top of page

相続土地国庫帰属制度で山林を手放す方法|要件・費用・手続き完全ガイド

  • 執筆者の写真: 一般社団法人日本不動産管財
    一般社団法人日本不動産管財
  • 5月16日
  • 読了時間: 3分

相続した山林を「国に引き取ってほしい」と考える方が増えています。2023年に施行された相続土地国庫帰属制度は、条件を満たせば不要な土地を国へ帰属させられる新しい仕組みです。本記事では、山林に特化して制度の概要・要件・手続きを解説します。


1. 相続土地国庫帰属制度とは?

制度の目的

相続又は遺贈により取得した土地のうち、管理が困難なものを国が引き取ることで、適切な管理を図る

施行日

2023年4月27日

所管

法務省(法務局が窓口)

従来、相続放棄の期限(3か月)を過ぎると土地を手放す選択肢はほぼありませんでした。本制度により、相続後でも最終的な「出口」が確保できるようになりました。



2. 山林が対象となるための主な要件

山林は宅地や畑と異なり、次のような追加ハードルがあります。

区分

要件

解説

管理費不要

毎年の管理費や共益費が発生しないこと

別荘地の共有道路負担金などがある場合は不可

境界明確

筆界が争われていないこと

山林は測量歴が古い場合が多い。境界確認が必須

通行権問題

周辺地主と通行トラブルがない

山奥の林道が私道扱いの場合は事前調整が必要

地積制限なし

面積上限はなし

ただし測量コストが申請者負担になる点に注意

ポイント:山林の筆数が多い、境界不明な場合は <相続放棄期限内の放棄> や <民間引取サービス> の方が早いケースもあります。


3. 手続きの流れ(山林)

  1. 事前調査

    • 現地確認・境界票の有無をチェック

    • 隣接地所有者と筆界認識を合わせる

  2. 必要書類の準備

    • 相続登記済みの登記事項証明書

    • 公図・地積測量図

    • 固定資産評価証明書

  3. 法務局へ申請(申請料:1筆につき14,000円)

    • 申請書と添付図面を提出

    • 補正があれば対応

  4. 要件審査(3〜6か月程度)

    • 現地調査が入る場合あり

  5. 承認後、負担金納付

    • 山林は筆数×20万円が目安

    • 例:5筆 → 100万円

  6. 国庫帰属完了

    • 負担金納付後、所有権は国へ移転



4. 費用シミュレーション

項目

金額(例:山林3筆)

申請手数料

14,000円 × 3筆 = 42,000円

境界測量費

約300,000円(現況により増減)

負担金

200,000円 × 3筆 = 600,000円

合計

約942,000円

※測量費は地形・面積で変動します。隣接者立ち会いが複数いる場合、追加費用が発生することがあります。



5. メリット・デメリット

メリット

デメリット

● 相続後でも国に手放せる唯一の制度

● 費用負担が比較的大きい(特に負担金)

● 国庫帰属後は固定資産税・管理責任がゼロ

● 手続きが複雑、審査期間が長い

● 社会問題化する放置山林を減らせる

● 要件を満たさなければ申請却下



6. よくある質問(FAQ)

Q1:境界確定費用を抑える方法は?

A:過去に測量図があり、境界標が残っていれば再測量は簡易で済む場合があります。まずは法務局と土地家屋調査士に相談を。

Q2:負担金は分割払いできる?

A:現行制度では一括納付のみです。納付期限に注意してください。

Q3:建物付き山林でも申請できる?

A:建物があると対象外です。解体・滅失登記後に申請する必要があります。



7. 申請が難しい場合の代替策

  1. 相続放棄(期限内)

  2. 民間の山林引取サービスを利用

  3. 隣接地主や林業会社へ売却・無償譲渡



まとめ|山林の国庫帰属は「事前準備」が成功の鍵

  • 境界が明確負担金を準備山林以外の負担がない——この3点が揃えば制度活用の道が開けます。

  • 条件が厳しい場合は、他の処分方法との比較検討をおすすめします。


関連記事

すべて表示
【2025年最新版】負動産を手放す完全ガイド― 相続登記義務化・国庫帰属・管理命令までケース別に徹底解説 ―

はじめに 相続してしまった“売れない土地”、管理費だけがかかる“使わない別荘”、誰も使わないまま朽ちていく“遠方の空き家”。 「どうして手放せないのか」「どんな制度が使えるのか」「どこに相談すればいいのか」 この記事では、負動産を 実際に処分したい方 に向けて、ケース別に...

 
 
原野の処分・売却・相続ガイド|“原野商法”物件も手放せる 2025年版

高度経済成長期に全国で販売された“原野商法”の土地や、開発予定が頓挫したままの山林・原野──。「所在が分からない」「草木が生い茂り境界が不明」「固定資産税だけ払い続けている」など、 原野の処分相談  は年々増加しています。 本記事では “原野”の処分でお困りの方...

 
 
bottom of page