相続により土地を取得したものの、その管理や維持が困難な場合があります。このような場合に、相続した土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」があります。本記事では、この制度の概要、手続き、メリットとデメリットについて詳しく解説します。
1. 相続土地国庫帰属制度の概要
1-1. 相続土地国庫帰属制度とは
相続土地国庫帰属制度とは、相続や遺贈により取得した土地を、一定の要件を満たす場合に国に引き渡すことができる制度です。
相続等以外の原因(売買など)により自ら土地を取得した方や、相続等により土地を取得することができない法人は、基本的に本制度を利用することはできません。
1-2. 制度の背景
この制度は、相続人が土地の管理や維持に困難を感じた場合の救済措置として表向きは設けられていますが、実際は相続登記を促し、所有者不明土地を減らす目的が見られます。
2. 相続土地国庫帰属制度の手続き
2-1. 申請条件
引き取ることができない土地の要件の概要:
(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)
A 建物がある土地
B 担保権や使用収益権が設定されている土地
C 他人の利用が予定されている土地
D 土壌汚染されている土地
E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
(2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)
A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
2-2. 審査手数料
審査手数料の金額は、土地一筆当たり14,000円となります。
申請時に、申請書に審査手数料額に相当する額の収入印紙を貼って納付します。
手数料の納付後は、申請を取り下げた場合や、審査の結果却下・不承認となった場合でも、手数料を返還できませんのでご注意ください。
2-3.引き取り費用
審査の結果、承認となり引き取りが実行される場合、1筆毎に20万円以上の負担金が発生します。
3. 相続土地国庫帰属制度のメリット
3-1. 管理負担の軽減
土地の管理や維持が困難な場合、この制度を利用することでその負担を軽減できます。特に遠隔地にある土地や利用価値の低い土地の場合、管理コストや労力を削減できます。
3-2. 税金負担の軽減
土地を所有していると、固定資産税や都市計画税が課されますが、国庫に帰属させることでこれらの税金負担がなくなります。
3-3. 環境保全
国が土地を適切に管理することで、環境保全や地域の安全性向上に寄与することができます。
4. 相続土地国庫帰属制度のデメリット
4-1. 条件を満たさない場合
全ての土地がこの制度を利用できるわけではなく、一定の条件を満たす必要があります。条件を満たさない土地は帰属が認められないため、他の方法を検討する必要があります。
4-2. 手続きの複雑さ
申請手続きには多くの書類が必要であり、また審査にも時間がかかる場合があります。専門家の助けを借りることで手続きをスムーズに進めることができますが、それに伴う費用も発生します。
4-3. 一時的な費用負担
申請や登記変更に伴う費用は相続人が負担する必要があります。これらの費用が一時的に発生する点はデメリットといえます。
まとめ
相続土地国庫帰属制度は、相続した土地や山林の管理負担を軽減するための有効な手段です。メリットとして管理や税金の負担軽減がありますが、申請条件や手続きの複雑さといったデメリットもあります。相続土地の管理が困難な場合、この制度を検討することで、適切な対応が可能となります。
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