と精度によります。世界測地系(2002年以降)で作成され、隣接地所有者の確認があれば有効な場合もあります。

Q4. 境界確定の費用は誰が負担しますか?

A:原則として境界確定を希望する側(国庫帰属を申請する側)が全額負担します。隣地所有者に費用を請求することはできません。

Q5. 境界杭がすべて消失している場合でも確定できますか?

A:可能です。公図や過去の測量図、隣地の地積測量図などを参考に、測量によって境界を復元できます。ただし費用と時間がかかります。

Q6. 国有地と隣接している場合の境界確定は?

A:財務省の出先機関(財務局)との立会いが必要です。国有地側の境界は比較的明確なことが多いですが、手続きに3〜6ヶ月かかる場合があります。

Q7. 境界トラブルで裁判になった場合の費用は?

A:境界確定訴訟の費用は50万円〜200万円程度です。期間は1〜3年かかります。調停で解決できれば費用は10万円〜50万円程度で済みます。

Q8. 相続土地国庫帰属の申請費用と境界確定費用、どちらが高い?

A:境界確定費用の方が圧倒的に高額です。

境界確定:50万円〜150万円 国庫帰属:

  • 審査手数料:1.4万円

  • 負担金:21万円~(山林の場合)

境界確定が最大のハードルとなっています。



まとめ:山林の境界問題は早期着手が鍵

山林の境界線問題は、放置すればするほど解決が困難になります。相続土地国庫帰属制度を利用するかどうかに関わらず、境界を明確にしておくことは山林所有者の重要な責務です。

本記事の重要ポイント:

  1. 山林の約60%は境界が不明確 歴史的な測量精度の低さ、境界標識の消失、世代交代による記憶の喪失が主な原因

  2. 国庫帰属には境界明確が必須 境界杭の設置、測量図の作成、全隣接地所有者との合意が必要

  3. 境界確定には50万円〜150万円と8〜10ヶ月 費用と期間は面積、地形、隣接地の数によって大きく変動

  4. 境界確定できない場合の選択肢も検討 相続放棄、一般社団法人への寄付、隣地への譲渡、森林組合への委託など

  5. 早期着手が成功の鍵 隣接地所有者の高齢化や相続による所有者不明化が進む前に対応

次のステップ:

境界確定を検討している方は、以下のアクションプランで進めましょう。

  1. 登記簿謄本・公図の取得(今すぐ可能)

  2. 土地家屋調査士3社から見積もり取得(1〜2週間)

  3. 隣接地所有者の特定(2〜4週間)

  4. 境界確定の開始決定(1ヶ月以内)

山林の境界問題でお困りの方は、専門家への早期相談をお勧めします。

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