遺贈とは?【相続土地国庫帰属制度との関係もわかりやすく解説】

更新日:10月2日
相続との違い・種類・税金・手続きの基本
【相続土地国庫帰属制度との関係もわかりやすく解説】
「遺贈」という言葉をご存じでしょうか。相続土地国庫帰属制度について調べていると、「相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る)により土地を取得した者」という要件を目にすることがあります。
遺贈とは遺言によって財産を譲ることです。受け取る人との関係、遺贈の種類、土地の取得経緯によって、税金や手続き、国庫帰属制度の申請資格が変わります。
本記事では、遺贈と相続の違い、包括遺贈と特定遺贈、税金と登記手続き、相続土地国庫帰属制度との関係を説明します。
目次
1. 遺贈とは?基本的な意味をわかりやすく解説
1-1. 遺贈の定義
遺贈(いぞう)とは、遺言によって、亡くなった人(遺贈者)の財産の全部または一部を、特定の人や団体に無償で譲ることです。民法第964条に規定されており、「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」と定められています。
遺贈において、財産を贈る側の人を「遺贈者(いぞうしゃ)」または「遺言者(いごんしゃ)」と呼び、財産を受け取る側の人を「受遺者(じゅいしゃ)」と呼びます。
遺贈の最大の特徴は、法定相続人以外の人にも財産を渡すことができる点です。例えば、以下のような人や団体に財産を譲ることが可能です。
内縁の配偶者(法律上の婚姻関係がない事実婚のパートナー)
長年お世話になった知人や友人
介護などでお世話になったヘルパーやボランティア
甥・姪(法定相続人である兄弟姉妹が存命の場合)
NPO法人、公益法人、学校法人などの団体
地方自治体や国
1-2. 遺贈が必要になるケース
遺贈は主に以下のようなケースで活用されます。
法定相続人がいない場合:身寄りのない方が、お世話になった人や団体に財産を残したい場合
法定相続人以外に財産を残したい場合:内縁の配偶者や世話になった知人など
社会貢献のために財産を活用したい場合:NPO法人や公益団体への遺贈寄付
特定の相続人に特定の財産を渡す意思を示したい場合
相続人がいることが明らかでない場合は、相続財産の清算や、認められた特別縁故者への分与などの手続きを経て、残った財産が国庫に帰属します。特定の人や団体に財産を残したい場合は、受入れの意向も確認して遺言の内容を検討しましょう。
1-3. 遺贈の法的根拠
遺言に関する規定は民法第960条以下にあり、遺贈は第964条や第986条以下などに定められています。主な条文は以下の通りです。
条文 | 内容 |
民法第964条 | 包括遺贈及び特定遺贈の規定 |
民法第985条 | 遺言の効力発生時期(遺言者の死亡時) |
民法第986条 | 遺贈の放棄に関する規定 |
民法第990条 | 包括受遺者の権利義務(相続人と同一) |
民法第994条 | 受遺者の死亡による遺贈の失効 |
2. 遺贈と相続の違い|5つのポイントで比較
遺贈と相続は、どちらも「亡くなった人の財産を引き継ぐ」という点では共通していますが、いくつかの重要な違いがあります。
2-1. 財産を受け取れる人の範囲
相続:法定相続人のみが財産を受け取れます。法定相続人は民法で定められており、配偶者と、子・直系尊属・兄弟姉妹などの血族です。
遺贈:法定相続人以外の人や法人・団体にも財産を渡すことができます。遺言者が自由に受遺者を指定できる点が最大の特徴です。
2-2. 財産取得の方法
相続:相続人が複数いる場合は、遺産分割協議などで分け方を決めます。法定相続分による共有のままにする場合などもあり、常に遺産分割協議が必要なわけではありません。遺言がある場合は、その内容や効力も確認します。
遺贈:必ず遺言書が必要です。遺言者の一方的な意思表示により効力が発生するため、受遺者の同意は不要です(ただし、受遺者は放棄することも可能)。
2-3. 税金の違い
以下は主に個人が取得する場合の基本的な税の扱いです。相続税の2割加算は、相続人かどうかではなく被相続人との続柄等で判断します。法人・団体への遺贈は、法人の種類や税法上の扱いを別に確認する必要があります。
税金の種類 | 相続 | 遺贈(相続人以外) |
相続税 | 続柄等によって2割加算の対象になる | 個人は続柄等で2割加算を判定 |
登録免許税 | 0.4% | 2.0% |
不動産取得税 | 非課税 | 課税(特定遺贈の場合) |
2-4. 登記手続きの違い
相続:相続人が単独で相続登記を申請できます。
遺贈(相続人への遺贈):令和5年4月1日から、相続人への遺贈の場合は受遺者(相続人)が単独で登記申請できるようになりました。
遺贈(相続人以外への遺贈):受遺者と遺言執行者(または相続人全員)による共同申請が必要です。
2-5. 代襲相続の適用
相続:被相続人の子が先に死亡した場合などは、その子などが代襲相続人となることがあります。兄弟姉妹の代襲はその子までで、父母の死亡による祖父母の相続などは代襲相続とは区別します。
遺贈:受遺者が遺言者より先に死亡した場合、その遺贈は効力を生じず、受遺者の相続人が当然に代わって取得することはありません。別の受遺者を予備的に指定するなど、遺言の内容を検討します。
3. 包括遺贈と特定遺贈の違い|それぞれの特徴とメリット・デメリット
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があります。それぞれの特徴を理解することは、遺言書を作成する上で非常に重要です。
3-1. 包括遺贈とは
包括遺贈とは、遺産の内容を特定せずに、財産全体の割合を指定して遺贈する方法です。例えば、「全財産の2分の1をAさんに遺贈する」「遺産の3分の1をB法人に遺贈する」といった形で遺言書に記載します。
包括遺贈の重要な特徴として、民法第990条に「包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有する」と規定されています。これにより、包括受遺者は以下のような法的地位を持ちます。
分割すべき遺産があり、ほかの相続人等と協議する場合は、遺産分割の当事者となる
プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産(債務)も割合に応じて引き継ぐ
放棄する場合は、遺言者の死亡と自己のために包括遺贈があることを知った時から原則3か月以内に、家庭裁判所への申述が必要
3-2. 特定遺贈とは
特定遺贈とは、遺産の中から特定の財産を指定して遺贈する方法です。例えば、「○○銀行の預金1,000万円をAさんに遺贈する」「△△市の土地をB法人に遺贈する」といった形で遺言書に記載します。
特定遺贈の特徴は以下の通りです。
指定された特定の財産のみを受け取る
原則として借金などの債務を引き継ぐ義務はない
遺言者の死亡後、遺贈義務者への意思表示で放棄でき、家庭裁判所への申述は不要。ただし、相当の期間を定めた催告を受けて期間内に意思を表示しないと承認したものとみなされ、承認・放棄は撤回できない
遺産分割協議に参加する必要がない
3-3. 包括遺贈と特定遺贈の比較表
比較項目 | 包括遺贈 | 特定遺贈 |
遺贈の対象 | 財産の割合を指定 | 特定の財産を指定 |
債務の承継 | 割合に応じて引き継ぐ | 原則引き継がない |
放棄の方法 | 家庭裁判所への申述(自分への包括遺贈を知った時から原則3か月) | 遺贈義務者への意思表示(催告後に答えないと承認とみなされる) |
遺産分割協議 | 分割が必要な場合に当事者となる | 参加不要 |
不動産取得税 | 非課税 | 課税(相続人以外の場合) |
包括遺贈と特定遺贈は、渡したい財産、債務の承継、放棄の手続き、ほかの相続人との関係が異なります。特定遺贈が常に適しているとは限らないため、受遺者の負担と遺言者の意向を確認して選びましょう。
4. 「遺贈する」と「相続させる」の違い|遺言書作成時の重要ポイント
遺言書を作成する際、「○○を△△に遺贈する」と書くか「○○を△△に相続させる」と書くかで、法的効果や手続きに違いが生じることがあります。
4-1. 基本的な使い分け
「相続させる」という文言は、法定相続人に対してのみ使用できます。例えば、「長男Aに甲土地を相続させる」といった記載です。
「遺贈する」という文言は、法定相続人以外の人(第三者)に財産を渡す場合に使用します。もちろん、法定相続人に対して「遺贈する」と書くことも可能です。
4-2. 相続人に財産を渡す場合の確認点
法定相続人に財産を渡す場合は、文言だけで判断せず、対象財産と次の手続きの違いを確認します。
登記手続き:相続による登記に加え、2023年4月1日以降は、相続人が受ける遺贈による所有権移転登記も単独で申請できる
農地:相続、包括遺贈、相続人に対する特定遺贈は農地法3条の許可が不要。ただし、農業委員会への届出は別に必要
借地権・借家権:相続では原則として賃貸人の承諾は不要。遺贈では承諾が必要になる場合があるため、遺贈の種類・受遺者との関係・契約内容を確認する
4-3. 令和5年4月1日からの法改正
令和5年4月1日以降、相続人に対する遺贈の場合は、受遺者(相続人)が単独で所有権移転登記を申請できるようになりました。これにより、「遺贈する」と「相続させる」の登記手続き上の差は、相続人への遺贈に限ってはほぼなくなりました。
農地の許可についても、相続人に対する特定遺贈は許可不要です。借地権・借家権などは個別の確認が必要ですが、「相続させる」と書けば常に有利とは限りません。遺言全体の内容と目的に合う文言を専門家と確認しましょう。
5. 遺贈にかかる税金|相続税・登録免許税・不動産取得税の基本
遺贈により財産を取得した場合、以下の税金がかかる可能性があります。それぞれの税金について詳しく解説します。
5-1. 相続税
個人が遺贈で取得する財産は、原則として贈与税ではなく相続税の対象です。ただし、基礎控除や非課税・特例などにより納税の要否は異なります。法人への遺贈は法人税等を含む別の課税関係を確認し、個人と同じ扱いと考えないでください。土地などを法人へ遺贈すると、遺贈者側のみなし譲渡所得課税が問題になることもあります。
【重要ポイント】相続税の2割加算
相続税の2割加算は、被相続人の配偶者と一親等の血族(代襲相続人となった孫などを含む)以外の人が対象です。兄弟姉妹などは法定相続人でも対象となり、孫を養子にした場合は代襲相続人となる場合を除いて対象です。相続か遺贈かにかかわらず、続柄等で確認します。主な対象は次のとおりです。
兄弟姉妹
甥・姪
孫(代襲相続人の場合を除く)
内縁の配偶者
その他の第三者(友人、知人など)
【基礎控除額の計算】
相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。相続人ではない受遺者がいるだけでは、この人数は増えません。相続放棄がある場合は放棄がなかったものとして数え、養子には算入人数の制限があるため、税法上の人数を確認します。
5-2. 登録免許税
遺贈により不動産を取得した場合、所有権移転登記の際に登録免許税がかかります。税率は受遺者が相続人かどうかで異なります。
受遺者 | 登録免許税率 |
法定相続人 | 固定資産税評価額の 0.4% |
法定相続人以外 | 固定資産税評価額の 2.0% |
例えば、課税標準が1,000万円の土地について、免税措置等の適用がない場合、相続人への遺贈は0.4%で4万円、相続人以外への遺贈は2%で20万円です。土地の相続登記等には免税措置が適用される場合もあるため、登記時に確認してください。
5-3. 不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を取得した際に課税される地方税です。遺贈の場合、以下のルールが適用されます。
取得方法 | 受遺者 | 不動産取得税 |
相続 | 法定相続人 | 非課税 |
包括遺贈 | 誰でも | 非課税 |
特定遺贈 | 法定相続人 | 非課税 |
特定遺贈 | 法定相続人以外 | 課税 |
不動産取得税の標準税率は4%ですが、土地と住宅は2027年3月31日までの取得について3%の特例があります。宅地等の課税標準を2分の1とする特例や住宅関係の軽減、免税点等もあるため、評価額に税率を掛けるだけで納税額が決まるとは限りません。土地・建物の所在地の都道府県で確認しましょう。
6. 遺贈の手続き方法|遺言書作成から登記まで
6-1. 遺贈を行うための遺言書作成
遺贈には、法律で定められた方式を満たす有効な遺言が必要です。通常の口頭の希望やエンディングノートを残すだけでは遺言になりません。一般に用いられる方式は、次の3種類です。
①自筆証書遺言
自筆証書遺言は、本文・日付・氏名を自書して押印します。自書しない財産目録を添付する場合も、各ページへの署名押印などが必要です。形式の不備に注意し、法務局の自筆証書遺言書保管制度を使う場合は手数料と様式を確認します。保管制度は遺言の有効性を保証するものではありません。
②公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が関与して内容と方式を確認し、原本を保管する方法です。家庭裁判所の検認は不要です。作成には手数料等がかかり、遺言能力や内容などを巡る争いが一切起きないという保証ではありません。
③秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、公証人と証人の関与の下で所定の方式を整える方法です。公証人が内容の有効性まで確認する方式ではないため、記載内容と形式の両方に注意が必要です。
6-2. 遺言書への記載例
以下は財産の渡し方を示す文言例であり、この文だけで有効な遺言が完成するわけではありません。対象不動産を登記情報等で特定し、選んだ方式に必要な日付・署名押印等を整えます。
【特定遺贈の記載例】
「遺言者は、遺言者所有の下記不動産を、○○(住所:△△県△△市△△町1-2-3、昭和○○年○○月○○日生)に遺贈する。」
【包括遺贈の記載例】
「遺言者は、遺言者の有する一切の財産の2分の1を、○○(住所:△△県△△市△△町1-2-3、昭和○○年○○月○○日生)に遺贈する。」
6-3. 遺贈による不動産登記の手続き
遺贈により不動産を取得した場合は、権利関係を登記へ反映する手続きを確認します。相続人が遺贈で所有権を取得した場合も、相続登記の申請義務の対象です。自己のために相続の開始があったことと所有権の取得を知った日から原則3年以内に申請します。2024年4月1日より前の相続も対象となり、2027年3月31日と知った日から3年のいずれか遅い日が期限です。相続人以外の受遺者には、この申請義務はありません。申請方法は受遺者が相続人かどうかで異なります。
【相続人への遺贈の場合】
相続人への遺贈による所有権移転登記は、受遺者が単独で申請できます。遺言書、死亡と相続人であることを証する戸籍等、住所を証する資料などが必要で、遺言の種類等によって書類は異なります。公正証書遺言と法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要ですが、それ以外は原則として家庭裁判所の検認が必要です。法務局の最新の案内で確認してください。
【相続人以外への遺贈の場合】
受遺者と登記義務者(遺言執行者または相続人全員)による共同申請が必要です。遺言執行者がいない場合は相続人全員の協力が必要となるため、遺言書で遺言執行者を指定しておくことが推奨されます。
7. 遺贈と相続土地国庫帰属制度の関係【重要】
相続土地国庫帰属制度を利用する際、「遺贈」がどのように関係するのかは非常に重要なポイントです。
7-1. 相続土地国庫帰属制度の申請対象者
相続土地国庫帰属制度は、相続等で取得した土地について、要件審査と負担金の納付を経て国庫へ帰属させる制度です。2023年4月27日に開始されました。申請資格は、土地の取得経緯と、共有の場合はほかの共有者の取得経緯も確認します。
相続土地国庫帰属法2条1項・2項の申請資格(要点)
相続又は相続人に対する遺贈で土地の所有権・共有持分の全部又は一部を取得した人が対象です。共有の場合、そのような共有者を含む共有者全員が共同して申請します。
申請資格の基本となる取得原因は、次の2つです。申請資格があることと、土地が審査で承認されることは別です。
相続により土地を取得した場合
相続人に対する遺贈により土地を取得した場合
7-2. 相続人以外への遺贈と国庫帰属制度
相続人以外への遺贈だけで土地の全部を取得した人は、その取得だけを理由に申請することはできません。ただし、共有地で、相続等により持分の全部又は一部を取得した共有者がいる場合は、共有者全員で共同申請できる場合があります。
例えば、次の受遺者が相続人以外への遺贈だけで土地の全部を取得した場合は、その取得を理由とする申請資格はありません。
内縁の配偶者が遺贈により土地を取得した場合
友人や知人が遺贈により土地を取得した場合
NPO法人や団体が遺贈により土地を取得した場合
7-3. 相続土地国庫帰属制度が利用できない場合の対処法
まず申請者の取得経緯を確認し、申請資格がある場合は、建物・境界・権利関係・管理負担など土地の要件を確認します。境界等の問題を解消して申請を検討できる場合もあるため、所在地を管轄する法務局の相談窓口で整理しましょう。
制度が利用できない場合は、売却、受入先がある場合の寄附、有償引取りなどの条件と費用を比較します。山林・別荘地・原野では、立地や管理状況により選択肢が異なります。農地は売買等に農地法の手続きが関わるため、所在地の農業委員会へ確認してください。
8. 遺贈のメリット・デメリット
8-1. 遺贈のメリット
法定相続人以外にも財産を渡すことができる
遺言者の意思で自由に受遺者を指定できる
NPO法人等への遺贈寄付で社会貢献ができる
相続人がいない場合でも財産の行き先を決められる
受遺者の同意なく一方的に行える(ただし放棄は可能)
8-2. 遺贈のデメリット
相続税の2割加算は、相続人かどうかではなく続柄等によって対象が決まる
登録免許税が高くなる場合がある(相続人以外は2%)
特定遺贈で相続人以外が不動産を取得すると不動産取得税がかかる
遺留分を侵害するとトラブルになる可能性がある
相続人以外への遺贈だけによる取得では国庫帰属の申請資格がなく、共有の場合等は取得経緯を確認する
9. 遺贈を行う際の注意点
9-1. 遺留分への配慮
遺留分を侵害する遺贈などに対し、遺留分権利者は侵害額に相当する金銭を請求できる場合があります。遺留分があるのは兄弟姉妹以外の相続人で、配偶者・子のほか、相続人となる直系尊属等も含まれます。遺留分は必ず特定の土地を取り戻せる権利ではありません。
遺言書を作成する際は、法定相続人の遺留分を考慮した内容にすることが、相続トラブルを防ぐ上で重要です。
9-2. 受遺者が先に死亡した場合
受遺者が遺言者より先に死亡した場合、その遺贈は効力を生じません。受遺者の相続人が、代襲相続のように当然に代わって受け取ることはありません。
これを防ぐためには、遺言書に予備的遺言(第一候補の受遺者が先に亡くなった場合の第二候補を指定する条項)を記載しておくことが有効です。
9-3. 遺言執行者の指定
相続人以外への不動産の遺贈では、遺言執行者を指定しておくと、受遺者と遺言執行者で登記の共同申請を進められます。遺言執行者がいない場合には、家庭裁判所への選任申立てを検討できる場合もあります。担当者の就任の意向、業務と費用を事前に確認しましょう。
9-4. 負担付遺贈の活用
負担付遺贈とは、受遺者に一定の義務を課す遺贈です。例えば、「自宅を遺贈する代わりに、ペットの世話をしてもらう」といった条件を付けることができます。ただし、受遺者が負担を履行しない場合のトラブルも想定されるため、注意が必要です。
10. 遺贈に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 遺贈と相続の違いを簡単に教えてください。
A. 相続は法定相続人が財産を引き継ぐことで、遺贈は遺言によって法定相続人以外の人(または相続人)に財産を譲ることです。遺贈には遺言書が必要です。
Q2. 遺贈を受けたら必ず受け取らないといけませんか?
A. 遺贈は放棄できます。包括遺贈は、遺言者の死亡と自分への包括遺贈を知った時から原則3か月以内に、家庭裁判所への申述が必要です。特定遺贈は遺贈義務者への意思表示で放棄できますが、相当の期間を定めた催告を受けて期間内に答えないと承認したものとみなされ、承認・放棄は撤回できません。
Q3. 遺贈にはどのような税金がかかりますか?
A. 個人が受ける遺贈では相続税、不動産では登録免許税や不動産取得税が問題になります。2割加算は続柄等による判定で、相続人以外の人だけが対象とは限りません。法人への遺贈は別の課税関係を確認します。
Q4. 遺贈で取得した土地は相続土地国庫帰属制度を利用できますか?
A. 相続人への遺贈で取得した人は申請資格の対象ですが、土地の要件審査と負担金の納付が必要です。相続人以外への遺贈だけで土地全部を取得した場合は、その取得だけによる申請資格はありません。共有地では、相続等で持分を取得した共有者を含む全員の共同申請を確認します。
Q5. 内縁の配偶者に財産を残すにはどうすればよいですか?
A. 内縁の配偶者は法定相続人ではないため、遺言による遺贈は財産を残す方法の一つです。相続税の2割加算の対象となることや、土地を遺贈した場合の国庫帰属の申請資格なども確認して内容を決めましょう。
Q6. 「相続させる」と「遺贈する」はどちらを使えばよいですか?
A. 相続人以外への遺贈では「遺贈する」と表します。相続人へ渡す場合は、対象財産や遺言全体の内容に応じて検討します。相続人への遺贈も登記の単独申請ができ、農地の特定遺贈も許可不要なので、文言だけで一律に有利・不利を決めないようにしましょう。
11. まとめ
本記事では、遺贈の基本的な意味から、相続との違い、税金、手続き、そして相続土地国庫帰属制度との関係まで詳しく解説しました。
【遺贈のポイントまとめ】
遺贈とは、遺言によって財産を譲ること
法定相続人以外にも財産を渡すことができる
包括遺贈と特定遺贈の2種類がある
税金は、受遺者の続柄・個人か法人か・遺贈の種類によって確認する
国庫帰属制度は取得経緯・共有関係・土地の要件を分けて確認する
相続土地国庫帰属制度を利用できない土地や、そもそも制度の要件を満たさない土地をお持ちの方は、専門家への相談をご検討ください。

