保安林とは?種類・制限・解除手続きまで徹底解説
- 一般社団法人日本不動産管財

- 2024年12月3日
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更新日:10月20日
山林の調査や売却を検討していると、登記簿の備考欄や森林計画図に 「保安林(ほあんりん)」 と記載されていることがあります。保安林は森林法に基づき、
であり、通常の山林と比べ 伐採・土地形質の変更が厳しく制限 されています。本記事では保安林の概要から所有者が負う義務、解除(指定解除)手続き、売却・処分のポイントまでをわかりやすく解説します。
1. 保安林の目的と種類
区分 | 主な目的 | 代表例 |
水源かん養保安林 | 水源保護、地下水涵養 | ダム上流域、上水道水源林 |
土砂流出防備保安林 | 土砂災害防止 | 急斜面、渓流沿い |
飛砂・防風保安林 | 風害・砂害防止 | 海岸林、防風林 |
雪崩防止保安林 | 雪崩・落石防止 | 豪雪地の山腹 |
潮害防備保安林 | 潮風・塩害防止 | 沿岸部の防潮林 |
ポイント:指定の主体は農林水産大臣または都道府県知事。指定後は森林計画図や公図・登記簿備考に反映されます。
2. 保安林に課される主な制限
行為 | 制限内容 | 罰則・許可窓口 |
伐採 | 一般伐採は原則禁止。間伐等は知事許可 | 無許可伐採:1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
土地形質変更 | 盛土・切土・開発行為は許可制 | 滅失した場合、原状回復命令 |
建築行為 | 建築物・工作物の新設は原則不可 | 違反行為は工事停止命令 |
立木竹の伐採以外の採取 | 落ち葉・土石の採取も許可制 | 軽犯罪処分の対象 |
覚えておきたいポイント:「保安林は水源の涵養機能の維持や土砂災害等防止など特定の公益目的を達成するために、農林水産省又は都道府県知事が指定した森林となるため、立木の伐採制限、土地形質の変更制限があります。保安林は活用に制限があるため、基本的に購入希望者がおりません。」
3. 指定解除・用途変更はできる?
手続き | 概要 | 実現難易度 |
指定解除申請 | 公益目的が消滅したと証明(代替施設整備など) | ★☆☆☆☆(非常に難しい) |
代替保安林の設定 | 代替地を提供し、従前保安林を解除 | ★★☆☆☆ |
一部変更許可 | 道路開設・ライフライン敷設など公益性の高い事業 | ★★★☆☆ |
解除には 都道府県森林審議会の議決・農林水産大臣同意 が必要で、申請から1年以上かかるのが一般的です。
4. 保安林を売却・処分する現実的な方法
隣接地主・森林組合へ譲渡
– 指定解除の必要がなく、公益目的維持で受入れやすい。
林業会社による買取(間伐材活用)
– 間伐で木材を活かせる場合、林業会社が経済価値を見込んで購入するケースあり。
有料引取サービスの利用
– 伐採・形質変更が困難で市場価値が低い場合でも、名義変更までワンストップで手放せる。
国庫帰属制度は“申請自体は可能”だが承認ハードルが高い
– 森林法・林地台帳照合で 「国が過度な管理負担を負わない」と判断されれば承認可。– 境界明確・管理費不要・公益機能維持が条件で、保安林指定が残ったまま承認される例は少数。– 指定解除や代替保安林設定をセットで求められる場合あり。事前に法務局・森林管理署へ相談を。
5. よくある質問(FAQ)
Q1:保安林でも固定資産税は安くなる?
A:評価額が低くなる場合がありますが、完全非課税ではありません。減免制度の有無は自治体により異なります。
Q2:緊急間伐は許可なしで伐採できますか?
A:倒木の恐れがある危険木は、事後届出で伐採が認められるケースがあります。ただし事前に森林管理署へ連絡するのが安全です。
Q3:保安林のまま相続土地国庫帰属制度を使えますか?
A:申請は可能ですが、境界確定や管理負担の有無など厳格な審査があります。実務では指定解除や代替保安林設定を伴う申請がほとんどで、承認率は高くありません。
Q4:保安林を含む山林を放置するとどうなりますか?
A:倒木・土砂災害リスクに対する損害賠償責任が発生する可能性があります。所有者義務は一般山林より厳しいと考えてください。
6. まとめ|保安林は“公益第一”の森林——出口戦略は早期検討を
伐採・造成制限が厳しいため、市場価値は限定的。
指定解除はハードルが高く、隣接地主譲渡・有料引取が現実的な処分ルート。
国庫帰属制度は申請可能だが承認難度が高い。要件を満たさない場合は別の出口を検討。


