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原野商法とは?二次被害の手口と対策を完全解説

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 2023年7月11日
  • 読了時間: 8分

更新日:10月20日


この記事で分かること

  • 原野商法の基本的な仕組みと歴史

  • 急増する二次被害の具体的な手口4パターン

  • 被害を防ぐための対策と見分け方

  • 被害に遭った場合の相談窓口と対処法

  • 不要な土地の適切な処分方法


「あなたの持っている土地を高値で買い取ります」「測量をすれば高く売れます」そんな勧誘を受けたことはありませんか?

原野商法とは、値上がりの見込みがほとんどないような山林や原野について、実際には建設計画等はないにもかかわらず「開発計画がある」「もうすぐ道路ができる」などとうその説明をしたり、「将来確実に値上がりする」などと問題勧誘を行ったりして販売をする商法です。

近年、1970〜1980年代に原野商法の被害に遭った方や、その土地を相続した方を狙った「二次被害」が急増しています。2017年度以降は年間1,500件超となっているなど、被害は拡大の一途をたどっています。

この記事では、原野商法の手口から二次被害の対策まで、被害を防ぐために必要な知識を分かりやすく解説します。



目次

  1. 原野商法とは何か

  2. 原野商法の歴史と現状

  3. 急増する二次被害の実態

  4. 二次被害の手口4パターン

  5. 被害を防ぐための対策

  6. 被害に遭った場合の対処法

  7. 相談窓口一覧



原野商法とは何か

基本的な仕組み

原野商法とは、将来的に値上がりすると虚偽の説明をして、資産価値のない山林や原野を購入させる手法です。

典型的な手口

  • 虚偽の開発計画:「新幹線が通る予定」「リゾート開発がある」

  • 架空の道路建設:「高速道路のインター設置予定」

  • 投資価値の誇張:「将来確実に値上がりする」「今が買い時」


被害者が騙される理由

被害者は虚偽のリゾート開発や公共事業の計画イメージが描かれたパンフレットと、街区状に分筆登記された公図に騙される形で、価値の無い土地を購入してしまう

騙しのテクニック

  • 著名人の利用:芸能人や政治家などの著名人やプロスポーツ選手等に無償で一部の街区を譲渡し、「○○氏も所有するリゾート計画地!」等といった騙し宣伝を行う布石を打つ場合もある

  • 現地確認の妨害:売りつける土地とは違う他人の土地に案内するなど、追及をかわすさまざまな手口が用意されている

  • 時間的プレッシャー:「今しかない特別な条件」として即決を迫る



原野商法の歴史と現状

原野商法の全盛期

1960年代から1980年代が全盛期であり、新聞の折り込み広告や雑誌の広告などを使った勧誘が盛んに行われていた

歴史的な流れ

  • 1960年代:原野商法の始まり

  • 1970年代:1970年頃から社会問題となり被害が本格化

  • 1980年代:1980年代後半には警察による摘発が相次ぎました


代表的な事件

日拓商法(1972年) 1972年、日本消費者連盟に日拓の社員から内部告発があり、『消費者リポート』(102号、1972年2月27日付)に掲載。これを受けて朝日新聞(1972年4月24日付)が「いんちき商法まかり通る」のタイトルで「日拓商法」を取り上げ

バブル期の大型事件

  • 1985年:エヌ・アール・ケイ・ローズ販売事件(被害総額11億円)

  • 1986年:奥別府ニュータウン事件


現在の状況

1985年から過去に遡って統計が取られ、1983年には原野商法の被害者を別の業者が「転売」と称してさらにハメる、2次被害も確認された



急増する二次被害の実態

被害件数の推移

相談件数の急増 原野商法の二次被害のトラブル件数は、2010年度までは年間500件以下、2013年度以降は年間1,000件前後、2017年度以降は年間1,500件超となっている


被害額の高額化

平均被害額の推移

  • 2009年度:平均で149万円

  • 2018年度:平均で484万円まで増加

  • 2023年度:約110万円

  • 2024年度:約258万円と再び増加


被害者の特徴

年齢構成 契約当事者の年代別割合について70歳代が約4割を占め、もっとも多くなっています。全体を見ても、60歳以上が約9割を占めています

被害者の心理 「残される人に相続の負担をかけたくない」「元気なうちに負の遺産を清算したい」という気持ちにつけこむもの



二次被害の手口4パターン

1. 売却勧誘型

基本的な流れ

  1. 「あなたの土地を高値で買い取ります」と勧誘

  2. 契約書にサインさせる

  3. 実際は新たな土地購入契約だった

具体例 40年前に30坪と100坪の山林を購入し所有している。先日、「30坪の方の土地を欲しがっている人がいる」と不動産業者から電話があり、買いたい人がいるならと思い了解した。その後、不動産業者から、売るに当たり調査や整地等が必要と言われ、請求されるままに合計190万円を支払った


2. 売却勧誘-下取り型

手口の特徴 「あなたの持っている土地を高値で買い取る」といった電話勧誘をきっかけとし、その後契約内容の詳細を説明せずに「手続き費用」「税金対策」といった名目でお金を請求するが、実際には原野等の売却と同時に新たな原野等の土地の購入の契約をさせている

具体的な被害例 1,200万円で保有している原野を売り、1,600万円で新たな原野を購入させられ、差額の400万円を支払うといったケース


3. サービス提供型

主な手口

  • 「土地を売るために測量が必要」と高額な費用を請求

  • 「広告費を払えば買い手が見つかる」と勧誘

  • 「登記手続きが必要」と手数料を要求

被害の実態 山林を購入したい方がいると持ち掛けられて、調査費用や整地費用を支払ったところ、そもそも購入希望者はおらず、お金だけを持ち逃げされたケース


4. 管理費請求型

典型的なパターン 突然、心当たりのない管理業者から、「管理費を滞納しているので支払え」「あなたの土地をずっと管理してきたので、その費用を支払え」などといった通知が届く



被害を防ぐための対策

基本的な心構え

重要なポイント

  1. 甘い話を疑う:昔購入した別荘地や山林が、広告を行えばすぐに売れるというようなうまい話はありません

  2. 即決しない:必ず時間をかけて検討する

  3. 家族に相談:重要な契約は一人で決めない


具体的な確認方法

土地の実態調査

  • 役所での確認:所在地の役所で土地の用途や評価額などを調べる

  • 地元業者への問い合わせ:地元の不動産業者に土地の売買状況や価格を問い合わせる

  • 現地確認:可能であれば実際に現地を訪問

業者の信頼性確認

  • 宅地建物取引業の免許番号確認

  • 会社の実在性と所在地の確認

  • 過去の取引実績の調査


断り方のコツ

効果的な対応方法

  1. きっぱりと断る:曖昧な返事は避ける

  2. 「家族と相談してから」と伝える

  3. 「専門家に相談する」と答える

  4. 連絡先を教えない



被害に遭った場合の対処法

すぐに取るべき行動

緊急対応

  1. 支払いを停止:追加の支払いは絶対にしない

  2. 証拠保全:契約書、パンフレット、録音データの保管

  3. 相談窓口に連絡:消費生活センターへ即座に相談


クーリングオフの活用

適用条件

  • 訪問販売や電話勧誘販売の場合

  • 契約から8日以内(宅地建物取引業の場合)

  • 書面による通知が必要


法的対応

可能な手続き

  • 詐欺罪での刑事告発

  • 民事訴訟による損害賠償請求

  • 宅建業者の責任追及:詐欺に関与した(名義を貸した)宅地建物取引士の責任を追及することが考えられます



相談窓口一覧

公的相談窓口

消費者ホットライン

  • 電話番号:188(いやや)

  • 受付時間:平日:9時00分から17時00分 土曜・日曜・祝日:10時00分から16時00分

  • 年中無休:年末年始を除き原則毎日利用可能

  • 相談料:無料(通話料のみ発生)

国民生活センター

  • 全国の消費生活センターを案内

  • 専門相談員による対応

  • オンライン相談も可能

法律相談

弁護士相談

  • 各都道府県の弁護士会

  • 法テラス(日本司法支援センター)

  • 初回相談料:30分5,500円程度

司法書士相談

  • 各地域の司法書士会

  • 140万円以下の民事事件に対応

行政機関

国土交通省

  • 宅地建物取引業者への苦情・相談

  • 業者の処分情報の確認

都道府県庁

  • 宅建業法違反の報告

  • 消費生活相談窓口



不要な土地の適切な処分方法

正当な処分方法

寄付・譲渡

  • 自治体への寄付相談

  • 公益団体への譲渡

  • 隣接地所有者への売却

相続土地国庫帰属制度

  • 相続により取得した土地が対象

  • 一定の要件を満たす場合に国が引き取り

  • 申請前に法務局への相談が必要


悪質業者を見分けるポイント

要注意の勧誘文句

  • 「土地を高値で買い取ります」

  • 「測量すれば必ず売れます」

  • 「税金対策になります」

  • 「今だけの特別な条件」

怪しい業者の特徴

  • 突然の電話勧誘や訪問

  • 会社の実態が不明

  • 即決を強要する

  • 前金を要求する



まとめ:原野商法被害を防ぐための心得

被害防止の基本原則

1. 疑いの目を持つ 土地の売却に関する甘い話は、まず疑ってかかることが重要です。特に高齢者の方は、家族と相談してから判断しましょう。

2. 事前調査を徹底する 業者の信頼性、土地の実態、市場価格など、契約前の調査を怠らないことが被害防止の鍵です。

3. 専門家を活用する 不明な点があれば、消費生活センター、弁護士、信頼できる不動産会社などの専門家に相談しましょう。

4. 証拠を残す 万一の場合に備え、契約書類、勧誘時の録音、やり取りの記録などの証拠を保全しておくことが大切です。


家族・周囲の方ができること

見守りのポイント

  • 高齢者の身近にいる方は、不審な勧誘を受けていないか注意深く見守る

  • 土地の売却話が出た際は、必ず相談に乗る

  • 怪しい契約書や請求書を発見した場合は、すぐに専門機関に相談する


社会全体での取り組み

原野商法の二次被害は、個人の問題ではなく社会全体で取り組むべき課題です。被害者を責めるのではなく、情報共有と啓発活動により、被害の拡大を防ぐことが重要です。


被害を防ぐには即答せず、所在地の役所で土地の用途や評価額などを調べる、地元の不動産業者に土地の売買状況や価格を問い合わせる、可能ならば現地を確認するなど、慎重に対応することが大切

不要な土地でお困りの場合は、まず公的機関や信頼できる専門家に相談し、適切な処分方法を検討することをお勧めします。甘い話に惑わされず、冷静な判断を心がけましょう。

💡 原野商法でお困りの方へ 怪しい勧誘を受けた場合は、まず消費者ホットライン188番にご相談ください。一人で悩まず、専門家のサポートを受けることが被害防止の第一歩です。

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