山林の倒木リスクと早期対策の重要性:山林所有者としての責任と心得

更新日:10月7日
近年、各地の山林で深刻な被害をもたらしている「松くい虫」問題は、森林資源の損失のみならず、私有地や公共空間において倒木被害を誘発し、人的被害や財産損壊のリスクを高めています。先日、当社団が所有している山林でも、松くい虫に侵されて枯死した松が隣地へ倒れるという事態が発生しました。そこで、周辺への二次被害を防ぐため、道路に面した松の木を早急に伐採する決断を下しました。
虫被害による倒木の危険性、山林を管理する側の責任と義務、そして事故が起きる前に講じるべき対策について解説します。

虫被害がもたらす倒木リスク
松くい虫被害は、主にマツノマダラカミキリが運ぶマツノザイセンチュウによって松が枯れる被害です。枯れた松は倒木や枝の落下につながるおそれがあります。住宅や農地、道路に近い木は、倒れた場合に人や車両へ被害が及ぶおそれがあるため、特に注意が必要です。


山林管理者としての責務・義務
山林の所有者・管理者は、道路沿いや隣地境界付近など、倒木が周囲へ被害を及ぼすおそれのある場所の状態を把握し、専門業者と必要な管理を検討することが大切です。松くい虫被害の予防と、すでに被害を受けた木の処理は分けて考える必要があります。
倒木や枝の落下で他人に損害が生じても、所有しているだけで必ず賠償責任が生じるわけではありません。民法第717条は、工作物の設置・保存に瑕疵(安全性の欠陥)がある場合の責任を定め、竹木の栽植・支持に瑕疵がある場合にも適用されます。原則として占有者(土地や樹木を事実上支配・管理する人)が責任を負い、占有者が損害を防ぐために必要な注意をしたときは所有者が責任を負うという仕組みです。
上記の瑕疵によって損害が生じ、所有者として責任を負うときは、所有者自身が占有者でも、見回りなど必要な注意をしていたというだけでは免責されません。故意・過失による権利侵害には民法第709条も関係します。責任の有無は、樹木の状態や管理状況、損害との因果関係などによって判断されます。
事故を未然に防ぐための早期対策
1. 定期的な現地調査
安全な場所から、葉の変色や樹木の傾き、枝の落下などの異常を確認します。見た目だけで原因を断定せず、異常がある木には近づかないでください。点検の頻度や方法は、道路・住宅への近さや樹木の状態に応じて専門業者と相談しましょう。
2. 専門家への相談・診断
松くい虫被害が疑われる場合は、森林組合や林業事業者、自治体の森林担当窓口などに相談し、原因の確認と対処方法を検討します。道路や電線の近くでは、道路管理者や電力会社との調整が必要な場合もあります。危険な木の伐採は専門業者へ依頼してください。
3. 予防と被害木の処理
林野庁は、健全な松への樹幹注入やマツノマダラカミキリを対象とする薬剤散布などの「予防」と、被害木の伐倒・くん蒸・破砕などの「駆除」を区別しています。すでに被害を受けた松が、剪定や薬剤散布だけで回復するという意味ではありません。周囲の松への被害拡大を防ぐため、伐倒した被害木は材の中の幼虫を駆除する処理まで含めて専門業者・自治体と相談しましょう。実施する方法や時期も相談し、自己判断で薬剤を散布したり危険な木を切ったりしないでください。
4. 保険加入の検討
賠償責任に備える保険を検討する際は、所有する山林の倒木や枝の落下による事故が対象となるかを保険会社等へ確認してください。補償の対象、免責事項、支払限度額は契約ごとに確認する必要があります。
松くい虫被害が疑われるときは、異常のある木へ近づかず、まず森林組合や林業事業者、自治体の森林担当窓口などへ相談しましょう。道路や住宅への影響を確認し、予防と被害木の処理を分けて、必要な対応を検討してください。
確認した一次資料
e-Gov法令検索「民法」第709条・第717条:https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089
国土交通省・仙台西国道維持出張所「樹木管理のお願い」:https://www.thr.mlit.go.jp/sendai/nishikoku/jyumoku.html
確認日:2026年10月7日
