山を売りたい方へ|山林売却の価格の調べ方・方法・手続き

更新日:10月2日
「相続した山を売りたいが、いくらになるのか見当もつかない」「そもそもどこに相談すればいいのか分からない」——山の売却では、土地と立木の条件、売却にかかる費用を確認することから始めます。
最初に全体像をお伝えします。
山林の価格は、立地、道路、法令上の制限、立木の状態などで大きく変わります。土地と立木の条件、売却にかかる費用を確認しましょう
相談先には、山林を取り扱う不動産会社や買取業者、森林組合、林業事業者などがあります。取り扱いの範囲は相談先ごとに異なります
売却が難しい場合は、国庫帰属制度や引き取りなど、売却以外の選択肢と条件・費用を比べます
この記事では、山を売る方法と手続き、価格を調べる際の確認事項、売却が難しい場合の選択肢を解説します。
山はいくらで売れる?——価格を調べるときの確認点
山林の価格は「土地」と「立木(生えている木)」を分けて評価するのが基本です。
土地の価格:立地で大きく変わる
林地のタイプ | 価格検討時の確認点 |
都市近郊林地(市街地に近い山) | 市街地との距離、用途の見込み、道路、造成の条件 |
農村・林業地域の林地 | 樹種・材積、搬出路、林業での利用の見込み |
山村奥地林地(アクセス困難な奥山) | 通行の条件、境界、管理の手間 |
同じ山林でも、道路に接しているか、平坦な部分があるか、キャンプ場や資材置き場などに転用できるかによって価格は変わります。一律に安いと決めつけず、条件を確認して価格を検討しましょう。
立木の価格:樹種・材積・搬出の条件で変わる
立木の価値は、樹種、品質、材積、搬出路の有無、伐採・搬出の費用などで決まります。伐採・搬出の費用が木材の売値を上回る場合は、立木の評価が低くなることがあります。
自分で価格を調べる3つの方法
都道府県地価調査:基準地価格には林地の調査地点が含まれます。地域の指標なので、個別の山林の価格とは区別して参考にします
国土交通省「不動産情報ライブラリ」:過去の取引価格を検索できます。取引の時期、立地、面積などの条件を確認して参考にします
固定資産税評価額:課税のための評価で、売却価格を直接示すものではありません
山を売る5つの方法——どこに相談すべきか
売却先 | 向いている山 | 特徴 |
① 山林専門の業者・買取業者 | 取り扱う範囲は業者ごとに確認 | 仲介と買取がある。査定の条件・費用・契約内容を確認 |
② 森林組合 | 手入れされた人工林 | 土地売買・立木売却など、相談できる範囲と費用を確認 |
③ 林業事業者・製材業者 | 立木に価値のある山 | 立木の評価を相談できる場合がある |
④ 隣接する山の所有者 | まとまりが生きる山 | 相手にとってだけ価値が高いことがある |
⑤ 一般の不動産会社 | 取り扱うかは会社ごとに確認 | 宅地建物取引業法の対象かは取引内容で判断(下記参照) |
①山林を取り扱う業者には、仲介(買い手を探す)と買取(業者が直接買う)があります。有償の引取りとは別の取引です。土地と立木を分けて査定できるか、査定の条件・費用、契約内容を確認しましょう。
②森林組合では、土地の売買や立木の売却について相談できる場合があります。相談できる範囲と費用は組合ごとに確認しましょう。相談の仕方と注意点は森林組合で山を売る方法で詳しく解説しています。
⑤一般の不動産会社について補足すると、宅地建物取引業法の「宅地」に当たるかは、登記の地目だけでなく、建物の敷地に使う目的か、用途地域内かなどで判断されます。宅地に当たる取引は、仲介手数料に法定の上限があります。当たらない取引でも、手数料は事前に契約で確認してください。
売れる山・売れない山——5項目チェック
買い手の用途によって重視される条件は異なりますが、次の項目は売れる見込みを考える目安になります。
車が入る道路に接している(道路がない場合は、通行の権利や道をつくる費用を確認)
傾斜が緩い、または平坦な部分がある
手入れされた人工林で、材質や搬出の条件がよい
境界のおおよその位置が分かる(境界標などの目印を、登記などの資料や周辺の状況と照合)
市街地・観光地・キャンプ需要のあるエリアに近い
接道がない、急傾斜、場所の特定が難しいといった山は、買い手が限られることがあります。ただし、条件だけで売却の可否が決まるわけではないため、相談先の見立てと費用を確認し、後述の「売れない場合の出口」とも比べましょう。
山林売却の手続き(6ステップ)
ステップ1:書類を集める ①固定資産税の課税明細書(地番・面積・評価額)、②登記事項証明書(名義の確認)、③公図などを手元にそろえます。必要な書類は相談先によって異なります。④森林簿・森林計画図は参考情報で、所有権・境界・立木の価額を証明するものではありません。
ステップ2:名義を確認する(相続登記) 親や祖父母名義のままの山を売る場合は、買主への所有権移転登記の前に、相続登記で名義を整える必要があります。相続登記は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内の申請が義務で、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となることがあります(2024年4月1日より前の相続は、2027年3月31日と知った日から3年のいずれか遅い日まで)。
ステップ3:場所と現況を把握する 「地番は分かるが場所が分からない」は山林あるあるです。地番から山林の位置を特定する方法と公図から場所を特定する方法を参考にしてください。
ステップ4:査定を受ける 査定の条件や費用を事前に確認し、必要に応じて複数に依頼します。査定額に土地と立木のどちらが含まれるかも確認しましょう。売却の保証をうたって費用を求める、別の土地の購入を持ちかける、理由の分からない追加費用を求めるといった場合は注意が必要です(詳細:原野商法と二次被害の手口)。
ステップ5:境界の扱いを決めて売買契約 手元の資料で境界を確認し、測量が必要か、その費用を誰が負担するかを買主と相談します。面積の精算の有無、引渡しの条件、契約後の責任の範囲を、契約書で合意しておきましょう。
ステップ6:決済・所有権移転登記・引き渡し 必要に応じて司法書士に登記を依頼します。所有権移転、代金の決済、引渡しの時期は契約で確認しましょう。登録免許税や司法書士報酬は筆数や課税価格などで変わり、負担者は契約で決めます。なお買主は、地域森林計画の対象となる森林の土地を取得した場合、原則として90日以内に市町村へ届け出る必要があります(国土利用計画法の届出をした場合を除く)。
山を売ったときの税金
個人が山林を売った場合、土地部分と立木部分で税金の扱いが違います。
土地部分:譲渡所得(分離課税)。譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えれば20.315%、5年以下なら39.63%(所得税・住民税・復興特別所得税の合計。復興特別所得税は2037年まで)。相続した山は被相続人の所有期間を引き継ぎます
立木部分:取得から5年を超える立木の譲渡は山林所得で、所得税は5分5乗方式で計算します。5年以内の譲渡は事業所得または雑所得です
取得費が不明な場合:土地の譲渡所得では、売却価格の5%を取得費とする方法を選べます(立木の山林所得の計算とは別)
課税される所得は、取得費や売却の費用、控除によって個別に変わります。必要に応じて税務署や税理士に確認してください。
売却を進めるための準備
資料を整えてから査定に出す:場所の地図、境界の目安、森林簿、林道からの距離などをそろえておくと、条件を説明しやすくなります
法令と費用を確かめて用途を示す:キャンプ・別荘・資材置き場・再エネなどの用途は、法令上の制限や、造成・道路の費用を確かめたうえで候補として示します
費用と比べて条件を見直す:所有を続ける費用と売却にかかる費用を比べ、価格や募集の条件を見直しましょう
売れない場合の出口——期間と条件を決めて見直す
募集の期間・価格・費用をあらかじめ決めておき、買い手が見つからない場合は条件を見直します。それでも難しい場合は、保有を続ける場合の費用や、倒木・土砂などに関する所有者責任が問題になる条件も確認し、売却以外の方法と比べましょう。
売却以外の出口は、①相続土地国庫帰属制度(相続または相続人への遺贈などで取得した山が対象。境界などの要件あり・山林での使い方と承認率)、②引き取りサービス(対象となる山や費用・条件は依頼先ごとに確認)などがあります。7つの選択肢の費用比較は山林の処分方法7つを徹底比較にまとめています。
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よくある質問(FAQ)
Q. 山の場所が分かりません。それでも売れますか?
A. 売却には場所の特定が必要です。権利証や課税明細書の地番、公図などの資料で確認しましょう。
Q. 保安林でも売れますか?
A. 売買自体は可能です。立木の伐採や土地の形質変更などに許可などが必要なため、買い手の用途に合うかを確認します。詳細は保安林を売却する方法をご覧ください。
Q. 兄弟と共有名義の山です。
A. 全体の売却には共有者全員の同意が必要です。同意が得られない場合、共有持分だけを手放す方法もあります。
Q. 立木だけを売って土地は残す(またはその逆)ことはできますか?
A. 可能です。立木だけを売る場合は、対象の樹木、伐採・搬出の期限、土地の利用、許認可、費用などの条件を契約で決めます。分けて売る方が有利かは、条件によって異なります。
Q. 査定してもらったら「値段がつかない」と言われました。
A. 値段がつかない理由(道路、立木、法令、境界など)を相談先に確認し、条件の見直しで変わるかを整理しましょう。そのうえで、国庫帰属制度や引き取りサービスの条件・費用と、今後の維持費を比べて判断してください。
まとめ
山の売却では、①土地と立木の条件と、価格の調べ方を知る、②取り扱いの範囲と費用を確認して相談先を選ぶ、③境界・面積・引渡しの条件と費用を契約で確認する、④期間と条件を決めて見直し、売却以外の方法とも比べる——の4点を押さえて進めましょう。


