引き取った竹林が、メンマになりました
- 一般社団法人日本不動産管財

- 7月31日
- 読了時間: 5分
― 福岡県糸島市の竹林を「竹次郎」へ無償でお貸ししています ―
当社団は、売却も寄付も難しく行き場を失った土地について、お引き取りを行っております。お引き取りした土地は、当社団で管理を続けるものもあれば、地域で活かしていただく道を探るものもあります。
本稿では、そのひとつである福岡県糸島市の竹林についてご報告いたします。この竹林は現在、国産メンマの製造に取り組む「竹次郎」へ無償でお貸ししており、そこで採れた竹が、メンマとして食卓に届いています。
放置竹林は、静かに広がっていく
かつて竹は、かごやざる、ほうき、建築資材、農具など、暮らしのあらゆる場面で使われてきました。ところが竹製品はプラスチックに置き換わり、タケノコは安価な輸入品が選ばれるようになりました。使われなくなった竹林は、そのまま放置されます。
林野庁の統計によれば、全国の竹林面積は2012年時点で約16万ヘクタール。1981年の約14万ヘクタールから増加傾向が続いています。さらに、竹林と「竹が25%以上侵入した森林」を合わせると、その面積は全国で約42万ヘクタールにのぼると推計されています。千葉県が県内7か所で行った調査では、過去30年間で竹林面積が平均6.7倍に拡大した例も報告されています。
竹は成長が早く、周囲の樹木の光を奪って枯らしてしまいます。根が浅く横に張るため、大雨の際には土砂災害の一因にもなります。人の入らなくなった竹林はイノシシやシカの住処となり、周辺の畑を荒らします。地下茎が隣地へ入り込み、境界をめぐるトラブルに発展することもあります。
そして所有者にとって厄介なのは、竹林が「持っているだけでは何も生まない」土地だという点です。管理には手間も費用もかかる一方、買い手はなかなか見つかりません。当社団にお寄せいただくご相談の中にも、竹林や、竹に侵入された山林は決して少なくありません。
「美味しく食べて竹林整備」という発想
今回竹林をお貸ししている「竹次郎」(福岡県糸島市)は、放置竹林の竹を国産メンマに加工することで竹林整備を進めている事業者です。
使うのは、タケノコが1.5〜2メートルほどに伸びた「幼竹」。地面を掘り返す必要がなく、立ったまま収穫できるため作業者の負担が軽く、しかも放っておけば竹になってしまう分を刈り取るため、収穫そのものが竹林の整備になります。
メンマは国内消費量の99%が輸入品とされ、長らく海外の品種「麻竹」でなければ作れないと考えられてきました。しかし糸島市で始まった研究の結果、日本に古くからある孟宗竹や真竹であっても、適切な処理を施せばメンマにできることが分かっています。
代表の古賀貴大氏は、糸島で確立した仕組みを「糸島モデル」として全国に無償で公開しており、同氏が代表を務める「純国産メンマプロジェクト」は現在40都府県にまで広がっています。
収穫期は4月中旬から5月の連休明けまでの短期集中。人手を要する作業のため地域の方々に参加していただき、その対価もきちんと支払われています。「ボランティアで長く続けるのは難しいから」という考え方によるものです。
竹の寿命はおよそ8年。倒れた竹を一掃したうえで、毎年生えてくる幼竹をメンマに加工していけば、10年ほどで竹林は整備された状態になるといいます。一度きりの伐採ではなく、続けられる仕組みであることが、この取り組みの要点です。
なぜ、無償でお貸ししているのか
当社団は非営利の一般社団法人であり、賃料を得ることを目的としておりません。
竹林は、所有しているだけでは管理コストとリスクだけが積み上がっていきます。その一方で、竹次郎のような取り組みにとって最大の壁は「手を入れさせてもらえる竹林が見つからないこと」です。古賀氏自身も、課題として「放置されている山の所有者に、自分たちの声がまだ届いていない」ことを挙げています。
引き取り手のない竹林と、竹林を必要としている事業者。この二つを結びつけるのに、賃料は要らないと考えました。
竹林が整備されれば、土砂災害のリスクも獣害も減ります。収穫と加工を通じて地域に仕事が生まれ、これまで捨てられていた部分が食料になることで、食料自給率にもわずかながら寄与します。そして何より、前の所有者の方が「もうどうにもできない」と手放された土地が、もう一度誰かの役に立つ。それが当社団にとっての「利益」です。
「負動産」は、本当に負動産か
この竹林も、書類の上では確かに「処分の難しい土地」でした。売れず、貸せず、管理の負担だけがのしかかる。相続で引き継いだ方にとっては、頭を抱えるほかない土地だったはずです。
けれども、必要としている人の手に渡れば、それは食べ物になり、仕事になり、整った山になります。土地そのものが「負」だったのではなく、使い道と使い手が結びついていなかっただけとも言えます。
もちろん、すべての土地に同じ道が開けるわけではありません。立地や状態によっては、当社団が管理を続けるほかない土地も数多くあります。それでも、お引き取りした土地の一つひとつについて「この土地に合った出口はないか」を考え続けることが、当社団の役割であると考えております。
当社団は「負の遺産を将来の子どもたちに引き継がせない」という理念のもと活動しております。今後も、お引き取りした不動産の利活用について、ご報告できることがあれば随時お知らせしてまいります。
関連リンク
※本記事中の竹林面積等の数値は、林野庁統計および千葉県農林水産技術会議「放置竹林対策の手引き」、純国産メンマプロジェクト公表資料に基づきます。
