原野商法とは?親が買った土地の処分方法と二次被害の手口【2026年版】
- 一般社団法人日本不動産管財

- 2023年7月11日
- 読了時間: 7分
「親が昔、北海道の原野を買っていたことが相続で判明した」「『あなたの土地を買い取ります』という電話がかかってきたが、信じていいのか」——原野商法に関するご相談は、この2つに集約されます。
先に結論をお伝えします。
原野商法で購入した土地は、残念ながら市場での売却はほぼ期待できません。ただし、手放す方法はあります(後述)。
「土地を買い取ります」という突然の電話・訪問は、二次被害(詐欺)の典型的な入口です。価値のない土地に、向こうから買い手が現れることはまずありません。
この記事では、原野商法とは何かという基礎から、相続した場合の対処、二次被害の具体的な手口と見分け方、そして現実的な手放し方までを、原野・山林の引き取り実績をもつ一般社団法人日本不動産管財が解説します。
原野商法とは
原野商法とは、ほとんど価値のない原野や山林を、「開発計画がある」「近くに道路や駅ができる」「将来確実に値上がりする」などの虚偽・誇大な説明で高額販売した悪質商法です。1960年代後半から1980年代にかけて被害が多発し、北海道(釧路・別海周辺など)、那須、房総、山梨・長野の山間部などの土地が、都市部の会社員や公務員に「投資」として大量に売りつけられました。
手口の典型は次のようなものでした。
現地を見せずに図面だけで契約させる、あるいは見学ツアーで別の整備された土地を見せる
広大な原野を50坪〜100坪程度に細かく区画割りし、1区画数十万〜数百万円で販売(実勢価値は数千円〜数万円程度)
登記だけは正規に行われるため、詐欺と気づきにくい
当時販売された土地の多くは、道路がない・電気水道がない・境界標もない「地図上だけの区画」で、開発されることのないまま数十年放置され、現在に至ります。こうした土地は「休眠分譲地」とも呼ばれます。
原野商法の土地は、今いくらの価値があるのか
厳しい現実ですが、購入価格が数百万円でも、現在の市場価値は実質ゼロ〜数万円程度というケースがほとんどです。理由は明確です。
単独では使えない:1区画50〜100坪の飛び地で、道路に接しておらず、建物も建てられない
場所の特定すら難しい:造成されていないため、現地に行っても自分の区画が分からない
買い手が存在しない:同じ分譲地内に「売りたい人」が何百人もいて、「買いたい人」がいない
一方で、所有している限り固定資産税(少額でも)と管理責任、そして相続の手続き負担は発生し続けます。2024年4月からは相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象になりました。「価値がないから放置」が法的にも許されなくなっています。
親が原野商法で買った土地を相続したら
相続の場面で初めて「親が原野を買っていた」と判明するケースは非常に多くあります。対応は相続のタイミングで変わります。
【相続発生から3ヶ月以内の場合】 相続放棄が選択肢に入ります。ただし原野だけを放棄することはできず、預貯金・自宅を含む全遺産の放棄になります。他に相続したい財産があるなら、いったん相続した上で処分する方が合理的です。
【既に相続してしまった場合】 主な出口は次の3つです。
方法 | 費用 | 条件・注意点 |
相続土地国庫帰属制度 | 負担金20万円〜+審査手数料14,000円/筆 | 相続で取得した土地のみ。境界が明らかであること等の要件。審査に半年〜1年 |
自治体・第三者への寄付 | 登記費用等 | 受け入れはごく稀。原野商法の分譲地はほぼ不可 |
引き取りサービス | 数十万円〜 | 購入した土地も対象。境界未確定・場所不明でも相談可。数週間〜1ヶ月 |
国庫帰属制度は「相続や遺贈で取得した土地」しか使えない点が重要です。原野商法で購入したご本人は対象外ですが、それを相続したお子さん・お孫さんは申請できます。ただし原野商法の分譲地は境界が不明確なことが多く、境界確定の測量費用(1区画50万円〜)が壁になる場合があります。原野なら負担金は原則20万円で済むため、境界がはっきりしている土地なら検討の価値があります。(詳細:原野は相続土地国庫帰属制度で手放せるか)
売却・寄付・放棄を含めた選択肢全体の比較は、原野の処分・売却・相続ガイドで詳しく解説しています。
「土地を買い取ります」は詐欺を疑う——原野商法の二次被害
原野商法には続きがあります。かつての被害者やその相続人を狙って、再びお金をだまし取る「二次被害」が現在も続いており、国民生活センターには年間1,000件前後の相談が寄せられています。被害者の約9割は60歳以上で、平均被害額は数百万円に上る年もあります。
なぜ狙われるのか。当時の購入者リストが業者間で出回っているうえ、分譲地の登記簿から現在の所有者(相続人を含む)を調べられるためです。「子どもに負担を残したくない」「元気なうちに整理したい」という気持ちに、業者は正確につけ込んできます。
手口の3類型(国民生活センター公表資料より)
① 下取り型(最も被害額が大きい) 「あなたの土地を高値で買い取ります」と電話勧誘し、「節税対策」「手続き費用」などの名目で書類にサインさせます。後で契約書を確認すると、自分の原野を売ると同時に、より高額な別の原野を買わされる契約になっており、差額数百万円を支払わされます。支払い後、業者とは連絡が取れなくなります。
② サービス提供型 「買い手がいるので、売却の前に測量・整地・広告が必要」と言って、測量費・整地費・広告費など数十万〜百数十万円を先払いさせます。支払うと業者は消えます。まともな不動産取引で、売主が売却前に高額な費用を先払いさせられることはありません。
③ 管理費請求型 管理会社を名乗り、「あなたの土地を長年管理してきた費用」「分譲地の道路整備費」などの名目で、根拠のない管理費・滞納金を請求してきます。
二次被害を見分ける鉄則
向こうから来る「買い取り話」は信じない。 価値のない原野に、突然買い手が現れることは現実にはありません。
宅建業免許の有無で信用しない。 免許を持つ業者を装った・実際に持っていた事例が報告されています。
売却のためのお金を「先に」払わない。 名目が何であれ、先払い要求は打ち切りのサインです。
その場で書類にサインしない。 契約前に必ず家族に見せる。訪問販売での測量等の契約は8日以内ならクーリング・オフできる場合があります。
不審な勧誘を受けたら、消費者ホットライン「188」(最寄りの消費生活センターにつながります)へ相談してください。
なお、誠実な引き取り事業者は電話や訪問で勧誘しません。所有者の側から調べて、費用の内訳と登記の流れを書面で確認しながら進めるのが、安全に手放す唯一の順路です。
手放すときに確認すべきこと——引き取りサービスを使う場合
原野商法の分譲地は当社団が最も多くお引き取りしている土地の類型のひとつです。ご相談の際は、次の点をご確認ください。
費用の範囲が明確か(追加費用がないか)
所有権移転登記の完了までを業務に含むか(登記完了証の提示、完了後の支払い)
引き取り実績を公開しているか(当社団のお引き取り実績はこちら)
土地の場所が分からなくても問題ありません。権利証または毎年春に届く固定資産税の課税明細書(非課税・免税点未満で届かない場合は市町村の名寄帳)に記載された地番から、当社団が位置を特定し、無料調査をします。
よくある質問(FAQ)
Q. 北海道の原野です。遠方ですが手続きできますか?
A. 可能です。北海道の原野商法分譲地(釧路・別海・俱知安周辺など)は代表的なご相談類型で、現地に行かずに郵送等で完結できます。
Q. 販売した会社に連絡して引き取ってもらえますか?
A. 当時の販売会社の多くは既に倒産・解散しており、連絡は取れないのが実情です。仮に連絡が来た場合は、むしろ二次被害を疑ってください。
Q. 何十年も登記を放置していました。今からでも間に合いますか?
A. 間に合います。まず相続登記(義務化されています)を行い、その上で処分を進めます。
Q. 兄弟で共有名義になっています。
A. 共有者全員の同意があれば一括で、難しい場合は持分のご相談も可能です。
Q. 支払ったお金は取り戻せますか?
A. 当初の原野商法(数十年前の契約)は時効や業者の消滅により返金は極めて困難です。最近の二次被害については、クーリング・オフや取消しができる場合があるため、速やかに消費生活センター(188)や弁護士にご相談ください。
まとめ|「うまい話」ではなく「確実な出口」を
原野商法の土地は、市場で売れることはほぼありませんが、国庫帰属制度や引き取りサービスといった確実な出口があります。最も避けるべきは、①放置して相続登記義務違反や次世代への負担を積み上げること、②「買い取ります」という電話に乗って二次被害に遭うこと、の2つです。
