隣地の所有者に土地を売却する方法|山林・原野・別荘地の交渉と手続き

更新日:10月2日
「売れない土地を処分したいけど、買い手が見つからない…」 「隣の人なら買ってくれるかもしれないけど、どうやって交渉すればいいの?」
相続した山林や原野、使わなくなった別荘地など、売却が難しい土地をお持ちの方にとって、隣地の所有者への売却は有力な処分方法の一つです。
古くから「隣の土地は借金してでも買え」という格言があるように、隣接する土地は隣人にとって特別な価値があります。一般市場では買い手がつかない土地でも、隣地所有者にとっては敷地拡大や境界整理などのメリットがあるため、取引が成立する可能性があるのです。
本記事では、山林・原野・別荘地を隣地所有者へ売却する際の進め方を、所有者の確認、価格交渉、契約・登記の順に説明します。
隣地の所有者に土地を売却するとは
隣地の所有者への売却とは、自分が所有する土地を、その土地に隣接する土地の所有者に買い取ってもらう方法です。
通常の不動産売却では、不動産会社に仲介を依頼し、広く買主を募集します。しかし、山林や原野、郊外の別荘地など需要が極めて低い土地では、何年経っても買い手が現れないことも珍しくありません。
そのような場合に、隣接する土地の所有者に直接打診するという方法が有効になります。
隣地所有者に売却するメリット
売主側のメリット
隣地の所有者に土地を売却することで、売主には以下のようなメリットがあります。
買い手を探す手間と時間を大幅に削減できる
通常の売却活動では、不動産会社への査定依頼、物件情報の公開、内覧対応など、多くの手間と時間がかかります。人気のないエリアでは、買い手が現れるまで数年かかることも珍しくありません。
隣地所有者への売却では交渉相手を絞れます。ただし、取得の希望や資金、管理の負担が合わなければ成立せず、必ず短期間で売れるわけではありません。
一般市場で売れない土地でも売却できる可能性がある
山林、原野、別荘地など、一般的な需要がほとんどない土地であっても、隣人にとっては価値がある場合があります。自分の土地と一体化できること自体に価値があるからです。
境界確定などの費用を抑えられる場合がある
隣人との売買でも、双方が把握している範囲と資料を確認します。測量を行わずに売買できる場合もありますが、分筆の要否や境界の争い、買主の条件によって必要な調査は異なります。測量費等の負担は契約前に協議しましょう。
現況のまま売却できる場合がある
古家付きの土地や、草木が生い茂った山林でも、隣人であれば現況のまま引き取ってくれる可能性があります。解体費用や整地費用を節約できる点は大きなメリットです。
買主(隣地所有者)側のメリット
隣地を購入することは、買主にとっても多くのメリットがあります。だからこそ、「隣の土地は借金してでも買え」という格言が生まれたのです。
敷地面積の拡大
隣地を取得することで、駐車場や庭の拡張などを検討できる場合があります。増築や用途変更が可能かは、接道・用途地域・森林や農地の規制等を別に確認します。
土地の資産価値向上
狭小地や不整形地でも、隣地と合わせることで整った形状になり、利用しやすくなる場合があります。接道などの条件が改善するかは、建築担当窓口で事前に確認しましょう。
境界・越境問題を整理できる場合がある
同じ人が隣接地を所有すれば、双方の利用関係を整理しやすくなる場合があります。ただし、購入しただけで登記上の筆界が変わるわけではなく、外周の隣地との争いや第三者の権利も残ることがあります。
将来の隣人トラブルの回避
自分で管理できる範囲が広がり、隣地の利用状況を把握しやすくなります。ただし、草木の管理や不法投棄の対策には費用と手間がかかり、取得だけで問題がなくなるわけではありません。
土地の種類別|隣地売却の特徴と注意点
土地の種類によって、隣地売却の進め方や注意点は大きく異なります。ここでは、山林、原野、別荘地、一般の宅地それぞれについて詳しく解説します。
山林を隣地所有者に売却する場合
山林は一般的な不動産市場での売却が最も困難な土地の一つです。しかし、隣接する山林所有者や林業従事者にとっては、取得する価値がある場合があります。
山林の隣地売却のメリット
隣接する山林所有者にとって、あなたの山林を取得するメリットは以下の通りです。
所有する山林の面積が拡大し、効率的な森林経営が可能になる
アクセス道路の確保や作業効率の向上につながる
隣接する部分の境界管理を一体で行いやすくなる場合がある(外周の境界は残る)
将来の伐採時にまとめて作業できる
山林売却時の法的手続き
山林の売買では、対象森林や面積、予定する利用によって、登記とは別の届出・許可も確認します。
森林法に基づく届出(森林の土地の所有者届出)
地域森林計画の対象森林の土地を取得した人は、原則として所有者となった日から90日以内に市町村長へ届け出ます。国土利用計画法の土地売買契約の届出をした場合などは対象外です。無届・虚偽の届出は10万円以下の過料の対象となり得ます。2026年4月から国籍等の記載事項が追加されているため、最新の様式を確認してください。
届出に必要な書類は以下の通りです。
森林の土地の所有者届出書
登記事項証明書(または売買契約書の写し)
土地の位置を示す図面
立木の取り扱い
立木は土地と所有者が異なる場合もあります。登記や契約等で権利を確認し、売買に含める立木と第三者の権利の有無を契約書へ明記しましょう。取得後に伐採する場合の届出・許可は、土地の取得届出とは別です。
立木の価値は、樹種・品質・量に加え、伐採と搬出の費用、林道へのアクセス等を含めて検討します。木があるだけで売却益が出るとは限らないため、林業事業者等に確認しましょう。
山林の評価と価格設定
山林の価格は、以下の要素によって大きく異なります。
所在地(アクセスの良し悪し)
面積
地形(平坦か急傾斜か)
樹種と樹齢
林道の有無
山林の固定資産税評価額は売買価格そのものではありません。現地条件と周辺の取引、立木の権利と採算、買主の利用目的を合わせて検討します。地域や条件を示さない全国一律の単価は、価格交渉の根拠にはできません。
原野を隣地所有者に売却する場合
原野とは、耕作の方法によらないで雑草やかん木類が生育する土地を指します。1970年代から1980年代にかけて流行した「原野商法」により、多くの方が価値のない原野を高額で購入させられました。現在、これらの土地を相続した子世代が処分に苦慮しています。
原野の隣地売却の現実
原野は、アクセスやインフラ、利用規制などによって買い手が限られることがあります。ただし、「原野」という地目だけで建築不可や価値ゼロとは判断できません。現況と規制を確認して売却先を検討します。
ただし、隣接する土地の所有者が以下のような目的で取得を希望する場合があります。
境界の整理・統合
将来的な土地活用の可能性確保
放置された隣地からのトラブル(草木の侵入、不法投棄など)の回避
原野売却時の注意点
所在地の確認
土地の所在が分からない場合は、登記事項証明書や公図、地積測量図などを照合します。公図だけでは現地の正確な位置・境界を特定できないこともあります。不明な場合は法務局や土地家屋調査士へ相談し、現地確認は安全と立入権限を確かめて行いましょう。
境界の問題
境界標が見つからない場合でも、直ちに境界が存在しないとは限りません。資料と隣地所有者の認識を照合し、売買範囲と不明点を共有します。測量や境界確定が必要かは、分筆の要否、紛争、買主の条件に応じて判断します。
原野の価格・費用の考え方
原野の売却価格は、現況、利用規制、買主の目的などで異なります。固定資産税評価額と市場で成立する価格を区別し、代金だけでなく登記等の費用負担も話し合います。例えば次のような条件を検討できます。
周辺取引や現地条件を参考に合意した価格での売却
低額での売却と、登記等の費用負担の別途協議
無償譲渡(登記等の費用の負担者は当事者で協議)
持参金付き譲渡(売主が費用を負担して引き取ってもらう)
二次被害への注意
原野の所有者に「高く売れる」などと持ちかけ、測量・整備等の費用や別の土地の購入を求める二次被害に注意してください。すぐに契約や送金をせず、勧誘内容を確かめ、不審な場合は消費生活センター等へ相談しましょう。
別荘地を隣地所有者に売却する場合
別荘地は、バブル期に高額で購入されたものの、現在は資産価値が大幅に下落し、売却困難になっているケースが多く見られます。
別荘地特有の問題
別荘地には、他の土地にはない特有の問題があります。
管理組合と管理費の問題
別荘地では、管理契約や規約等に基づく管理費が問題になります。支払義務の根拠、滞納分、解約・名義変更、買主への承継手続きを確認してください。所有しているだけで必ず同じ義務が生じたり、売却で契約上の負担が自動的に消えたりするとは限りません。
管理費は管理内容や区画等によって異なります。最新の請求書と契約で年額や改定条件を確認し、取得後の継続負担も買主へ伝えましょう。
別荘地の隣人への売却アプローチ
別荘地内の隣地所有者に売却する場合、以下のようなメリットを提示できます。
隣接区画を取得することで、より広い敷地として活用できる
隣接地を自分で管理し、景観や草木などに対応しやすくなる場合がある
将来、まとめて売却する際に有利になる可能性がある
ただし、別荘地の場合、隣地所有者も同様に管理費負担に苦しんでいる可能性があります。むしろ、別荘を積極的に活用している所有者や、管理会社・管理組合への売却・譲渡を検討した方が現実的な場合もあります。
別荘地の価格設定
別荘地の価格は、立地や管理状況によって大きく異なります。
同じ別荘地でも、区画の位置、接道、管理費、建築条件などで需要が異なります。過去の購入価格や地域名だけで売却価格を決めず、近隣の取引と買主の意向を確認します。
価格を検討する際は、次の資料を用途に応じて使い分けます。評価額や管理費の年額を、そのまま売買価格と考えないようにしましょう。
周辺の取引事例(国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で確認可能)
固定資産税評価額
年間管理費と、取得後に見込まれる維持費
場合によっては、無償譲渡や持参金付き譲渡(買主の登記費用や数年分の管理費を売主が負担)も選択肢となります。
一般の宅地を隣地所有者に売却する場合
相続した実家の土地や、利用予定のない宅地を隣人に売却するケースも多くあります。一般の宅地であれば、山林や原野に比べて売却のハードルは低くなります。
宅地の隣地売却が有効なケース
以下のような土地は、隣人への売却が特に有効です。
再建築不可物件
都市計画区域・準都市計画区域では、建物の敷地は原則として建築基準法上の道路に2m以上接する必要があります。幅員4m未満の2項道路や43条2項の認定・許可等もあるため、幅だけで再建築の可否は決まりません。隣地と一体利用すると条件を満たせる場合もありますが、自治体の建築担当窓口で確認してから交渉しましょう。
不整形地・狭小地
三角形の土地や、極端に狭い土地は、単独では活用が難しいものの、隣地と合わせることで整った形状になり、利用価値が向上します。
旗竿地
道路に接する間口が狭く、奥に広がる形状の土地(旗竿地)も、隣地と合わせることで使いやすくなる可能性があります。
私道に面した土地
私道に面する土地では、通行・掘削の権利や承諾、持分、維持費等を確認します。隣人が買う場合も、これらの条件が自動的に解決するわけではありません。
隣地所有者を特定する方法
隣地の所有者に売却を打診するためには、まず隣人が誰であるかを特定する必要があります。
登記簿謄本(登記事項証明書)の取得
法務局での取得
まず、法務局で隣地の登記事項証明書を取得し、登記名義人の氏名・住所を確認します。ただし、相続や住所変更等が未反映の場合もあり、登記だけで現在の所有者や連絡先が確定するとは限りません。
取得に必要な情報は以下の通りです。
土地の所在(○○市○○町)
地番
地番は住所(住居表示)とは異なる場合があります。地番が分からない場合は、法務局の窓口で公図(地図)を閲覧し、確認することができます。
登記事項証明書の手数料は、書面請求600円、オンライン請求は郵送受取520円・窓口受取490円です(2026年9月確認、50枚以内の場合)。オンラインで請求しても、証明書そのものをPDFで受け取る方式ではありません。
登記情報提供サービスの利用
一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」を利用すれば、インターネットで登記情報を取得できます。
費用:全部事項の情報は1件330円(2026年4月改定、同年9月確認)。登記事項証明書とは異なり、登記官の証明文はありません。
事前の利用登録をしない一時利用もあります。登記情報の取得時間は平日8時30分~23時、土日祝日8時30分~18時です。地図・図面は平日8時30分~21時で、年末年始やメンテナンスによる休止もあるため、利用前に公式案内を確認してください。
山林の場合の所有者特定
山林の場合、登記情報に加えて以下の方法も活用できます。
森林簿・森林計画図の活用
森林簿・森林計画図は森林の資源や計画の資料であり、所有権や正確な境界を証明するものではありません。公開資料には所有者情報が含まれない場合もあります。都道府県の林務担当課や、市町村が管理する林地台帳の窓口に、利用できる資料と条件を確認しましょう。
ただし、個人情報保護の観点から、情報提供に制限がある場合もあります。
森林組合への相談
地域の森林組合に、隣地所有者への連絡を取り次げるか相談できる場合があります。ただし、所有者情報の提供や売買の仲介に対応できるとは限らないため、業務範囲を確認してください。
固定資産税課税台帳の閲覧
固定資産税の課税台帳等は、納税義務者やその代理人、一定の権利を持つ人など、請求資格と対象範囲が定められています。隣地の購入を検討しているだけで自由に閲覧できる資料ではありません。自治体で資格と必要書類を確認してください。
隣地所有者を調べる目的での閲覧は認められない場合が多いため、登記簿謄本の取得を基本としてください。
所有者が不明な場合
登記簿上の所有者が死亡していたり、住所が古くなっていたりして、連絡先が分からない場合があります。
この場合、以下の対応が考えられます。
登記簿上の住所に手紙を送付し、転送されることを期待する
相続人調査について司法書士・弁護士等へ相談する(戸籍等の取得には法令上の請求資格・正当な理由が必要)
所有者不明土地管理制度等について、申立ての資格・必要性・費用を弁護士等へ確認する(売却の打診だけで利用できるとは限らない)
所有者の特定が困難な場合は、専門家(司法書士、弁護士)への相談をお勧めします。
隣地所有者へのアプローチ方法
隣地の所有者が特定できたら、いよいよ売却の打診を行います。
最初のコンタクト
面識がある場合
日頃から顔見知りの隣人であれば、直接会って話をするのが自然です。ただし、最初から具体的な金額の話をするのは避けましょう。
まずは「土地の処分を考えている」「もし興味があれば優先的にお声がけしたい」といった形で、相手の反応を探ることが大切です。
面識がない場合
登記簿で調べた住所に手紙を送る方法が一般的です。
手紙には以下の内容を含めると良いでしょう。
自己紹介(隣接する土地の所有者であること)
土地の処分を検討していること
もし興味があれば話を聞いてほしいこと
連絡先(電話番号、メールアドレスなど)
いきなり「売りたい」と書くのではなく、「ご相談したい」というスタンスで書くことで、相手も受け入れやすくなります。
興味を示された場合の対応
相手が興味を示したら、次のステップに進みます。
現地確認の実施
可能であれば、一緒に現地を確認することをお勧めします。特に山林や原野では、実際の状況を見てもらうことで、後のトラブルを防ぐことができます。
条件のすり合わせ
以下の点について、相手の意向を確認します。
購入の意思の強さ
希望する価格帯
希望する取引時期
建物がある場合の取り扱い(現況渡しか解体後か)
境界確定の要否
専門家の関与の検討
個人間での売買も可能ですが、トラブルを防ぐためには、不動産会社や司法書士などの専門家に関与してもらうことをお勧めします。
売却価格の考え方
隣地売却における価格設定は、一般的な不動産売却とは異なる考え方が必要です。
価格の参考指標
固定資産税評価額
固定資産税評価額は課税明細書等で確認できます。公示価格の7割を目途とする説明は宅地の評価の目安で、山林や原野へ一律には当てはまりません。売買価格とは目的の異なる評価額です。
相続税路線価
相続税路線価は国税庁の路線価図で確認します。宅地の路線価等は地価公示価格等の8割を目途とする税務上の評価基準で、実際の売買価格を保証するものではありません。
路線価がない地域や山林・原野は、地目や地域に応じた評価倍率等を確認します。登記上の地目だけで評価方法が決まるとは限りません。
公示価格・基準地価
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、周辺の公示価格や取引事例を確認できます。
周辺の取引事例
同じく「不動産情報ライブラリ」で、過去の取引事例を確認できます。ただし、山林や原野の取引事例は少なく、参考にならない場合も多いです。
土地種別ごとの価格確認ポイント
山林
立地や樹種によって大きく異なる
固定資産税評価額と、現地条件に基づく売買価格を区別する
立木の採算、接道や搬出条件、買主の利用目的を確認する
原野
原野という地目だけで市場価値ゼロとは判断しない
買主の用途と条件によって、売却・無償譲渡・有償引取りを比較する
登記等の必要費用を確認し、負担者を協議する
別荘地
立地によって大きく異なる
近隣の取引と、区画ごとの利用条件を確認する
売却代金と、登記・管理契約の清算等の費用を分けて比較する
年間管理費の負担を考慮した価格設定が必要
一般の宅地
周辺の取引事例を参考に設定
隣人への売却では相場より高くなることもある
接道等の条件改善を価格へ反映する場合は、実現できるか事前に確認する
価格交渉のポイント
最初から具体的な金額を提示しない
最初に金額を提示すると、それが基準となってしまいます。まずは相手の希望を聞き、それを踏まえて価格を検討しましょう。
相手のメリットを強調する
敷地の一体利用など、確認できた利点を具体的に伝えます。境界に関する問題の解消や資産価値の上昇を保証せず、費用や規制などの不利な条件も共有しましょう。
柔軟な姿勢を示す
「処分できればいい」「金額よりも確実に引き取ってもらいたい」という姿勢であれば、その旨を伝えることで交渉がスムーズに進む場合があります。
契約から引き渡しまでの流れ
隣人との間で売買条件が合意できたら、正式な契約手続きに進みます。
売買契約の締結
売買契約書の作成
個人間売買の場合でも、必ず書面で売買契約書を作成してください。契約書には以下の事項を記載します。
売主・買主の氏名住所
対象物件の表示(所在、地番、地目、地積)
売買代金
支払方法・支払時期
引き渡し時期
所有権移転登記の手続き
公租公課(固定資産税等)の精算方法
契約不適合責任の範囲・期間と、既知の不具合等の告知
その他特約事項
印紙税
紙で作成する不動産売買契約書には、記載金額等に応じて印紙税がかかります。下表は2027年3月31日までに作成する契約書の軽減措置を反映した主な金額帯です。電子契約の電磁的記録自体には印紙税はかかりません。
契約金額 | 印紙税額 |
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円超50万円以下 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
決済・引き渡し
代金の支払い
売買代金の支払いと所有権移転登記の手続きは、同じ日に行うのが一般的です。高額な取引の場合は、銀行振込を利用し、着金確認後に登記書類を交付する形をとります。
少額の取引であれば、現金での授受も可能です。いずれの場合も、領収書を作成・交付してください。
所有権移転登記
所有権移転登記は司法書士へ依頼するほか、当事者が申請することもできます。以下は主な書類の例で、登記原因証明情報や委任状、住所・氏名変更に関する書類などが別に必要となる場合があります。法務局の案内と個別の権利関係を確認してください。
売主側:
登記済権利証(または登記識別情報)
印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)
固定資産評価証明書
本人確認書類
買主側:
住民票
本人確認書類
登録免許税
所有権移転登記には登録免許税がかかります。税率は以下の通りです。
売買による土地の移転:原則、固定資産課税台帳の価格を基礎に2%。2029年3月31日までに受ける登記は1.5%に軽減
贈与による土地の移転:原則、固定資産課税台帳の価格を基礎に2%。登録価格がない場合は法務局へ確認
登録免許税の負担者は、契約で決めます。
山林売買の場合の追加手続き
地域森林計画の対象森林では、所有者となった日から原則90日以内の届出が必要です。国土利用計画法による届出済み等の例外を含め、対象・様式を市町村で確認します。伐採・開発を行う場合の手続きも別に確認してください。
隣地売却の注意点
個人間取引のリスク
隣人との個人間売買は、不動産会社を通さない分、仲介手数料を節約できます。しかし、以下のリスクがあることを認識しておく必要があります。
契約書の不備によるトラブル
専門知識がないまま契約書を作成すると、重要な事項が抜け落ちたり、曖昧な記載となったりして、後日トラブルになる可能性があります。
境界問題
売買後に境界を巡る紛争が発生する場合があります。可能な限り、売買前に境界を確認しておくことをお勧めします。
契約不適合責任
売却した土地に、後から欠陥(土壌汚染、地中埋設物など)が見つかった場合、売主が責任を問われる可能性があります。契約書で責任の範囲を明確にしておくことが重要です。
専門家の活用
個人間取引のリスクを軽減するために、以下の専門家の活用を検討してください。
司法書士
所有権移転登記の手続きを代行してもらえます。また、売買契約書のチェックや作成も依頼できる場合があります。
不動産会社
仲介手数料は発生しますが、契約書作成、重要事項説明、登記手続きの手配など、売買に関する一連の業務を任せることができます。
仲介手数料の原則上限は価格帯ごとに計算し、売買価格(税抜)が400万円を超える場合は「価格×3%+6万円+消費税」で求められます。800万円以下の宅地建物には、媒介費用を勘案して一方の依頼者から税込33万円を上限とする特例があります。特例では媒介契約時の説明・合意が必要で、低額取引で必ず33万円になるわけではありません。なお、宅地建物取引業法の「宅地」に当たるかは、登記の地目だけでなく、建物の敷地に使う目的か、用途地域内の土地か(道路・公園・河川等を除く)などで判断されます。対象外となる山林・原野の取引では、報酬は契約で確認しましょう。
土地家屋調査士
境界の調査や分筆登記等が必要な場合に依頼します。資料、面積・地形、立会い人数、紛争の有無等で作業と費用が変わるため、必要な業務範囲を確認しましょう。
税金の注意点
売主にかかる税金
土地を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所得税・住民税がかかります。
譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用
以下は個人の土地・建物の譲渡について、特例を適用しない基本税率です。所有期間は売却した年の1月1日で判定し、相続・贈与による取得は原則として前所有者の取得時期を引き継ぎます。税率には復興特別所得税を含みます。立木の売却は山林所得等として別の確認が必要です。
短期譲渡所得(所有期間5年以下): 39.63%(所得税30.63%、住民税9%)
長期譲渡所得(所有期間5年超): 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
取得費・譲渡費用が収入を上回り譲渡所得が生じなければ、その譲渡所得に対する税は通常生じません。ただし、取得費が不明な場合や法人への低額譲渡等は扱いが異なるため、税務上の計算と時価を確認します。
買主にかかる税金
買主には、不動産取得税と登録免許税がかかります。
不動産取得税は原則4%ですが、土地の取得は2027年3月31日まで3%の特例があります。宅地等の課税標準を2分の1とする特例や住宅関係の軽減等もあるため、所在地の都道府県で確認します。
2026年4月1日以降の土地取得は、課税標準額が16万円未満の場合が免税点の対象です(同年3月31日までは10万円)。土地を取得した日から1年以内に隣接する土地を取得した場合は、前後の取得を合わせて判定する扱いがあるため、都道府県へ確認してください。
無償譲渡・低額譲渡の場合の注意
個人から個人への贈与は、受け取った側の贈与税の対象となり得ます。法人が関わる取引は、法人税・所得税等の別の課税関係も確認します。
暦年課税の基本:その年に贈与で取得した財産の課税価格の合計から110万円を控除し、残額に税率等を適用する
暦年課税の110万円の基礎控除は、受贈者1人につき年間の贈与の合計で判定します。その土地だけが110万円以下でも、ほかの贈与と合わせて課税される場合があります。相続時精算課税を選択している場合等は別の確認が必要です。
個人から著しく低い価格で土地を取得すると、時価と対価の差額が贈与とみなされる場合があります。この時価は通常の取引価額によるため、地目や固定資産税評価額だけで「安くても問題ない」と判断せず、取引条件と評価の根拠を確認します。
隣地売却がうまくいかない場合の対処法
隣地の所有者に売却を打診しても、断られたり、そもそも連絡がつかなかったりする場合があります。そのような場合の対処法を紹介します。
他の隣人に打診する
土地には複数の隣地が接している場合があります。一人に断られても、他の隣地所有者に打診してみましょう。
買取業者・有償引取りを比較する
山林、原野、別荘地など、売却が難しい不動産を扱う買取業者や、引取りを行う事業者・団体があります。受入条件や費用は、物件と相談先によって異なります。
買主が代金を支払う買取と、所有者が費用を支払う有償引取りは異なります。成立条件、支払総額、所有権移転の時期、残る負担を分けて比較してください。
相続土地国庫帰属制度の利用
2023年4月から始まった「相続土地国庫帰属制度」を利用すれば、一定の条件を満たす土地を国に引き取ってもらうことができます。
利用できる人
相続または相続人への遺贈で、所有権・共有持分の全部又は一部を取得した人が申請資格の対象です。共有地では、そのような共有者を含む全員で共同申請します。売買で土地全部を取得しただけの人は対象外です。申請資格があっても、土地の審査と負担金の納付が必要です。
利用できない土地
制度には申請の却下要件と、審査後の不承認要件があります。主な確認事項は次のとおりで、単に崖や樹木があるだけで一律に対象外になるわけではありません。問題を解消して申請を検討できる場合もあるため、法務局へ相談しましょう。
建物がある土地
担保権や使用収益権が設定されている土地
通路等として他人の使用が予定される土地など、法令で定める類型に当たる土地
土壌汚染対策法の特定有害物質により汚染されている土地
境界が明らかでない土地や、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地
勾配30度以上・高さ5m以上の崖があり、通常の管理に過分な費用・労力を要する土地
工作物・車両・樹木等が、土地の通常の管理・処分を阻害する土地
通常の管理・処分のために除去が必要な有体物が地下にある土地
隣地所有者等との争訟によらなければ通常の管理・処分ができない、法令で定める土地
その他、通常の管理処分に過分の費用・労力を要する土地
費用
審査手数料:土地1筆につき14,000円(不承認等でも返還されない)
負担金:森林は面積別の算定式。宅地・農地等は区域などで20万円又は面積に応じた額となる
山林の場合、面積に応じた負担金となり、広い山林では高額になる可能性があります。
制度の詳細は、法務省のホームページで確認できます。
相続放棄の検討
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内に家庭裁判所へ申述する手続きです。相続開始前にはできません。相続財産の土地を売却すると、相続を承認したものとみなされ、放棄できなくなる場合があります。放棄を検討している間は、売買契約や引渡しの前に専門家へ確認しましょう。
相続放棄は土地だけを選んで行えず、預貯金等を含む相続全体に関わります。また、放棄時に相続財産を現に占有していた人には、相続人や相続財産清算人へ引き渡すまで保存義務が残る場合があります。財産・債務と現在の管理状況を確認して判断しましょう。
マッチングサイト・空き家バンクの活用
近年、売却困難な不動産を個人間で取引するためのマッチングサイトやアプリが増えています。
自治体の空き家バンク等も候補ですが、空き地・山林・原野の登録に対応するか、地域・物件の条件があるかを確認してください。登録しても成約が保証されるわけではありません。
まとめ
隣地の所有者への売却は、売却が困難な土地を処分するための有力な選択肢です。
隣地売却のポイント
隣人にとって、隣地の取得にメリットがある場合がある
山林、原野、別荘地など、一般市場で売れない土地でも、隣人なら引き取ってくれる可能性がある
登記事項証明書で登記名義人を確認し、現在の所有者・連絡先かを確かめる
最初のアプローチは「相談したい」というスタンスで
価格は柔軟に対応し、「処分できること」を優先する姿勢も重要
個人間取引にはリスクがあるため、専門家(司法書士等)の活用を検討する
うまくいかない場合は、買取・有償引取り・相続土地国庫帰属制度などの条件と費用を比較する
売却困難な土地を放置し続けると、固定資産税や管理費の負担が続くだけでなく、お子さんやお孫さんの世代にも問題を引き継いでしまいます。
まずは土地の資料と費用負担を整理し、隣地所有者に取得の意向を確認しましょう。希望が合わない場合は、ほかの売却先や制度の条件を比較して検討します。


