山林は相続土地国庫帰属制度で国に返せる?要件・費用・手続きから統計データまで徹底解説【2026年最新版】
- 一般社団法人日本不動産管財
- 2025年12月30日
- 読了時間: 22分
更新日:5 日前
「親から相続した山林があるけれど、遠方で管理できない」「固定資産税だけが毎年かかり続けて困っている」「売却しようにも買い手が見つからない」——このような悩みを抱えている方は少なくありません。
2023年4月27日にスタートした相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらえる画期的な制度です。山林も対象となっていますが、制度を利用するには厳格な要件を満たす必要があり、特に山林特有の問題で不承認となるケースも発生しています。
本記事では、法務省が公開している最新の統計データをもとに、山林における相続土地国庫帰属制度の要件、費用、手続きの流れ、そして制度が利用できない場合の対処法まで網羅的に解説します。
目次
10.まとめ
相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続または遺贈によって取得した土地の所有権を、一定の要件を満たすことで国庫に帰属させることができる制度です。正式名称は「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」といい、令和5年(2023年)4月27日から施行されています。
制度創設の背景
日本では少子高齢化や人口減少に伴い、相続しても利用する予定がない土地、いわゆる「負動産」が増加しています。特に以下のような問題が深刻化していました。
所有者不明土地の増加 相続が発生しても登記がされないまま放置される土地が増加し、公共事業や災害復興の妨げとなるケースが社会問題化しています。国土交通省の調査によれば、所有者不明土地は国土の約22%にも及ぶとされています。
山林・原野の管理放棄 特に山林は管理に専門的な知識と労力が必要であり、遠方に住む相続人にとっては管理が困難です。放置された山林は荒廃し、土砂災害や獣害の原因となることもあります。
原野商法被害地の処分困難 1970年代から80年代にかけて横行した原野商法により取得された土地も、相続によって次世代に引き継がれています。これらの土地は売却も寄付も困難であり、所有者にとって大きな負担となっています。
こうした問題を解決するために創設されたのが、相続土地国庫帰属制度です。
【最新統計】山林の申請状況と承認率
法務省が公開している統計データから、山林における制度の利用状況を見ていきましょう。
申請件数の推移
制度開始から約2年半が経過し、申請件数は着実に増加しています。
総申請件数:4,712件
地目別の内訳は以下のとおりです。
地目 | 申請件数 | 割合 |
田・畑 | 1,813件 | 38.5% |
宅地 | 1,646件 | 34.9% |
山林 | 735件 | 15.6% |
その他 | 518件 | 11.0% |
山林の申請は全体の約15%を占めており、田畑・宅地に次いで3番目に多い地目となっています。
帰属件数(国庫帰属が認められた件数)
総帰属件数:2,240件
種目別の内訳は以下のとおりです。
種目 | 帰属件数 | 割合 |
宅地 | 821件 | 36.7% |
農用地 | 725件 | 32.4% |
森林 | 137件 | 6.1% |
その他 | 557件 | 24.9% |
注目すべきは、山林の申請件数(735件)に対して、帰属件数(137件)は約18.6%にとどまっている点です。これは宅地(申請1,646件に対して帰属821件=約49.9%)や農用地と比較して明らかに低い数値です。
この差が生じる理由には、審査中の案件が多いことに加え、山林特有の問題で却下・不承認となるケースが多いことが挙げられます。
却下・不承認の理由
却下件数:75件 主な却下理由は以下のとおりです。
添付書類の不備:35件
現に通路の用に供されている土地:19件
境界が明らかでない土地:18件
承認申請の権限がない者による申請:7件
建物が存する土地:4件
不承認件数:74件 主な不承認理由は以下のとおりです。
土地の管理・処分を阻害する工作物、車両、樹木等が地上に存する:35件
国による追加の整備が必要な森林:32件
災害の危険により措置が必要な土地:10件
国が管理費用以外の金銭債務を負担する土地:6件
崖があり管理に過分な費用・労力を要する土地:6件
山林特有の不承認理由として「国による追加の整備が必要な森林」が32件あります。これは不承認理由全体の約43%を占める最多の理由であり、山林で制度を利用する際の大きなハードルとなっています。
山林で相続土地国庫帰属制度を利用するための要件
山林で相続土地国庫帰属制度を利用するためには、「申請権者の要件」と「土地の要件」の両方を満たす必要があります。
申請権者の要件
以下のすべてに該当する必要があります。
相続または遺贈により土地を取得した者であること 売買や贈与により取得した土地は対象外です。ただし、相続等により取得した共有持分がある場合は、共有者全員で共同申請することで制度を利用できます。
相続人であること 遺贈の場合でも、受遺者が相続人でなければ単独での申請はできません。ただし、相続人と共同で申請する場合は利用可能です。
重要なポイント
制度開始前(令和5年4月27日以前)に相続した土地も申請できます
相続から何十年経過していても申請可能です(相続放棄のような期限はありません)
原野商法により親が購入した土地を相続した場合も、制度の要件を満たせば申請できます
土地の要件(却下事由)
以下のいずれかに該当する土地は、申請自体が却下されます。
建物が存在する土地 建物がある場合は、まず建物を解体・撤去する必要があります。山小屋や作業小屋なども対象です。
担保権や使用収益権が設定されている土地 抵当権や地上権などが設定されている場合は、これらを抹消してからでなければ申請できません。
他人の利用が予定されている土地 通路として使用されている土地、墓地、境内地、水道用地などは対象外です。
土壌汚染されている土地 土壌汚染対策法に定める特定有害物質により汚染されている土地は申請できません。
境界が明らかでない土地・所有権について争いがある土地 これが山林において最も問題となる要件です。山林は広大で境界標が不明確になっていることが多く、隣接地との境界確認が困難なケースが少なくありません。
土地の要件(不承認事由)
申請が受理されても、審査の結果、以下に該当する場合は不承認となります。
一定の勾配・高さの崖があり、管理に過分な費用・労力がかかる土地 勾配が30度以上かつ高さが5メートル以上の崖がある土地で、崩壊防止のための措置が必要な場合は不承認となります。
土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地 放置された廃棄物、廃車、倒木、建築資材などが放置されている場合は、事前に撤去が必要です。
除去しなければ管理・処分ができない有体物が地下にある土地 産業廃棄物や建築廃材が埋設されている場合などが該当します。
隣接地との争訟によらなければ管理・処分ができない土地 通行権を巡るトラブルなど、隣接地所有者との紛争がある土地は不承認となります。
国による追加の整備が必要な森林 これが山林特有の最重要ポイントです。具体的には以下のような状態の森林が該当します。
森林経営に必要な作業道が未整備
樹木の密度が高すぎて間伐が必要
病虫害や獣害により適切な整備が必要
植林後の下刈りや枝打ちが行われておらず荒廃している
法務省の統計では、この「国による追加の整備が必要な森林」を理由とする不承認が32件あり、不承認理由の約43%を占めています。山林で制度を利用する際の最大のハードルといえます。
山林の負担金はいくらかかる?
相続土地国庫帰属制度を利用するには、審査手数料と負担金の2種類の費用がかかります。
審査手数料
1筆あたり14,000円(土地の面積に関係なく一律)
審査手数料は申請時に収入印紙で納付します。審査の結果、却下・不承認となった場合でも返還されませんので注意が必要です。
負担金(10年分の管理費相当額)
宅地や農地の多くは一律20万円ですが、森林(山林)は面積に応じて算定されます。これは森林の管理には樹木の管理や境界の維持など、面積に応じた費用がかかるためです。
森林の負担金算定式
面積区分 | 算定式 |
750㎡以下 | 面積(㎡)× 59円 + 210,000円 |
750㎡超 1,500㎡以下 | 面積(㎡)× 24円 + 237,500円 |
1,500㎡超 3,000㎡以下 | 面積(㎡)× 17円 + 248,000円 |
3,000㎡超 6,000㎡以下 | 面積(㎡)× 12円 + 263,000円 |
6,000㎡超 12,000㎡以下 | 面積(㎡)× 8円 + 287,000円 |
12,000㎡超 | 面積(㎡)× 6円 + 311,000円 |
具体的な計算例
例1:500㎡の山林の場合 500㎡ × 59円 + 210,000円 = 239,500円 ※1,000円未満切捨てで 239,000円
審査手数料と合わせた総費用:239,000円 + 14,000円 = 253,000円
例2:1,000㎡(約0.1ヘクタール)の山林の場合 1,000㎡ × 24円 + 237,500円 = 261,500円 ※1,000円未満切捨てで 261,000円
審査手数料と合わせた総費用:261,000円 + 14,000円 = 275,000円
例3:5,000㎡(約0.5ヘクタール)の山林の場合 5,000㎡ × 12円 + 263,000円 = 323,000円
審査手数料と合わせた総費用:323,000円 + 14,000円 = 337,000円
例4:10,000㎡(1ヘクタール)の山林の場合 10,000㎡ × 8円 + 287,000円 = 367,000円
審査手数料と合わせた総費用:367,000円 + 14,000円 = 381,000円
例5:50,000㎡(5ヘクタール)の山林の場合 50,000㎡ × 6円 + 311,000円 = 611,000円
審査手数料と合わせた総費用:611,000円 + 14,000円 = 625,000円
隣接地がある場合の特例(合算負担金制度)
隣接する2筆以上の土地がいずれも同じ種目(森林同士など)である場合、1つの土地とみなして負担金を算定できる特例があります。
例:隣接する2筆の山林(各3,000㎡)を申請する場合
通常計算(各筆ごと):
3,000㎡ × 17円 + 248,000円 = 299,000円 × 2筆 = 598,000円
審査手数料:14,000円 × 2筆 = 28,000円
合計:626,000円
特例適用(合算計算):
6,000㎡ × 12円 + 263,000円 = 335,000円
審査手数料:14,000円 × 2筆 = 28,000円
合計:363,000円
特例を適用することで、263,000円もの節約になります。隣接する山林をまとめて申請する場合は、必ずこの特例を活用しましょう。
山林の相続土地国庫帰属制度 手続きの流れ
山林で相続土地国庫帰属制度を利用する場合の具体的な手続きの流れを解説します。
ステップ1:事前相談(任意だが強く推奨)
まずは法務局(本局)で事前相談を行います。事前相談は対面・電話・ウェブ(令和6年10月15日から)で受け付けています。
相談窓口
土地が所在する都道府県の法務局(本局)
遠方の場合は、お近くの法務局(本局)でも相談可能
準備する書類
相続土地国庫帰属相談票(法務省ホームページからダウンロード可能)
土地の状況についてのチェックシート
登記事項証明書(登記簿謄本)
公図・地積測量図
固定資産税の課税明細書または名寄帳
土地の現地写真(可能な範囲で)
相続関係がわかる書類
相談のポイント 事前相談では、土地が制度の要件を満たしているかどうかの見込みを確認できます。ただし、相談での見解と実際の審査結果が異なる可能性があることには注意が必要です。
ステップ2:必要書類の準備
承認申請に必要な書類を準備します。
申請者が作成する書類
承認申請書
土地の位置・範囲を明らかにする図面
土地および隣接地との境界点を明らかにする写真
土地の形状を明らかにする写真
申請者の印鑑証明書
役所等で取得する書類
登記事項証明書
登記原因証明情報(相続関係を証する書類)
固定資産税評価証明書
公図・地積測量図
ステップ3:承認申請書の提出
準備した書類と審査手数料(1筆あたり14,000円分の収入印紙)を、土地が所在する法務局(本局)に提出します。
提出方法
窓口への持参
郵送(書留郵便を推奨)
注意点
支局・出張所では申請できません
共有地の場合は、共有者全員での共同申請が必要です
ステップ4:法務局による審査
法務局による審査が行われます。審査には半年から1年程度かかると見込まれています。
審査の内容
書面審査:申請書類の確認
実地調査:必要に応じて現地調査を実施
関係者への事情聴取:必要に応じて申請者や関係者から事情を聴取
審査中に求められる可能性のある対応
追加資料の提出
境界の明確化(境界標の設置など)
阻害物の撤去(廃棄物、倒木など)
森林の整備(過密な樹木の間伐など)
ステップ5:承認の通知と負担金の納付
審査の結果、承認された場合は負担金の通知と納入告知書が届きます。
納付期限 通知が届いた日の翌日から30日以内
納付方法 納入告知書を添えて、日本銀行(都市銀行、ゆうちょ銀行、地方銀行、信用金庫、農協など)で納付します。法務局での直接納付はできません。
重要な注意点 期限内に納付しない場合、承認が失効します。失効した場合は最初から申請をやり直す必要があります。
ステップ6:国庫帰属の完了
負担金を納付した時点で、土地の所有権が国に移転します。
登記手続き 国への所有権移転登記は国が行うため、申請者側での手続きは不要です。
帰属後の管理 国庫に帰属した森林は、農林水産省(林野庁)が管理します。
山林で相続土地国庫帰属制度を利用する際の注意点
境界問題への対応が必須
山林における最大の課題は境界の明確化です。
山林は広大で見通しが悪く、境界標が朽ちたり移動したりしていることが珍しくありません。また、登記上の面積と実際の面積が大きく異なるケースも多くあります。
境界確認のポイント
隣接地所有者との立会いによる境界確認
境界標(杭やプレート)の設置
境界確認書の作成
境界がわかる写真の撮影
境界が不明確な場合、申請は却下されます。統計上も「境界が明らかでない土地」を理由とする却下が18件あり、却下理由の約24%を占めています。
森林の整備状態を事前に確認
「国による追加の整備が必要な森林」は不承認となります。
不承認となりやすい状態
間伐が行われておらず樹木が密集している
下刈りがされておらず荒廃している
病虫害被害が発生している
作業道がなく管理が困難
事前に対応すべきこと
現地調査による森林の状態確認
必要に応じて間伐・下刈りの実施
廃棄物や放置車両がある場合は撤去
倒木の処理
これらの整備費用は自己負担となるため、制度利用の費用対効果を事前に検討することが重要です。
審査期間と費用の問題
審査期間 審査には半年から1年程度かかります。急いで土地を手放したい場合には不向きです。
費用回収不可のリスク 審査手数料(14,000円/筆)は、却下・不承認の場合でも返還されません。森林の整備費用なども含めると、制度を利用しようとして多額の費用をかけたにもかかわらず、結局承認されなかったというリスクがあります。
相続土地国庫帰属制度を利用するメリット・デメリット
メリット
将来にわたる管理負担からの解放 一度国に帰属すれば、その後の管理費用や固定資産税の負担がなくなります。
確実な引き取り先 国が引き取り先となるため、売却先を探す必要がなく、引き取り後のトラブルも考えられません。
相続人への負担軽減 次世代に「負動産」を残さずに済み、相続トラブルの防止にもなります。
原野商法被害地も対象 要件を満たせば、過去に原野商法で取得された土地も申請できます。
デメリット
費用負担が必要 審査手数料と負担金で、最低でも20万円以上の費用がかかります。山林は面積に応じて負担金が増加するため、広い山林ほど費用が高くなります。
厳しい要件 境界の明確化や森林の整備状態など、要件のハードルが高く、特に山林は不承認となる可能性が相対的に高いです。
審査に時間がかかる 半年から1年程度の審査期間が必要です。
却下・不承認でも費用は戻らない 審査手数料や、要件を満たすための整備費用は、申請が通らなくても返還されません。
制度が利用できない場合の対処法
相続土地国庫帰属制度は、すべての山林に使えるわけではありません。制度を利用できない場合や、利用のハードルが高い場合の対処法を解説します。
民間の山林引き取りサービス
相続土地国庫帰属制度の要件を満たさない山林でも、民間の引き取りサービスを利用できる場合があります。
民間サービスのメリット
境界が不明確でも引き取り可能な場合がある
審査期間が短い(1週間〜1か月程度)
建物がある土地も対応可能な場合がある
共有者全員の同意が得られなくても対応可能な場合がある
注意すべき点
費用が発生する(物件により異なる)
業者選びは慎重に(悪質な業者も存在)
契約内容をよく確認する
隣接地所有者への譲渡
山林の隣接地所有者が、管理の都合から土地を引き受けてくれるケースがあります。
実際に、相続土地国庫帰属制度への申請後に「隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった」ことを理由に申請を取り下げたケースも報告されています。
自治体への寄付
一部の自治体では、土地の寄付を受け付けている場合があります。ただし、多くの自治体は財政上の理由から寄付を受け付けていないのが現状です。
森林組合への相談
地元の森林組合に相談することで、森林の有効活用や売却先の紹介を受けられる可能性があります。
山林と相続土地国庫帰属制度に関するよくある質問(Q&A)
山林で相続土地国庫帰属制度を利用する際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。
Q1. 相続登記をしていない山林でも申請できますか?
A. いいえ、相続登記が完了していない土地は申請できません。
相続土地国庫帰属制度を利用するには、まず相続登記を完了させる必要があります。なお、2024年4月1日から相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料が科される可能性があります。
ただし、制度の承認後は国が所有権移転登記を行うため、申請者側での手続きは不要です。
Q2. 境界がわからない山林は申請できますか?
A. 境界が明らかでない土地は申請が却下されます。
法務省の統計によれば、「境界が明らかでない土地」を理由とする却下は18件あり、却下理由全体の約24%を占めています。
山林は境界標が朽ちたり移動したりしていることが多いため、申請前に以下の対応が必要です。
隣接地所有者との立会いによる境界確認
境界標(杭やプレート)の設置
境界がわかる写真の撮影
境界確認に多額の費用がかかる場合は、民間の引き取りサービスを検討するのも一つの選択肢です。
Q3. 原野商法で親が買った土地を相続しました。この制度は使えますか?
A. はい、制度の要件を満たしていれば申請可能です。
1970〜80年代に被害が多発した原野商法によって取得された土地であっても、相続によって取得し、制度の要件を満たしていれば承認申請が可能です。
ただし、原野商法で購入された土地は以下のような問題を抱えていることが多く、要件を満たさないケースも少なくありません。
現地の場所が特定できない
境界が不明確
登記上の地目と実態が異なる
このような場合は、まず法務局での事前相談で要件を満たす見込みがあるか確認することをお勧めします。
Q4. 共有名義の山林はどうすればいいですか?
A. 共有者全員で共同申請する必要があります。
山林が共有名義の場合、共有者全員が共同で申請を行う必要があります。一人でも同意しない共有者がいる場合は、制度を利用できません。
ただし、共有者の中に売買などで持分を取得した人(相続以外で取得した人)がいても、相続で取得した共有者がいれば、全員で共同申請することで制度を利用できます。
共有者の一部と連絡が取れない場合や、同意を得られない場合は、民間の引き取りサービスなど他の選択肢を検討する必要があります。
Q5. 審査にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 標準処理期間は8か月で、半年から1年程度を見込んでください。
法務省は審査期間について「半年から1年程度」としています。実際の審査期間は土地の状況によって異なり、以下のような場合は長期化する傾向があります。
現地調査が必要な場合
追加資料の提出を求められた場合
樹木の伐採など追加対応を求められた場合
早い案件では3か月程度で審査が完了することもありますが、急いで土地を手放したい場合は民間サービスの方が適している場合があります。
Q6. 負担金は分割払いできますか?
A. いいえ、一括払いのみです。
負担金は、承認通知が届いた日の翌日から30日以内に全額を一括で納付する必要があります。分割払いの制度はありません。
期限内に納付しない場合は承認が失効し、再度申請からやり直す必要があります。
Q7. 樹木がある山林も引き取ってもらえますか?
A. はい、樹木があっても引き取り可能ですが、状態によっては不承認となる場合があります。
通常の樹木がある山林は制度の対象となります。ただし、以下のような状態の場合は「国による追加の整備が必要な森林」として不承認となる可能性があります。
樹木が密集しすぎており間伐が必要
病虫害被害が発生している
倒木が放置されている
下刈りがされておらず荒廃している
樹木が越境している
統計上、「国による追加の整備が必要な森林」を理由とする不承認は32件あり、不承認理由全体の約43%を占めています。事前に現地の状態を確認し、必要に応じて整備を行うことをお勧めします。
Q8. 山林の正確な場所がわかりません。申請できますか?
A. 場所が特定できない土地は申請が困難です。
申請には土地の位置・範囲を明らかにする図面や、境界点を示す写真の提出が必要です。山林の正確な場所がわからない場合は、まず以下の方法で場所を特定する必要があります。
登記事項証明書で地番を確認
公図や地積測量図で位置を確認
市区町村役場で森林簿・森林計画図を取得
現地調査を実施
場所の特定が困難な場合は、法務局での事前相談や専門家への相談をお勧めします。
Q9. 固定資産税がかかっていない山林も対象ですか?
A. はい、固定資産税が非課税でも申請可能です。
山林の中には評価額が低く、固定資産税が課税されていないものもあります。このような土地でも、制度の要件を満たしていれば申請可能です。
ただし、固定資産税の課税明細書がない場合は、名寄帳(市区町村が管理する固定資産の一覧)を取得して土地の情報を確認する必要があります。
Q10. 相続放棄との違いは何ですか?
A. 相続放棄は全財産が対象で期限がありますが、国庫帰属制度は特定の土地のみを対象に期限なく利用できます。
項目 | 相続放棄 | 相続土地国庫帰属制度 |
対象 | 相続財産すべて | 特定の土地のみ |
期限 | 相続を知った日から3か月以内 | 期限なし |
費用 | 数千円程度 | 審査手数料14,000円+負担金(山林は面積に応じて算定) |
他の財産 | 預貯金等も放棄 | 他の財産は相続可能 |
相続放棄は「全部か無か」の選択であり、不要な山林だけを放棄することはできません。一方、相続土地国庫帰属制度は特定の土地のみを対象にでき、相続から何十年経っていても利用可能です。
Q11. 制度開始前(2023年4月27日より前)に相続した山林も対象ですか?
A. はい、制度開始前に相続した土地も申請できます。
相続土地国庫帰属制度は、制度開始前に相続した土地にも適用されます。相続から何十年経過していても、要件を満たしていれば申請可能です。
Q12. 複数の山林をまとめて申請できますか?
A. はい、複数の土地をまとめて申請できます。また、隣接する山林は負担金を合算できる特例があります。
複数の山林を所有している場合、それぞれについて申請することが可能です。一部の土地だけを申請することもできます。
さらに、隣接する2筆以上の土地がいずれも同じ種目(森林同士など)である場合は、「合算負担金制度」を利用できます。この特例を適用すると、2筆以上の土地を1筆分の負担金で国庫に帰属させることが可能になり、大幅な費用節約になります。
Q13. 申請が却下・不承認になった場合、再申請できますか?
A. はい、要件を満たすよう対応した上で再申請が可能です。
却下・不承認となった場合でも、その原因を解消すれば再申請することができます。例えば以下のような対応が考えられます。
境界不明で却下された場合 → 境界を確定させてから再申請
樹木等の阻害物で不承認となった場合 → 撤去・整備してから再申請
ただし、審査手数料(14,000円/筆)は再申請時にも必要となり、以前の申請で納付した手数料は返還されません。
Q14. 山林が遠方にあり現地に行けません。申請できますか?
A. 申請自体は可能ですが、境界確認や現地写真の撮影は必要です。
承認申請書の提出は郵送でも可能であり、事前相談もお近くの法務局(本局)で受けることができます。
ただし、申請には以下の書類が必要であり、現地の状況確認が求められます。
土地の位置・範囲を明らかにする図面
境界点を明らかにする写真
土地の形状を明らかにする写真
遠方の場合は、現地の土地家屋調査士や司法書士に依頼して境界確認や写真撮影を代行してもらうことも検討してください。
Q15. 国庫帰属後、土地はどのように管理されますか?
A. 森林は農林水産省(林野庁)が管理します。
国庫に帰属した土地は、その種目に応じて以下の省庁が管理します。
森林(山林)→ 農林水産省(林野庁)
農用地 → 農林水産省
その他(宅地等)→ 財務省(財務局)
帰属後は国の責任で適切に管理されるため、元の所有者に管理責任が及ぶことはありません。これは民間への売却・譲渡と比較した場合の大きなメリットです。
まとめ:山林で相続土地国庫帰属制度を検討する際のポイント
相続土地国庫帰属制度は、管理に困る山林を合法的に手放すことができる選択肢の一つです。ただし、山林特有の問題により、宅地や農地と比較して利用のハードルが高いのが現状です。
制度利用を検討すべきケース
境界が明確で、隣接地との争いがない
森林の整備状態が良好
建物や廃棄物などの阻害物がない
時間的余裕がある
他の選択肢を検討すべきケース
境界が不明確で、確認に多額の費用がかかる
森林が荒廃しており、整備に多額の費用がかかる
複数の共有者がおり、全員の同意を得ることが困難
急いで土地を手放したい
最新の統計データによれば、山林の帰属率は申請件数の約18.6%にとどまっており、「国による追加の整備が必要な森林」を理由とする不承認が多発しています。
制度の利用を検討する際は、まず法務局での事前相談を活用し、要件を満たす見込みがあるかどうかを確認することをお勧めします。
不要な山林のご相談は日本不動産管財へ
当社団(一般社団法人日本不動産管財)では、相続土地国庫帰属制度が利用できないケースを含め、処分困難な不動産の総合的なサポートを行っています。
こんな方はぜひご相談ください:
国庫帰属制度が使えるか判断できない
相続した山林を手放したい
管理責任から解放されたい
複数の処分方法を比較検討したい
子どもに負動産を残したくない
相談は無料です。 まずはお気軽にお問い合わせください。
参考資料
法務省「相続土地国庫帰属制度について」
法務省「相続土地国庫帰属制度の統計」(令和7年11月30日現在)
法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」
政府広報オンライン「相続した土地を手放したいときの『相続土地国庫帰属制度』」
※本記事の内容は2025年12月時点の情報に基づいています。制度の詳細や要件は変更される可能性がありますので、最新情報は法務省ホームページまたは管轄法務局でご確認ください。
